自民党総裁選に立候補した9人の推薦人を見ると、派閥裏金事件に関わった議員が20人のリストに名を連ねた陣営は五つと半数を超えた。「政治とカネ」の問題への対応が問われているが、候補乱立の中、推薦人を確保するには背に腹は代えられない事情もあったようだ。
裏金議員は全体で80人程度に上る。突出して多かったのは高市早苗経済安全保障担当相の推薦人の13人で、全て安倍派(解散決定)。高市氏は2021年の前回総裁選で安倍晋三元首相の支援を受けた。保守派を支持基盤とするため、保守系議員の多い安倍派をあえて排除しなかった面もあるとみられる。
加藤勝信元官房長官の陣営にも裏金議員が4人含まれる。推薦人を集めるのにてこずったことが影響したもよう。茂木敏充幹事長の推薦人に2人、小泉進次郎元環境相と上川陽子外相の陣営には各1人の裏金議員が入った。この8人も安倍派だ。
これに対し、小林鷹之前経済安保担当相、林芳正官房長官、河野太郎デジタル相、石破茂元幹事長の推薦人リストに裏金議員はいなかった。
小林氏は出馬表明会見に安倍派議員が多く同席したことが批判を招いた。推薦人は無派閥を含め各派を横断する形で中堅・若手をそろえた。二階派(解散決定)や安倍派の議員も計9人含まれるが、いずれも政治資金収支報告書の不記載はなかった。
林氏陣営のリストには同氏が所属してきた岸田派(解散済み)の議員が15人並んだ。同様に、河野氏の推薦人は麻生派から18人が入り、石破氏の場合は無派閥議員が13人を占めた。
一方、「キングメーカー」を争う2人として注目される菅義偉前首相と麻生太郎副総裁は対応に違いが表れた。
菅氏は小泉氏の推薦人に自らに近い議員を10人程度送り込んだ。自身も8日に横浜市で街頭演説し、小泉氏支持を公言。表立って動くことに対しては「小泉政権誕生の暁に強い発言力を持つ狙いだろう」(党関係者)との見方が多い。
麻生氏は河野氏支持を麻生派内で促したが、他候補の支援も容認。特に推薦人集めに苦労した上川氏には助け船を出したとされ、同氏の推薦人には麻生派議員が9人並んだ。決選投票をにらみ、幅広く影響力を及ぼしておく狙いのようだ。