呂布カルマ、ムチャぶりイベントで「もう少しでラップを辞めてた」感覚を回想

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2024年08月08日 17:40  週プレNEWS

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『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ


ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では『交響ラップ』について語った。

*  *  *

★今週のひと言「ラップとオーケストラの融合、『交響ラップ』でどう見せたか」

先日、サントリーホールで行なわれた「交響ラップ」に参加した。

交響ラップとは、オーケストラの演奏する交響曲の生演奏に、無理やりラップをのせてみるってゆー、ムチャぶり実験イベントだ。

オファーを受けたときは良い意味で適当にフリースタイルセッション的にやればいいかと安請け合いしたのだが、その後ほかの参加者の名前やコンセプトを詳しく聞くにつれ、とてもフリースタイルでお茶を濁すわけにはいかなそうな雰囲気に気がついた。

おそらく謙遜なしで、アンダーグラウンド日本語ラッパーの俺がサントリーホールに立つことなんか今後二度とないだろう。

そして何十人もの手だれ演奏家たちの手によるオーケストラ演奏というものは、普段俺がLIVEでやっているバックDJが再生ボタンを押せば流れ出すバックトラックと違って、やり直しが利かない。

完全な一発勝負だ。

フリースタイルでやってみて、何かうまくハマらなかったけどまーいーかってわけにはいかないのだ。普段の俺は、良くも悪くも1回のLIVEにこだわらない。失敗した姿を見せるのもLIVEの醍醐味(だいごみ)だと思っているからだ。

だが今回ばかりはそれではマズイ。そもそも客層も想像がつかない。

普段クラブに遊びに来るような連中なのか、それともクラシック演奏会に行くような人たちなのか、はたまたそれらが混在するとしたら、その2者に交わるツボがあるのかどうか。

考えれば考えるほど、受けた仕事の重大さに、ちょっといつぶりなのかわからないぐらいのプレッシャーを感じていた。

しかもだ、用意された交響曲の中から俺が選んだのは、エリック・サティの『ジムノペディ』なのだが、この曲は3拍子だ。

ヒップホップは基本的にほぼほぼすべて4拍子で、俺は今まで3拍子でラップなんかしたことがなかった。

俺のラップは型にハマってないと思っていたが、すっぽり4拍子の型にハマっていたようで、3拍子に対してどうアプローチしていいかつかみきれず、とても苦労しながらなんとか2曲分の詞を書き下ろした。その慣れない3拍子の出来たての曲を一発勝負でちゃんと披露できるように歌い込んだり、とにかく慣れないことを頑張った。普段頑張らない俺が、本当に珍しく頑張ったのだ。

当日は、もう始まったらなるようになるマインドで、いまさらジタバタしても仕方ない。

サントリーホールに敬意を表する意味でも、サントリー翠(すい)ジンソーダを飲んでから未知のステージに上がった。

ラップと交響曲のコラボなのだから、俺はあくまでラッパーとしてのスタンスで臨んだのだが、酒を飲んでステージに上がるのが俺だけだったのは意外だった。

ゆったりとして牧歌的で、どこか物悲しい『ジムノペディ』に対し、ポエトリーリーディングにならないようにギリギリ押韻で踏みとどまった俺のパフォーマンスは、われながら悪くないデキだったと思う。

しかし、トリを飾った志人に交響曲×ラップの100点満点の成功例を見せつけられて、俺は、てかあの場にいた全員がお手上げ状態だったのではないだろうか。

およそ20年前、俺がラッパーとして活動し始めた頃、地元のクラブで目撃した降神(おりがみ・志人と、なのるなもないのユニット)のLIVEに打ちのめされ、もう少しでラップを辞めてたかもと思ったあのときの感じが、強烈にフラッシュバックしたのだった。

撮影/田中智久

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