Jリーグ夏の移籍の難しさ 福田正博が指摘「ネームバリューがあっても活躍できないケースも」

0

2024年08月28日 07:30  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

福田正博 フットボール原論

■Jリーグは夏場に選手の移籍があり、この先終盤戦に入っていく。各クラブ狙いをもった補強をしているが、夏場の補強の難しさとその理由を福田正博氏が語った。

【町田の補強は守備力アップが狙いか】

 Jリーグは終盤戦に向けて、各クラブが夏の補強を繰り広げた。なかでも目を引くのが優勝争いをするクラブの活発な動きだ。

 首位を走るFC町田ゼルビアは、前半戦首位の立役者だった平河悠(ブリストル・シティ)が海外移籍で抜けたところに、ポルトガルのカーザ・ピアでプレーしていたFW相馬勇紀を獲得。また、イングランド2部のハダースフィールドからDF中山雄太も獲得している。このほか清水エスパルスからMF白崎凌兵、サイドバックには湘南ベルマーレからDF杉岡大暉を加えている。

 町田は首位の座を守っているものの、序盤戦に見せた勢いに陰りがある。守備をベースにするスタイルだけに、この夏場の暑さによって選手たちの足が重くなっているように映る。初優勝に向けて、まずは守備から立て直したいという狙いが黒田剛監督にはあるのだと思う。中山や杉岡を獲得した意図はそこにあると見ている。

 ボランチ、サイドバック、センターバックでプレーでき、日本代表での経験も豊富な中山の獲得は、守備力をベースに戦う町田にとっては大きな補強になるはずだ。

 また、相馬の獲得も前線からの守備の部分が大きいのではと思う。町田は平河の仕掛けから得点チャンスを築いてきただけに、相馬にも同じような役割を求めたいところだろう。もちろん相馬もサイドからの攻撃力を持っているが、特長は平河とは異なる。また、相馬がチームにフィットするには時間が限られているため、攻撃のところで多くを求めるのは酷かもしれない。

 その一方で、名古屋グランパスや日本代表で与えられた仕事にひたむきに取り組んできた相馬には、前線からボールを追い回し、攻守で走り回る躍動感を期待されているように思う。また、チームの雰囲気は、選手のピッチ内外の振る舞いひとつでガラッと変わることがある。相馬の持つプレー強度の高さによって、J1優勝に向けてチームに活力を注入する狙いもあるのではないかと思う。

【想像以上に難しい夏場の補強】

 その町田を追うサンフレッチェ広島は、FW大橋祐紀がイングランド2部のブラックバーンへ、ボランチの川村拓夢がオーストリアのザルツブルクへ移籍した。川村の抜けたボランチにはベルギーのスタンダール・リエージュからMF川辺駿が復帰している。

 優勝へのポイントは前半戦で11得点を挙げていた大橋の穴が埋まるかにある。たとえば2022年シーズンの鹿島は、上田綺世がゴールを稼ぎまくって首位を走っていたが、夏に海外移籍したことでその後失速してしまった。それだけに、広島が大橋の抜けたFWの新戦力を獲得していないのは、対応しきれていないのか、ほかの部分に勝算があるからなのか、興味深く見ている。

 リーグ2連覇を狙うヴィッセル神戸には、ベルギーのシャルルロワからMF森岡亮太が8シーズンぶりに古巣に復帰した。近年は腰痛で出番がなかったが、長くベルギーで活躍した経験値で、土俵際にいるチームを再浮上させられるか注目したい。

 鹿島アントラーズは、スコットランドのハーツからFW田川亨介を獲得し、中盤にはベルギーのルーヴェンからMF三竿健斗とウクライナのルフ・リヴィウでプレーしていたブラジル人のターレス・ブレーネルを獲得した。

 中盤に新たに獲得した2選手が、ドイツへ移籍した佐野海舟(マインツ)以上の働きを見せることができるかが、2016年以来8シーズンぶりの優勝へのポイントだろう。

 この4チーム以外も補強を繰り広げているが、夏場の補強というのは、周りが考える以上に難しい側面がある。

 たとえば、海外のリーグでプレーしていた選手は、実力が認められて海外でプレーしてきたわけで、Jリーグに復帰してからのプレーに期待がかかるが、本来持っている能力をすぐに発揮できるかとなると、話は別だ。

 自分の能力をフルに発揮していくためには、自分の特長をチームメイトに理解してもらい、チームメイトの特長も把握してチームにフィットすることが不可欠だからだ。夏場の移籍は、そこへの準備の時間が限られるため、どれだけネームバリューがあっても活躍できないケースもある。

 Jリーグクラブ間の移籍も同様だ。同じシステムやスタイルのチームに移籍したのに、うまくいかなかった選手の例もたくさんある。

【誰がチームを助ける存在になれるのか】

 その難しいタイミングでの移籍で、誰がチームを助ける存在になれるのか。その観点からJリーグを見るのも楽しいだろう。とりわけ降格圏に身を置くチームにとっては、新加入選手の躍動が天国と地獄をわけるケースがある。

 今季はJ1の20チームのうち下位3チームが降格の憂き目にあうが、第28節終了時点では、18位がジュビロ磐田(勝ち点28)、19位がサガン鳥栖(勝ち点24)、最下位20位は北海道コンサドーレ札幌(勝ち点22)になっている。

 3チームとも厳しい状況に違いないが、18位の磐田と13位の浦和レッズまでの勝ち点差は7ポイントしかない。激しい残留争いがシーズン終盤まで続くことになるだろう。

 最後に笑うチームはどこか。そこは、この夏にしっかり補強に取り組んだクラブと、そうでないクラブの差がその明暗を分けるのではないか。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定