ハイスペ男は、ほぼほぼモラハラ
「私たち、上の世代を見てきたのと自分たちの経験も合わせて、“ハイスペ男はほぼほぼモラハラ男である”と、わかっちゃったんです」笑いながら、ミホさん(25歳)はそう言った。だから出した結論はこうだ。
「恋愛の延長線上に結婚があるという考え方が間違っているのではないかと。結婚は友情婚が一番だと思っています」
その上で、恋愛したいなら結婚後にするという手もあるというのだ。
「誰かと共同生活をして、人生をともに歩みたい人は結婚するんでしょうけど、その基準を友情に置く。そうしたら結婚後に嫌な思いをすることもない。結婚後の恋愛が一般的になったら不倫も悪くは言われないでしょう?
不倫相手の子を産んでも、夫とは友情でつながっているから一緒に育てていけるんじゃないでしょうか」
「恋愛や結婚は1対1でなければならない」は思い込み?
なかなかぶっ飛んだ結婚観のように思えるが、今だって似たような現実はある。ただ、一夫一妻制という縛りがあったり、「恋愛や結婚は1対1でなければならない」と思い込んでいるから“不倫”という言葉で非難されてしまうわけだ。「もっとオープンにならなければ、結婚という制度は終わるんじゃないでしょうか。このままだと独身が増えて、ますますこどもが生まれなくなっていく」
そのためには「男が意識を変えてもらわないといけない」とミホさんは言う。自分の子でなければ育てないという小さな器ではダメなのだ、と。
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愛だの恋だのという関係ではなく、強い友情で結ばれた夫婦のほうが絆は強いのではないだろうか。性を意識しない関係なら、どこまでもひとりの人間同士として生きていけるのだから。人と人との関係に敬意は不可欠だが、恋愛と敬意より友情と敬意のほうが親和性は高そうだ。
そうなればモラハラなどは存在しなくなる。本当の意味で「対等な関係」が生まれる可能性が高まるだろう。
ハイスペ男と結婚したら「離婚真っ盛り」
「私の周りは今、離婚真っ盛りです」そう言うのは35歳のユカリさんだ。30歳前後で結婚し、第1子が産まれてまだ小さい時期だが、25歳のミホさんの指摘通り、「ハイスペ男と結婚した人ほど離婚している現実」があるという。
「まだ離婚という決断を下していない友人たちも、もう夫にはうんざりと言い始めている。私たちも、男のほうが偉いとか女は男を立てるものだなんていう価値観はもっていない。
だけど男は結婚すると、自分が妻を従わせないと気が済まなくなる。子どもができて妻が一時的にでも仕事ができなくなり経済力がなくなると、ますます自分の経済力を笠に着る。そんなところがあるんでしょうね。だから離婚を見すえる女性たちが増えていく」
ユカリさん自身は未婚だが、周りを見ていると結婚意欲がどんどん萎えていくと苦笑いした。ハイスペ男ときちんと恋愛をして、その延長戦での結婚がゴールとなっていた女性たちではあるが、それは自分らしさや自分の意志を失っても我慢できるものではない。
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そしてそれは今の40代も同じである。子育ての終わりが見えてきた40代後半のマリコさんも、夫のモラハラを受け止め続けてきたものの、離婚を考え始めているひとりだ。
「モラハラ即離婚と決められず、そのままずるずると生活し続けてきました。子どもが生まれれば夫は変わるかもと思いながら、ふたり生んで、でも夫は変わらず。結局、いいことなんて何もないと思いながら暮らしてきたんです。
今や子どもも大学生と高校生。数年後には、私も自分の人生をもう一度送れることが見えてきた。そうなれば後は問題の夫をどうするか、です。離婚という選択しかないなと思うようになりました」
我慢してきたことは悔しいし、今どきの30代のように早く決断すればよかったという思いはある。だが、人生、いつからリスタートを切っても遅くはないはず。
脈々と続く「男の論理」から抜け出せるか
3人の話を聞いていると、女性の意識がどんどん変わってきているのがわかる。より対等な関係を築くために、女性たちは自分の意志を鍛えてきた。だが男性側はどうだろう。案外、脈々と続く「男の論理」から抜けられずにいるのではないだろうか。友情婚しかないと言う20代女性たちの相手となる男性たちが、同じ感覚をもっていれば話はスムーズなのだが。
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世の中、うまくいかないですね。こうなると独身女性は増加の一途でしょうねと、ミホさんは眉をしかめた。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))