三菱自動車工業がフラッグシップSUV「アウトランダー」のマイナーチェンジを実施し、2024年10月31日に発売する。改良新型のコンセプトは「威風堂々 第2章」。内外装はどう変わった? クルマとしての性能は? そもそもこのクルマ、売れている? 発売直前の実物を確かめてきた。
プレミアムブランドと競合?
開発を担当した三菱自動車 商品戦略本部の五味淳史チーフプロダクトスペシャリストによると、現行のアウトランダーは力強い外観と上質になった内装、PHEV(プラグインハイブリッド)システムを含めた動力性能が高く評価されているという。
その一方で、もう少し価格帯が上にあるプレミアムブランド(レクサス、メルセデス・ベンツ、BMWあたりか)と比較したユーザーからは「さらなる充実感が欲しい」との要望があったそうだ。今回のマイナーチェンジでは、質感の向上が最重要項目となった。
「コンセプトは現行モデルで掲げた『威風堂々』のフェーズ2(第2章)としました。新たに競合し始めているプレミアムブランドや上位車格のクルマに対しては、質感の向上と機能の追加で対抗しつつ、我々の特徴であるPHEVの性能アップを果たし、歴代最高のアウトランダーへと進化させるという戦略をとりました」(五味さん)
外観はほとんど変更なし?
早速、新型アウトランダーを見てみよう。
まずエクステリアは、「高い評価を得ている外観の大幅な変更は実施しないという考え方でやっている」(担当者)との言葉通り、遠目では新旧の差がわからないくらい微妙な変更だ。
近づくと、スリーダイヤモンドを取り付けた「ダイナミックシールド」(最近の三菱自動車に共通するフロントデザイン)の上部グリルの表面が、従来の細かな穴開きからツルリとしたものに変わっている。前後スキッドプレートは立体的なデザインとなり、色がチタニウムグレーになった。
ターンランプ、バックランプはLED化。リアコンビネーションランプはスモークタイプになった。20インチのホイールデザインは洗練されたイメージにリファイン。ボディカラーでは、トレンドであるソリッド調のグレーをベースに、光の当たり方でブルーのハイライトが映る「ムーンストーングレーメタリック」が新しい。
上質感向上のカギは車内にあり?
上位セグメントの競合車を見据えて上質、洗練、快適さの3つに磨きをかけたというインテリアはどうだろう。
まず、センターディスプレイの画面は従来の9インチから12インチに大型化。大画面化のトレンドに対応した。メーターとセンターディスプレイはグラフィックを一新し、質感を向上させている。
最上級モデルのセミアニリンレザーシートはデザインを変更し、新色の「ブリックブラウン」を採用した。前2席には「シートベンチレーション」を採用。背中に熱がこもるのを防ぐ装備で、ユーザーからの要望が多かったそうだ。細かい点ではルームミラーがデジタルタイプになったり、室内照明がLED化していたり、ペダルがアルミになったりしている。
より快適な室内空間を演出する重要なアイテムである車載オーディオは、メーカーをBOSEからヤマハに変更。「ダイナミックサウンドヤマハプレミアム」は標準装備で、上級モデルには同システムを音質的に凌駕する「ダイナミックサウンドヤマハアルティメット」を搭載する。
ヤマハのオーディオを選択した理由は「企業としての価値観が同じだった」ことと「電機メーカーよりは楽器メーカーにしたかった」ことの2点だという。
クルマとしての性能はどうなった?
PHEVシステムの走行性能では、搭載するリチウムイオンバッテリーの容量を約13%アップの22.7kWhに増やした。EV航続距離は「M」グレードで87kmから106km、その他グレードでは83kmから102km(いずれもWLTCモード)へと約20km向上。ついに100kmオーバーを達成した。システム出力も20%アップしている。
サスペンションの最適化や新開発タイヤの採用により、欧州ブランドに負けない上質で安心感のある走りになったと三菱自動車の開発陣は自信を示す。今回は試乗できなかったので、こちらはまた機会を見てお伝えしたい。
現行アウトランダーは2021年12月の発売以来、予定をオーバーする累計3.5万台が売れたという。その理由は、さまざまなパワートレインがある中で、現状では最も理想的と思われるPHEVシステムを早くから採用したSUVタイプの4WDという商品としてのアドバンテージにあるのだろう。
改良に伴い、価格は526.35万円(M 5人乗り)〜659.45万円(P エグゼクティブパッケージ 5人乗り)/668.58万円(同7人乗り)へとアップした。ちなみに、従来型の価格は499.51万円(Mの5人乗り)〜630.41万円(BLACK EDITION 7人乗り)だった。
走りに関しても非常に印象が良かった現行アウトランダーだけに、より洗練されたという新型に早く乗ってみたくなった。
原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)