メルセデスの高性能車「AMG GT63 4MATIC+ クーペ」は普通の人でも乗れる?

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2024年08月15日 12:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
メルセデス・ベンツの高性能車ブランド「AMG」が手掛ける「メルセデスAMG GT63 4MATIC+ クーペ」に試乗してきた。このクルマ、4リッターのV型8気筒ツインターボエンジンを搭載する2ドア車で、普通に暮らしていると滅多に乗る機会のない1台なのだが、日本の道路で乗って楽しいのか。そもそも、普通の人にも運転できるクルマなのか。確かめてきた。


往年の「SL」も乗りやすいクルマだった?



「AMG GT63 4MATIC+ クーペ」は高性能かつ高級なスポーツカーだ。



メルセデスといえば高級車の印象が強いかもしれない。しかし、歴史を辿ると、戦前から戦後にかけて高性能車の開発に力を注いできた実績がある。



第二次世界大戦後、メルセデスは「SL」という2人乗りスポーツカーを発売した。ガソリンエンジンの排気量は3リッターで、直列6気筒エンジンに今日では常識となった「直噴」という機構を採用していた。外観の特徴は、カモメが翼を広げるように左右のドアが大きく上に跳ね上がる「ガルウイングドア」だった。



20年ほど前、SLのオープンカー仕様であるカブリオレに乗る機会があった。往年の名車ということで乗る前は緊張したが、いざ走らせてみると操作に難しさはなく、乗用車と同じように運転できて、移動を楽しむことができた。



今回の「AMG GT63 4MATIC+ クーペ」も、対面するとさすがの迫力で、運転する前は少し緊張した。


ドアの開閉はガルウイング方式ではないが、縦格子状のフロントグリルはかつてのSLのレース仕様車両を彷彿とさせ、迫力満点だ。搭載するエンジンは排気量4リッターのV8で、ツインターボチャージャーを装備する。最高出力は585馬力、最大トルクは800Nmにおよぶ。



こうした車両概要を知るととてつもないモンスターマシンのように思えるのだが、さすがはメルセデス・ベンツ、いざ運転してみると不安なく走らせることができた。こんなに高性能なクルマでも、ドライバーを優しく迎えてくれるのだ。


2m近い車幅でも運転しやすい?



運転席に座り、まず目についたのはハンドルのスポーク下にある2つの丸いスイッチだ。右側で走行モードを切り替え、左側で排気音の音量調節とスタビリティコントロールのオン/オフを行う。エンジンを始動する前は単に丸いボタンスイッチがあるだけで、何を操作するためのものかがわからなかったのだが、エンジンを始動するとそこに表示が現れる。音量スイッチを操作すれば、日常の用途とは次元の違う迫力満点の排気音が楽しめる。

シフト操作はほかのメルセデス・ベンツ車と同じで、ハンドル脇のレバー操作で行う。さっそく、走り出そう。



アクセルペダルの操作に合わせて、ゆっくりと発進する「AMG GT63 4MATIC+ クーペ」。そこから加速するときも、乗用車とまったく変わらない容易さと安心感がある。これもメルセデス・ベンツの高性能車ならではだ。運転者になんら緊迫感を与えない。



車体の幅は1,985mmでほぼ2mに近い。3ナンバー車が一般的になった今日とはいえ、2m近い車幅はやはり気がかりだ。それでも、運転席の配置が適正であるからだと思われるが、カーブを曲がったり、路地へ右左折したりする際にも、取り回しに特別な気を遣う必要はなかった。ここも、誰もが運転しやすいメルセデス・ベンツという価値から外れていない。

日本の道路で能力発揮は可能?



高速道路へ向かい、さらにアクセルをひと踏み深めていくと、がぜん排気は高鳴り、シートに背を押し付けられるような加速を体感した。その強烈な加速の最中でも、前後4つのタイヤが的確に路面をとらえている感触が体に伝わってくるので不安はない。都市高速でカーブを右左へ切り返す場面でも、ハンドル操作のまま正確に進路を定めていく。安心かつ信頼性があり、クルマと一体になる喜びが感じられた。



走行モードを「スポーツ」に切り替えると、よりエンジン回転を高めた領域での走りとなり、アクセルペダルのわずかな操作で瞬時に加減速を行うようになる。「スポーツ+」にすれば、より機敏さが増す。減速状態に入ると自動的にブリッピング(エンジンの空吹かし)を伴いながらシフトダウンする。公道を走りながら、専用コースを運転しているかのような心持ちを味わえる。


実際のところ、一般公道を走っている限り、「AMG GT63 4MATIC+ クーペ」の性能を存分に引き出すことは不可能だ。それでも、スポーツモードやスポーツ+モードへの切り替えは、クルマが持つ高い性能の一端を体感させてくれる。このクルマを所有していることの喜びを実感できる機能だ。



AMGはもともと、メルセデス・ベンツのクルマを使ってレース活動を行う会社だった。1999年にメルセデスの傘下に入り、2014年からはメルセデス・ベンツのスポーツカーを担うブランドとして位置づけられるようになった。



AMGでは高性能車を作る際、1人の技術者が1基のエンジンを組み上げる手法を取り続けている。エンジンには、技術者のサイン入りプレートが貼り付けられている。このことは、技術者一人ひとりの誇りであると同時に、顧客に対する責任の証でもある。


メルセデス・ベンツの根底にあるのは「究極の実用車」を目指すことだ。小型車のみならず、高級車も高性能車も、実用的であることを第一とする。だから、「AMG GT63 4MATIC+ クーペ」といえども、運転者を不安にさせない日常の使い勝手があり、それでいて、超高性能といえる異次元の感触も当たり前のように体感させてくれるのである。



2,750万円からと車両価格は高価な「AMG GT63 4MATIC+ クーペ」だが、手にすれば、職人気質なクルマづくりを続けるAMGとのつながりを実感できるグランドツーリング(GT)カーだ。



御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)
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