マナリス氏 飽食の時代、寿司・焼肉・カレー・スイーツなど、あらゆるものが好きな時に食べられる日本。そんな状況にあって、徹底的に同じものを食べる人も存在する。大手牛丼チェーン「すき家」に毎日通い続ける男性、マナリス氏(31歳)もその一人。体には悪くないのか? なぜ毎日食べ続けているのか? 本人を直撃した。
◆毎日すき家を始めたきっかけは…
マナリス氏が“毎日すき家生活”をはじめたのが2019年。すでに1800日以上連続で通っている。好きだからなのかと思いきや、きっかけは別にあった。
「僕は以前、あるタイトルで2年連続で全国3位になったりするなど、オンラインゲームの活動に力を入れていました。毎日すき家を始めた2019年は、その活動を辞めて次は何をしようか考えていた時期でした。友人に『Twitter(現X)のフォロワーが8000人もいるなら、メルカリのキャンペーンで何かやってみたら?』と勧められたんです」
◆食べ続けるしかないと思って…
そのキャンペーンは、既存会員が友達を招待して登録に至ると、紹介した側/された側の双方にポイントが入るキャンペーンで、当時は1300円分のポイントがもらえたそうだ。
「Nintendo Switchが欲しかったのですが、それをそのままツイートしても誰も登録してくれないだろうと思って、『もし登録してくれて私にポイントが入ったら、それは全部すき家に使います。その浮いたお金でNintendo Switchを買います』と投稿しました」
すると、初日に20人で2日目には30人が登録する結果に。目的であったNintendo Switchの額はすでに超えたのだが……。
「一度言ってしまったことなので、食べ続けるしかないと思って毎日すき家生活が始まりました。今となっては、ポイントをもらうペースの方が早くなってしまっています」
◆体に変化は起こらないのか?
牛丼チェーンはどちらかといえばジャンクなイメージもあるのだが、実際に毎日食べ始めて太ることはなかったのだろうか。
「1〜3年目は、むしろ逆に痩せました。高校時代は卓球部だったんですが、水谷隼さんの活躍で卓球が注目されていたこともあって、久しぶりに再開していて。だから太らなかったんだと思います。ですが、4年目に差し掛かった時に変化がありました。これはすき家とは無関係に、毎日お酒を飲むようになったんです。体重が10キロくらい増えました。結果的には、『すき家だけ』では太らないということですね(笑)」
また、外食では塩分摂取量が高まる傾向もあるため、健康診断の結果も気になるところ。
「それまでも、B判定が多い診断結果だったんですが、毎日すき家を始めてからも変わらず。なので、健康や体調にも変化はないと思います」
◆「毎日」ゆえにピンチが訪れる
同じ店に毎日通う奇特な人物は、ほかにも存在する。しかし、そのほとんどは「好き」でやっていること。対照的に「やらされる」羽目になったマナリス氏は、すき家に飽きたことはないのだろうか。
「スタートして20日目くらいに、飽きの大きな波が来ました。すき家の白米が食べられなくなったんです。他のお店の白米は美味しく食べられるんですが、なぜかすき家だけ受け付けなくなって。紅生姜を大量に乗せてごまかしながら食べて乗り越えました」
そんなピンチを乗り越えて毎日食べ続けているが、その道程で、物理的な理由で記録が途切れるピンチもあった。
「僕がコロナになった時ですね。無症状だったおかげで体調的には食べられるので、デリバリサービスにお世話になりました。でも、外出禁止期間のうち2日間、雪で配達員さんが全然出ていない時があったんですよ。Uberとmenuと出前館のアプリと10時間くらいにらめっこして、ようやく来てもらえました」
さらに、まさにアクシデントと言うべきピンチに、つい最近見舞われたのだという。
「タクシーに乗っていたらそこにバスが突っ込んで来たんですよ。怪我はなかったんですが、普通に交通事故です。22時くらいだったので、『これから警察が来て事情聴取されたら日付変わってしまう! やばい! すき家が食べられない!』と思いました。でも、大丈夫そうだったので、タクシー会社の電話番号だけ控えさせてもらって、そこからすき家に向かってなんとか間に合いました(笑)」
◆「すき家のおすすめ」は牛丼ではなかった
これだけ長きにわたってすき家を食べ続けているマナリス氏に、“専門家”としてオススメのメニューを聞いてみた。
「牛丼ばかりだと流石に飽きるので、いろいろなメニューを食べるんですが、『まぐろたたき丼』が最高なことに気がつきました。すき家の看板には『牛丼・カレー』と書かれていますが、僕は『まぐろたたき丼屋』だと思っています(笑)。フリスビーみたいな形に成形されたまぐろたたきが乗ってくるんですが、臭みもなくて本当に美味しいです。過去に、サーモン丼などもあったんですが、これも美味しくて、すき家って意外にも海鮮が美味しいんです」
すき家といえば、牛丼チェーンの中でもトッピングのバリエーションの多さが際立っている。
「SNSを見ていると賛否あるみたいなんですが、個人的に好きなトッピングは『塩レモン』です。塩レモンで肉を食べる機会って、焼肉屋さんくらいでしかありませんし、暑い時期はあのさっぱり感が良かったですね。でも、一番好きなのは一周回って定番の『キムチ』です。僕、辛いものがダメなんですが、すき家のキムチは辛さを感じず甘いんです。それが、お肉にも合うしご飯も進みます!」
ポイントは増え続ける一方なので、毎日すき家生活はまだまだ続きそうだというマナリス氏。2000日という大台を達成する日も、すぐそこまできている。
<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。