探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星「りゅうぐう」の砂粒から、地球で混入したとみられる微生物が見つかったと、英大学インペリアル・カレッジ・ロンドンなどの研究チームが1日までに、国際隕石(いんせき)学会誌に発表した。
オーストラリアでの試料カプセル回収から宇宙航空研究開発機構(JAXA)による初期分析までは外気に触れない環境が維持されていたことなどから、研究チームは微生物が地球外由来ではなく、英国での分析中に混入したと判断した。
研究チームの矢野創JAXA助教は「火星や、木星の衛星などから生命の痕跡を探そうとするサンプルリターン計画が注目されているが、汚染に気を付けて分析しないといけないことが改めて示された」と将来の探査に向けた課題を指摘した。
分析した砂粒は、研究チームがJAXAから受け取った後、2022年7月に窒素を封入した密閉コンテナで英国に移送。同年10月14日、ロンドン自然史博物館の施設でX線CT(コンピューター断層撮影)のために取り出した。
この時のCT画像に微生物は映っていなかったが、11月11日の電子顕微鏡撮影で、筒状や細い糸状の微生物とみられるものが11個見つかった。同月30日の撮影では147個に増えていたが、23年1月には36個に減少。同2月に砂粒の表面を研磨した後は、見つからなくなった。
研究チームは、形状などから「バチルス属」など地球上で一般的な微生物と推定。CT撮影以降に空気中から付着し、砂粒に含まれる有機物を栄養に増殖し、その後利用できる有機物がなくなって減少したと判断した。
英国到着後の作業は、宇宙由来の物質の分析や保管方法として一般的なものだったといい、矢野助教は「本気で生命の痕跡を調べるのであれば、地球の大気に少しでも触れては駄目だということ。生命探査を目指すサンプルリターンの難しさがまた一つ証明された」と話した。