サメ映画の魅力を解剖!『ジョーズ』から新作『エア・ロック 海底緊急避難所』まで

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2024年08月17日 18:01  ORICON NEWS

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日本サメ映画学会会長のサメ映画ルーキー氏(右)と同学会広報部の映灯十色氏(C)ORICON NewS inc.
 今夏、日本で初となるサメ映画に特化した「第1回東京国際サメ映画祭」(7月12日〜15日、東京・池袋HUMAXシネマズ)が開催され、チケット完売続出の大成功を収めた。このジャンルの原点にして頂点を極めてしまった、スティーヴン・スピルバーグ監督の『JAWS/ジョーズ』(1975年)から半世紀。スリルを楽しみたい人たちに求め続けられ、生きものとしての限界を超えて愛される“サメ映画”の魅力とは?サメ映画に詳しいサメ映画ルーキー氏(サメ映画専門のバイヤー兼翻訳家。日本サメ映画学会会長)と映灯十色氏(Vtuber、声優。日本サメ映画学会広報部)に聞いた。

【動画】『エア・ロック 海底緊急避難所』予告編

――「第1回東京国際サメ映画祭」では6ヶ国11作のサメ映画が上映されましたが、世界中で大小さまざまなサメ映画がコンスタントに生まれているんですね。誰もが知っているサメ映画といえば『ジョーズ』だと思うのですが、サメ映画の世界ではどんな存在なのでしょうか?

【サメ映画ルーキー(以下、ルーキー)】『ジョーズ』以前にもサメが出てきて、人を襲う映画はありましたが、巨大なサメに人々が立ち向かい、最後に爆発するという今のサメ映画の基本的な形をつくったという意味では、大きな影響力はあるけど、

【映灯十色】けど?

【ルーキー】今の若い世代になればなるほど、実は『ジョーズ』を見てない疑惑がけっこうある。

【映灯十色】その疑惑はありますね。

【ルーキー】『ジョーズ』は映画以外のところでたくさんこすられているので、観ていないけどなんとなく知っている状態になってますよね。作り手側は『ジョーズ』を意識したパロディーをやったり、印象的なシーンを取り入れたりすることが今もあるので、楽しむ側としては『ジョーズ』は観ておいたほうが、よりサメ映画を楽しめるのは間違いないのですが。

【映灯十色】『ジョーズ』はもはや古典。あらゆるサメ映画に『ジョーズ』を見つけることができる。

【ルーキー】あらゆるサメ映画は『ジョーズ』の続編と言っても過言ではないですからね。

【映灯十色】サメ映画のローマ。「すべての道はローマに通ず」「すべてのサメ映画は『ジョーズ』に通ず」というところが我々の見解ですかね。

――お二人がサメ映画沼にハマったきっかけは?

【ルーキー】僕は、『シャーケンシュタイン』(2016年)を観てからです。サメとフランケンシュタインの怪物を組み合わせたサメが出てくる。ビジュアルがすごかったんですよ。これを人前に出すんだ、みたいな男気を感じる衝撃映像で。『シャーケンシュタイン』はたまたま配信で観たんですけど、観終わった後、おすすめ欄がサメ映画で埋まっていたんです。気が付いたら…、って感じです。

【映灯十色】僕は声の仕事をやっていたので、B級映画の吹替を担当させてもらうことがあって、世の中にはいろんな映画があることを知り、レンタルショップに通っていた中でサメ映画と出会いました。それが『ゴースト・シャーク』(2013年)。死んじゃったサメが霊になって、水があるところならどこでもワープして出てこられるっていうとんでもないサメ映画を見た時に、なんなんだ、これは!って。DVDを返しにいった時にサメ映画が並んでいる棚があって。その時まで『ジョーズ』しか見たことがなかったので、サメ映画ってどこまであるんだろうって追いかけてきて今ここにいます。行く末が見えるまで死ねないです。

――現在のサメ映画人気はどこから始まっていると思いますか?

【ルーキー】サメ映画と一言で言っても、みんなが頭の中で描いているものはかなり差があると思います。

【映灯十色】『ジョーズ』から始まって、しばらく氷河期があって、一般層にもウケて久々にヒットしたのは『MEG ザ・モンスター』(2018年)ですか?

※『MEG ザ・モンスター』:ジェイソン・ステイサム主演、レスキューダイバーと太古の昔に絶滅したはずの凶暴な巨大サメの戦いを描く。

【ルーキー】一般的にはそうかもしれないですね。一部のマニアに火がついたのは、2013年の『シャークネード』(※)。そこからサメ映画に対する認識の違いが生まれたんですよね。サメは海にいるものなので、『ジョーズ』のような海でサメに襲われるまっとうなものは一般的なパニック映画。でも『シャークネード』から入った人は、サメに足が生えていたり、陸に上がったり、空を飛んだり、生きものとしてあり得ない、何でもありのままに駆け抜けるものがサメ映画だと思っている人もいる。サメにCGを使うのはダメで、着ぐるみを使ってこそサメ映画というファンもいます。

※巨大竜巻で巻き上げられた人食いザメが空から降ってきて、地上の人間たちを次々と襲う。これに主人公はチェーンソーで立ち向かうという、ゾンビ映画の感覚をそのまま持ち込んだ作品。

【映灯十色】多様性が生まれてきている。

【ルーキー】それぞれ元気なんですよ。劇場公開されるような、今年でいうと『エア・ロック 海底緊急避難所』(公開中※下段にあらすじあり)のような良質な作品がコンスタントに劇場公開されていて、そういうのを追っている人は『ジョーズ』以外にも面白いサメ映画があるね、と楽しんでいると思う。『シャークネード』みたいな、劇場公開されていないビデオスルー、配信スルーの作品にハマると、そういう作品ばかり好んで見るようになって。

【映灯十色】好事家寄りの人たちが出来上がっていく。

【ルーキー】もうちょっとディープなところに行くと、配信もなくて、DVDがたまに出ているものを探して、楽しんでいる人もいる。

【映灯十色】海外から日本に上陸していない作品を個人で輸入している人もいますからね。

【ルーキー】『シャークネード』が話題になって、ヘンなサメ映画をつくるムーブメントがアメリカで起きたんですよ。『シャークネード』はアメリカのサイファイチャンネルというケーブルテレビで放送されて、その翌年から『シャークネード』の続編にあわせて、サメが雪原に現われたり、頭が複数あったりするヘンなサメ映画がコンスタントにつくられるようになって、そのブームに便乗する形で、予算ほぼゼロに近いようなZ級サメ映画がアメリカでたくさんつくられるようになって。一部は日本でも配給されて、そういうのを好む層もいて。劇場公開レベル、ケーブルテレビレベル、低予算で公開も放送もできないレベル、それぞれ作品がつくられている。

【映灯十色】製造ラインが違うんですよね。

【ルーキー】それぞれ継続して楽しめるくらいに、作品が出続けている結果、思い描くサメ映画の違いが出ていますね。

――いずれにしても皆さん、サメが好きなんですね。

【ルーキー】サメ自体がスターなんですよ。サメが出るってだけで見たくなる。

【映灯十色】潜在的な何か、人類に刻まれた(?)魅力がサメにはある。神秘的な動物ですからね。まだ8割以上生態が解明されていないところもありますし、そういった意味では、多くの人の興味を引き付ける「恐竜」と同じ。ミステリアスな部分があるからこそ、監督たちは不透明な部分に想像力をかき立てられる。そこが一つの魅力かな。

――ヒットするサメ映画に共通しているものは?

【ルーキー】ないんじゃない?ほんとに。サメ映画の多様性が高すぎるので、これを絶対やったほうがいい、みたいなのはあんまりない気がするんですよね。一般層にちゃんと見てもらうには、あんまりぶっ飛びすぎていない方がいいって思うかもしれないですけど、『シャークネード』のようなぶっ飛びすぎて逆に人気になったりもするので、難しいですね。

【映灯十色】ヒットしないサメ映画の特徴は一致しているんですけどね。まっとうに描き切るか、ぶっ飛びにかけるかの間にいる、どっちつかずの半端な作品はあまり伸びてこないかな。振り切った方が喜ばれる。

【ルーキー】ぶっ飛びに振り切った方がマニアにはウケますよね。みんな味付けが濃いものに慣れちゃっているので。

【映灯十色】無味乾燥が一番ウケない。

――サメ映画人気を終わらせないためには?

【映灯十色】楽しみ方を啓蒙しないといけないかもしれないですね。

【ルーキー】映画って座って観てて楽しいじゃないですか。サメ映画ってそれじゃダメなんですよ。こっちから楽しむ姿勢が必要。『エア・ロック 海底緊急避難所』のように、何も考えずに座って観てて楽しいサメ映画もありますが、そうじゃないサメ映画があまりにも多すぎる。それを普通の映画だと思って観始めて、けっこうなダメージを喰らう人もいるので、事前の注意喚起は必要だと思っています。

【映灯十色】能動的に楽しむ姿勢は大事ですね。

【ルーキー】たくさん登場人物がいる中で、誰が生き残るのかを予想する、というのもサメ映画の楽しみ方の一つですね。

【映灯十色】サメ映画ダービーですね。オッズ高いぞって、思いながら。良いサメ映画には死んでほしくないキャラがいるものです。

【ルーキー】『エア・ロック 海底緊急避難所』には、この人死んだら嫌だなとか、感情移入できる登場人物がたくさんいましたね。

【映灯十色】誰も死んでほしくなかったですもんね。

【ルーキー】中には誰が喰われてもどうでもいい、って思うようなサメ映画もあります(笑)。感情移入をして誰が生き残るかを楽しみながら見られるというのは、それだけで良いサメ映画。そういう意味でも『エア・ロック 海底緊急避難所』は良い映画です。

――今後のサメ映画界に期待していることは?

【ルーキー】作り手側には、思いついたことは全部やってほしいですね。頭の中にあるものを我々が見られる映像作品として作り上げていただけたら。

【映灯十色】かのダーウィンが申したとおり、「生き残る者は変化できる者である」というのは、サメ映画にも言えると思うんですね。『ジョーズ』という大きなプロット、始祖はあるんですが、そこからはみ出していくことを恐れないでいただきたい。これだけサメ映画が人気で多様化していったのも、逆にヒットするメソッドがないからこそ。なんでもやっていいんだっていうところが今の人気につながっていると思うので、変化を恐れないで自分の感覚を信じてほしいです。

■『エア・ロック 海底緊急避難所』

 州知事の娘・エヴァは恋人と友人との卒業旅行のために、10歳のローザは陸軍出身の大好きな祖父母との3人旅行のために、CAのダニーロは彼氏との同性婚を夢見ながら大型旅客機に乗り、南国メキシコのリゾート地・カボへと向かっていた。だが飛行中、エンジンに鳥が激突して機体は高度2万フィートから、遥か海底へとあえなく墜落…。生き残ったのはエヴァとローザを含むわずか7人のみ。そして、生き延びられる場所は機内のエア・ロック、ただ1ヶ所だけ。生存者たちは身を隠すように救助を待つが、そこは、決して安全ではなかった。襲い来る水圧、失われていく酸素、そして遂には海の捕食者が、機内に忍び込んで来る。飛行機内をたゆたう人喰いザメ。そこには違和感と恐怖しかないのだったが――。底なしの海底で刻一刻と生還不能へのカウントダウンが刻まれるなか、果たして生き残ることが出来るのだろうか。

『JAWS/ジョーズ』(C) 1975 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.
『MEG ザ・モンスター』(C)Warner Bros. Entertainment Inc.
『シャークネード』(C)2013, THE GLOBAL ASYLUM, INC. All Rights Reserved.
『エア・ロック 海底緊急避難所』(C)NWUP Limited 2023

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