夫とは「もうレスでいいと思っている」の衝撃
無作為に抽出した623人のセックスレス当事者は、夫婦間のレスについて、男性66.6%、女性75.9%が「話し合ったことはない」と回答。特に40代女性の当事者は9割が「話合う気なし」で、最も多い理由は「もうレスでいいと思っているから」。これはかなり衝撃的な回答だ。さらに非常に興味深かったのは、そのうち6割以上が「もう夫とはしなくていいと思っている」というのだ。ただし「誰ともしなくてもいい」と答えているのは17%弱。夫とはしたくないが、他に誰かがいればと思っているというわけだ。
40代女性の不倫が多いことは実感しているが、子どもたちから少し手が離れ、パートも含めて社会との接点も濃くなると、やはり潜んでいた「恋愛感情」が刺激されるのかもしれない。
「うちは30代からレスだった」
「うちは30代からレスでした。私も子どもをふたり抱えて忙しい。夜は疲れてその気になれない。もういいよと夫に言った記憶があります」アイミさん(43歳)はそう言う。31歳で3歳年上の男性と結婚し、33歳、35歳でふたりの男の子を産んだ。夫の希望やアイミさん自身の思いもあり、上の子は3歳になるまで自宅で育て、次男が2歳になったのを機に保育園に預けた。
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アイミさんはもともとWeb関係の仕事をしていたので、子どもたちを保育園に預けて仕事を再開した。幸い、もといた会社から仕事を回してもらえることになり、ほぼ在宅で仕事ができた。
「忙しかったですよ。在宅で仕事なんて楽でいいなと夫は言い、保育園の送り迎えすらしたことがありません。家事も、せいぜい週末の掃除くらいですね。子どもとはよく遊んでますね。どちらが遊んでもらっているのかよくわからないけど(笑)。
私はワンオペに近いけど、それでも1日中、子どもと顔を突き合わせてつきあわせているよりは、仕事をしているほうが精神的には充実していました」
考えてみれば次男が産まれたころから、夫とはレスだったという。気づいたらレスになっていた。夫から誘われたこともあったが、忙しすぎて応じられなかったし、そもそも「子どもがふたりになった時点で、夫はすっかり家族。子どもたちの父親ですから、男としては見られなくなっていた」そうだ。
次男が小学校に入った昨春からは、もっと仕事を広げようと週に2回ほど出社したり、仕事のスキルアップのためのセミナーに出席したりと外出の機会も増えた。同世代で既婚の男女と世間話をする中で、「夫婦関係も家族関係もいろいろだなあ」と思うようにもなった。
心惹かれる男性が現れ「ドキドキが……」
「結婚していて子どももいて、仕事もしている。忙しくて泣きたくなることもあるけど、まあ、こんなもん」と毎日張り切って過ごしていたアイミさん。自分の中に恋愛欲求などまったくないと思っていた。
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3日間のセミナーで知り合った6歳年下のジュンさんが、最終日に「もう少しだけ話せませんか」と声をかけてきた。まだ時間も早いしとふたりでカフェに行った。
「仕事の話をしていたんですが、彼が『アイミさんの話し方って、とても魅力的です』って。『アイミさんみたいな人がいたら僕も結婚するのに』と。彼はまだ独身なんです。何言ってるのよと流したけど、なんだか心が乱れました」
それから1週間後、ジュンさんから食事に誘われた。だが夕方以降はやはり出ることはむずかしい。考えた末、夫に「ねえ、私もたまには飲み会に行きたいんだけど。あなた、しょっちゅう行ってるよね。私も仕事の潤滑油として飲み会出席したいのよね」と言ってみた。
日頃から家事を任せることが多いため、夫は少し後ろ暗かったのかもしれない。
「『おお、飲み会くらい行ってこいよ。オレが子どもたちを見るから』と言ってくれた。それで週末金曜日の夜、ジュンと食事をしました。久しぶりに男性とふたりきりで食事をして、夜の街を歩いて、もう1軒バーに行って。すっかり華やいだ気分になりましたね」
「女性にも欲望の解消は必要なんだなと」
不倫にはまる女性の中には、こういうケースが非常に多い。恋愛などする気もなく、そんな感情も忘れていたのに、ふとしたことで一気に恋愛モードに切り替わってしまうのだ。あるいは女としての自分に目覚めてしまうこともある。アイミさんは後者だったという。「恋愛感情というより、自分が女だったことを再発見したというか(笑)。母で妻で主婦で社会人で、という役割から、ふわりと“女”が浮かび上がったような気がしましたね」
2度目の食事のあと、誘われるままにホテルに行ってしまった。「自分の体は、こんな風にも使えるんだという妙な発見があった」と、アイミさんは興味深いことを言った。いつもとは役割の違う自分の体、そして深い欲望に驚いたのだそうだ。
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だったら夫と復活してもいいのではないかと考えたこともある。だが、「それはできない」と思い直したとか。
「夫じゃだめなんですよねえ。欲望の解消をするには、存在が身近すぎるんです」
夫婦としてはうまくいっているんですが、とアイミさんは苦笑した。
<参考>
・「夫婦のセックスレスに関する実態調査 第8報」(レゾンデートル)
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))