サッカー日本代表、バーレーン戦大勝の要因 だがこれで本大会の「予行演習」になるのか

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2024年09月11日 12:10  webスポルティーバ

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 9月10日、バーレーンのマナマで行なわれたW杯アジア3次予選の第2戦。日本は5日に行なわれた中国戦同様、3−4−2−1で臨んだ。スタメンは以下のとおり。

 鈴木彩艶(GK)/(左から)町田浩樹、谷口彰悟、板倉滉(CB)/守田英正、遠藤航(守備的MF)/三笘薫、堂安律(ウイングバック)/鎌田大地、南野拓実(2シャドー)/上田綺世(CF)

 初戦からの入れ替えは久保建英と鎌田のわずか1カ所で、2シャドーの右で出場した久保に対して鎌田は左に入り、南野が左から右に回った。

 試合展開は第1戦の中国戦と似ていた。前半苦しみながら後半に弾け、ゴールラッシュとなった。

 先制点は前半37分のPKだった。右サイドを走った鎌田の鼻先に遠藤から縦パスが出る。その折り返しが相手DFアブドゥラ・アルハラシの手に当たったという判定だった。

 開始間もなく、堂安がポストに当てるスライディングシュートを放っていたが、それ以降は攻めあぐんでいた。相手ボールに転じると三笘、堂安の両ウイングが最終ラインに取り込まれた。5バックの形成を余儀なくされ、マイボールに転じても両者は孤立傾向を示した。3−4−2−1という守備的な布陣上に、攻撃的な選手を配置する矛盾が浮き彫りになっていた。

 それが後半は一転、森保ジャパンが抱えるそうした構造的な問題を忘れさせる展開になる。

 2分。鎌田が左を走った三笘に送った縦パスは相手にカットされるが、三笘が粘り奪い返すと再び鎌田にパスを返した。そこから後半開始時から堂安に代わり右ウイングバックに入った伊東を経由して、上田の足もとにボールが収まると、その右足シュートはポストを当たりながら、ゴールに飛び込んでいった。

 先制点のPKを誘発した鎌田が再びパスワークに有効に絡んだ結果だった。堂安に代わり伊東が入ったことも奏功した。伊東のポジションに左利きの堂安が構えていたとしたら生まれていなかった得点だろう。

【俊逸なプレーを披露した守田】

 伊東が代表を離れている間、出場機会を増やすことになった堂安は、左利きがキツイことも手伝い、縦に出る推進力は、伊東という右利きの右ウイングに比べて大きく劣る。日本はこのゴールを含め4ゴールを奪ったが、前半と後半で試合内容が一変したいちばんの要因は伊東と堂安の交代だろう。

 三笘に代表される右利きの左ウイングは数多くいるが、右利きの右ウイングは貴重だ。これは世界的な傾向でもあるが、日本でも伊東に代わる選手はいない。浅野、前田大然らでは荷が重い。しかし伊東は31歳だ。33歳で迎えることになるW杯本大会まで、トップコンディションを維持できるか。微妙な問題だろう。

 三笘、そしてこの日、後半28分から三笘に代わり途中交代で入った中村敬斗が控える左に比べると、右は明らかに弱い。森保ジャパンでは2シャドーの一角や1トップ下で出場する機会が多い久保が右に回った場合も、推進力という点で疑問が残る。

 3点目は後半16分。得点者は守田で、きっかけも守田だった。そのアウトフロントキックが右のライン際を走った鎌田の鼻先に通ったことで、局面は動いた。鎌田が脇で構える遠藤に預けたボールを守田は再び受けると、1トップを張る上田にボールを預け、パス&ゴーで前進。リターンを受けるや右足のインサイドでクリーンシュートを決めた。

 守田はその3分後にも三笘の折り返しをゴール前で合わせ、4−0とするゴールを決めている。鎌田、守田のふたりは、採点するならば7以上を出せる、この日のスタメン組として輝いた双璧の関係だった。

 所属のスポルティングはポルトガルリーグで首位を行くチームだが、格的に物足りなさを覚えることも事実だ。しかし、リバプールに所属する遠藤の隣でプレーすると、守田のプレーの質の高さは明白になる。もっと上のランクでやれそうな上級の選手に見える。プレミアやスペインの上位クラブでプレーしてほしくなる、秀逸なプレーを披露した。

【森保式3−4−2−1の問題点】

 交代選手では伊東に加えて中村もよかった。4度ほどあった相手右SBとの1対1はほぼ完勝。後半36分にはこの日の5点目となる小川航基のゴールを演出している。縦に抜いて左足シュート。GKがセーブしたボールを小川が頭で押し込んだ格好だが、中村は三笘以上に見せ場を作った。バーレーンは後半なかば過ぎから完全に集中力を切らしたので、額面どおりには受け取れないが、左ウイングとしてのレベルの高さを示す中村のプレーだった。

 正確には左ウイングバックである。前半37分までそうだったように、相手ボールになり、最終ラインに取り込まれたとき、ドリブル&フェイントに力を注ぐ余力はどれほどあるか。中村はそこで切れ味鋭いプレーを見せつけることができるか。

 あるいは相手のレベルが上がった時、最終ラインで中村はどれほどディフェンス力を発揮できるだろうか。ウインガーとしても、サイドバックとしても、物足りない選手に映る可能性がある。一見、超攻撃的に見えるサッカーは、ある瞬間、まったくそうでないサッカーに陥る。森保式3バック=3−4−2−1にはそうした問題点を抱えている。

 だが、中国戦に続き、このバーレーン戦でも、それは大きな問題にはなり得なかった。続くサウジアラビア戦、オーストラリア戦でもその可能性は高い。表面化せずに潜行する。相手のレベルが上がらない限り露わにはならない。

 その認識、自覚が森保監督にどれほどあるか。少しでもあるなら、予行演習にもならないサッカーをいまこの時期やっていないはずだ。「死の組」だと言って始まったにもかかわらず、超楽観的なサッカーをする。正しい時間の使い方をしているようにはまるで見えないのである。

 日本人選手の採点をするなら以下のとおりになる。

 鈴木6、町田6.5、谷口6、板倉6、三笘6.5、守田7.5、遠藤6、堂安5.5、鎌田7、南野5.5、上田7、伊東7、中村7、浅野5、久保6、小川6.5

 W杯アジア3次予選C組の2戦を終了した段階での成績は以下のようになった。

 日本=勝ち点6、サウジアラビア=4、バーレーン=3、インドネシア=2,オーストラリア=1、中国=0

 他国にはもう少し頑張ってほしいものである。

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