【夏ドラマ】『ビリオン×スクール』第10話 SF要素への踏み込みと学園ドラマとしての硬質なメッセージ

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2024年09月07日 19:01  日刊サイゾー

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 天才AI開発者かつ大金持ち美顔男の加賀美(山田涼介)がAI教師開発のために高校の落ちこぼれクラスで教師をやってるドラマ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)も最終回前の第10話。

 学園ドラマの定番である文化祭イベントを残しつつ、いよいよ「人間とAIの関係」みたいなSF的なところにも踏み込んできました。

 少年時代にイジメに遭ったことがきっかけで学校の屋上から転落し、頭に大ケガを負ったことのある加賀美。今回は、その重大な秘密が明らかになりました。

 振り返りましょう。

■AIだって優秀なのだ

 そもそも、完璧な教師を作るという目的でAI教師の開発を志した加賀美。そのプロトタイプである「TEACH」(安達祐実)は常に最適解を導こうとしていますが、実際にクラスの問題を解決してきたのは加賀美の「人間性」や「感情のゆらぎ」という人間ならではの要素でした。

 それに「TEACH」自身が不満を持ち始めたのが前回。ぜんぜん指示通りに動こうとしない加賀美に業を煮やし、瞳の中のデジタル表示をピコピコさせながら「消滅することにしたの」「私が全部、教えてあげる」などと不規則な言動を繰り返すようになっています。

 そんな折、加賀美が担任する3年0組では文化祭を前に新たな問題が発生。これまでクラスを牛耳ってきた雪美(大原梓)と城島(奥野壮)が失脚し、改心したまではよかったのですが、虐げられてきたほかの生徒たちが「雪美と城島が参加するなら、自分は文化祭には出ない」とボイコットを宣言するのでした。

 この問題解決のために「TEACH」がある方法を考え、今回は加賀美も「TEACH」のアイディアを採用することに。無事、雪美と城島の改心がホンモノであることがクラス全員に伝わり、一件落着となります。

 やっぱりAI教師は優秀ですので、全部計算通りに解決してみせたのでした。特に苛烈なイジメを受けていたひめ香(上坂樹里)も「許す努力をする」と殊勝に述べていました。

 文化祭に向けて、みんなでダンスの練習をすることになった3年0組はもう、青春の真っただ中です。雪美も城島も協力的だし、落ちこぼれクラスにすっかり平和が訪れました。

 しかし、冴えない表情なのは当のひめ香。一致団結していくクラスに抱いた違和感は拭えず、文化祭への参加を辞退します。一度は許す努力をすると決めたけれど、やっぱりそうやすやすとは許せない。みんなと笑って踊るなんて、ちょっと無理なのでした。

「TEACH」はそんなひめ香について「様子を見ろ」と加賀美に提案しますが、加賀美は「TEACH」のスイッチを切って、また人間としてひめ香と向き合うことにします。

 許す必要なんてない。許さないまま、好きなことだけやって笑って生きていけばいい。

 イジメた側は、許されない痛みを抱えて生きていくしかない。人を傷つけるとはそういうことだ。

 学園ドラマとして、ここにきてゴチンと硬質なテーマを叩きつけてきます。いいね、気持ちのいいメッセージです。やっぱ血の通った人間の言うことは違うよね。

■「やっぱAIより血の通った人間だよな」

 第1話のレビューで、「『やっぱAIより血の通った人間だよな』みたいな安直な結論に至らないでほしいな」と書きました。

 ひめ香の問題に対してまた独断で臨んでいった加賀美を、やっぱり「TEACH」は認めません。私を否定するな、私の言うことを聞け、私は完璧、なんでも私が教えてあげられる。

「だって、私と加賀美くんは同じだから」

 そう言って「TEACH」は、ある資料を提示します。加賀美は屋上からの転落事故で脳に損傷を負い、それ以降はAI脳を持った人間として生きてきたことを「教えてあげた」のでした。

「俺が、AI……?」

 つまりは加賀美自身がAIとして「TEACH」の上位互換であり、進化したAIのなれの果てだったわけだ。ちゃんと伏線はあったし予想できる展開ではあったけど、いいね、気持ちのいいSF展開です。安達祐実の怪演も気持ちいい。

 このドラマは、学園で起こるさまざまな問題について、ちゃんと哲学を言語化して、わかりやすくて熱い言葉で語ってきました。脚本家が、ちゃんと自分のフォームで、全力でバットを振り切ってきたということです。

 AIを扱うSFとして、最後にどんなスイングが見られるのか。楽しみではあるけれど、あと1回で終わっちゃうかーとさみしくなる程度には好きなドラマでしたね。職員室のくだりで役者が笑っちゃうのをそのまま使うのも、個人的には楽しくていいと思いました。初回からずっとアバンで使ってたクラスみんなでの水鉄砲合戦に至るプロセスも納得感あったしな。よきです。ありがとうありがとう。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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