「映画わんだふるぷりきゅあ!」で色濃く描かれた“ペットと飼い主の関係性”

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2024年09月26日 18:18  ねとらぼ

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ねとらぼ

好発進となった「わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ・ゲームの世界で大冒険!」

 全くの予想外でした。まさか、アラフィフおじさんがこんなにも泣かされるとは思っていませんでした。


【画像】「映画わんだふるぷりきゅあ!」予告映像のワンシーン


 「二足歩行のどうぶつがかわいくダンスをする予告映像」に完全に油断していました。この映画「人間とペットの関係性」についての核心をついてくるのです。


※この記事では映画の内容とセリフについて触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください


 今ペットを飼っている方、かつてペットを飼っていた方、そしてどうぶつに限らず「大切な何か」がある方、きっとこの映画はあなたの心に刺さります。


 ぜひ、映画館で見てほしいのです。


●絶好調なスタート「映画わんぷり」


 2024年9月13日「わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ・ゲームの世界で大冒険!」(「・」はハートマーク。以降「映画わんぷり」)が公開されました。


 初動4日間(9月13〜16日)の興行収入は4億9700万円、動員40万5000人を記録。2023年の「映画プリキュアオールスターズF」に次ぐ絶好調のスタートとなりました。


 自分も3回ほど映画館に行きましたが、親子連れの姿がたくさん見られたのはもちろん、例年よりも大人の女性のお客さんも多く見られ、プリキュア映画の客層が少しずつ変わってきていることを実感しました。


 ストーリー的には、人気ゲーム「ドキドキ・タヌキングダム」(「・」はハートマーク)の世界に吸い込まれてしまった「わんだふるぷりきゅあ!」の4人が再会するためにゲーム対決に挑む、といったお子様にも分かりやすい内容となっています。


 ゲスト声優にはお笑いコンビ「ジャルジャル」を起用。2人が演じる「ポンタ」「ポコタ」はチョイ役ではなく全編にわたってしゃべりまくる重要な役で、その「とぼけた感じ」が結構はまり役だったと思います。


 さて、わんぷり組はこの映画でも「肉弾戦」をしません。


 その分、ゲストの「ひろがるスカイ!プリキュア」と「魔法つかいプリキュア!」たちがものすごいアクションを見せます(とはいえ、決してどうぶつを傷つけることはせず、きちんと「攻撃しても大丈夫な対象」を殴っていたのが、さすがのわんぷり映画です)。


 このアクションシーンが本当にカッコよくて、この映画の見せ場の一つになっています。個人的にはキュアフェリーチェとキュアマジェスティの「元赤ちゃんコンビ」の絡みが見られて良かったです。


 キュアスカイの登場シーンで映画館の子どもたちが大きな歓声をあげていたのも印象的でした。


●公開と同時に解禁された「悟、大福の変身」


 さらに本映画のサプライズとなったのが、アニメ本編ではしゃべらなかったウサギの「大福」が人間体になったことです(声優が中村悠一さんなのもサプライズでした)。


 そしてプリキュアをサポートする男の子・兎山悟くんとともに2人で「変身」して、わんぷり組を助ける展開も胸アツです。


 ちなみに公式では変身後も2人は「プリキュア」とは呼ばれずに、あくまで「変身した姿」という呼称となっています。(今のところ)変身した彼らはプリキュアという扱いではないようです。


●前半戦は楽しいシーンが連続


 この映画、ゲーム内を舞台にした前半戦は、とにかく「楽しい」シーンが連続します。


 3DCGで描かれたゲームの世界で、二足歩行のこむぎやユキがダンスにゲームに大活躍。タヌキ軍団たちの楽しい絵やギャグシーンも豊富にあります。


 子どもたちが「フレンドリング」を光らせる場面も分かりやすく誘導されており、映画館では子どもたちが元気にリングを光らせていました。


 とにかく子どもたちが楽しく見られる映画となっています(ただ、横浜みなとみらいを舞台にした後半戦は、ほんの少しだけ怖い展開も見られます)。


●「いっしょにおばあちゃんになる」


 さて。


 そんなギャグ満載、ゲームにダンスと楽しい映像がいっぱいで、お子様向けに特化した映画かと思われた「映画わんぷり」ですが、中盤のあるシーンで、この映画で一番「クリティカル」な言葉が、こむぎちゃんより発せられます。


 自分はこのシーンで、虹の橋を渡ってしまったかつての飼い犬のことを思い出し不覚にも泣いてしまいました。


 こむぎ役の声優・長縄まりあさんもインタビュー動画内で「注目してほしいセリフ」に挙げている(ので言及しても大丈夫だと思われますが)、この場面。


 中盤、閉じ込められたバグの世界から脱出するため一人ぼっちになってしまったこむぎは走ります。


 時が止まったバグの世界。


 「ゲームの中なら歳も取らないし、ずっと一緒にいられる」というムジナの甘い言葉。


 しかし、こむぎはそれを拒否します。


 「もっともっといろはのことを好きになりたい」


 「こむぎは一緒におばあちゃんになるんだワン」


 こむぎは「時間が止まった世界」でいろはと過ごすことを否定し、「時間が進む世界」で大好きないろはとたくさんの思い出を作り「いっしょにおばあちゃんになる」道を選ぶのです。


 このシーンは「映画わんぷり」を象徴する場面だと思います。


 「時が止まった世界」という場面を用意し、その対比として「おばあちゃん」という単語を意図的に使うことにより、そこに内包する「時間の経過」「老い」を示唆しました。


 さらに「おばあちゃん」という言葉をペット側にしゃべらせることにより、「寿命が異なる人間とペットの関係性」を提示してみせたのです。


 「ずっと一緒にいたい」というあいまいだった言葉は、「いっしょにおばあちゃんになりたい」というぐっと身近で生々しい言葉に変換され、「人間とペットの寿命差」「いつまで一緒にいられるのか」など、より具体性を帯びたイメージとなりました。


 正直なところ、自分は「わんぷり」ではこういったペットの寿命に関するようなセンシティブな話題は避けるのだろう、と思っていました。


 しかし、この映画ではそこから逃げずにきちんと向き合いました。


 人間とペットは、どうしたって寿命が違うのは当たり前です。


 大人であればその辺りも理解しているのだろうけど、子どもはどこまで理解しているのか分かりません。ずっとずっとペットと一緒にいられるものと思っているのかもしれません。


 だからこそ、いま「もっともっと好きになること」「楽しい思い出をたくさん作ること」「いつも一緒にいること」の大切さが浮き彫りとなるのです。


 自分の家でもかつて犬を飼っていました。その犬は、こむぎと同じ「女の子の捨て犬」でした(隣家が夜逃げして犬だけ残されていたのです)。家で飼うことになり、13年間一緒に暮らしました。一緒にお散歩に行って、一緒のお布団で寝て、楽しい思い出をたくさん作りました。


 最後の方はお散歩にも行けないほど老衰で弱ったその犬に「お前も、もうおばあちゃんだもんなあ……」なんて言ったこと、ぬれた黒い鼻、もう食べることができなくなったササミスティックの箱、壁に掛かったままのリード、お気に入りだったへこんだクッション。


 そんな光景がこむぎの「おばあちゃん」という言葉で一気に引きずり出され、僕はこのシーンで大号泣してしまいました。


 彼女が虹の橋を渡るとき、幸せだったのかなあ? 幸せと感じてくれていたら良いのだけどなあ……。そんなことを思いながら映画の続きを見ていると、キュアフレンディが「あなたの思いは届いているよ」みたいなことを言ってきて、そこで2度目の号泣です。


●犬のこむぎがきちんと主人公


 本映画では、きちんと「犬のこむぎ」が主人公となっています。


 こむぎの行動原理は「いろはのことが大好き」です。自分を助けてくれたいろは。自分を愛してくれるいろは。


 そんないろはのために、犬のこむぎは走ります。「ずっと一緒にいる」ために。そのけなげな行動に心が打たれます。


 「いっしょにおばあちゃんになりたい」というセリフの後に聞く「ずっと一緒にいたい」という言葉はその意味が少し変わって聞こえます。


 「大切なのは言葉じゃなくて気持ち」


 「あなたの思いは通じている」


 「大好きな人と一緒にいたい」


 「わんだふるぷりきゅあ!」で一貫して描かれているこれらの要素が、本映画においてもきちんと描かれているところがすてきなのです。


 「こむぎはずーっといろはと一緒だワン」と無邪気にほほ笑むこむぎ。


 「思いが伝わっていると信じる気持ちが大事」という飼い主のいろは。


 「どうぶつ」を扱う子ども向け映画において、「飼い主といっしょにおばあちゃんになりたい」と願うペットの強い思いを描いたこと。


 それだけでもこの映画は「プリキュア映画」として、そして「子ども向け映画」としても本当に素晴らしいと思うのです。


 「ずっといっしょにいる」とはどういうことなのか。


 果たして、こむぎといろはは「いっしょにおばあちゃんになること」ができるのか。


 この先のアニメ本編の展開も楽しみですね。


 「大切な何か」と一緒に過ごしている人に本当におすすめの映画です。


(C)ABC-A・東映アニメーション


●著者:kasumi プロフィール


プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。



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  • 初日の夕刻に見に行ったけど、高校生が結構いた。男女カップルもいればJK同士もいた。逆に中学生以下はほとんど居なかったな。
    • イイネ!5
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