イメージ通りにできた? 正月のしめ飾り作りに記者が挑戦 思っていたより力仕事…その出来栄えは?

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2024年12月09日 17:20  まいどなニュース

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山川さん(中央)のアドバイスを受けながらしめ縄作りを体験する記者2人

 年の瀬が迫ってきた。年末年始の話題を探す中、気になったのが正月のお飾りだ。ホームセンターやスーパーの迎春コーナーで大小さまざまなお飾りを見かけるようになったが、自分では作れないだろうか。取材を進めると―。細かい作業は苦手と自負する山陽新聞の記者(23)が、初めてしめ飾り作りに挑戦した一部始終を紹介する。

【写真】しめ縄の作り方

 手がちぎれそう。軽いはずの稲わらが徐々に重くなっていく。額にはじわりと汗。思っていたより力仕事なんだ―。

 両手にそれぞれ手にした十数本ほどのわらの束をねじりながら交差させていく。単純な作業だが、少し気を抜くとねじったはずのわらが元に戻ってしまう。一緒に体験した同期の記者(28)に手伝ってもらいながら一心不乱に作業を進めた。

しめ縄作りが基本

 記者が訪れたのは岡山市北区富田町のアトリエ「ユイスペース」。2018年からしめ縄アーティストとして国内外で活躍する傍ら、岡山県神社庁などが開くお飾り作り教室の講師も務める山川有美子さん(55)に手ほどきを受けた。

 「お正月にしめ縄を飾るのは昔ながらの日本の伝統。大切にしたいですね」と山川さん。「ぜひ覚えておいて次世代に引き継いで」

 大きな役目を仰せつかり、神妙な気持ちで作業に取りかかった。

 まずは基本のしめ縄作りから。用意してもらった40本ほどの稲わらを3束に分け、うち2束を編んでいく。同期の記者にわらの根元を固定してもらい、交差させた部分も押さえてもらうと編みやすく、だんだんしめ縄らしくなってきた。作業が進むと互いに力が入り、綱引きをしているような姿になり、山川さんも苦笑い。「力を入れすぎず気楽にやりましょう」

 2束が縄状になった後は残る1束をねじりながら編み目に沿って巻き込んでいく工程へ。

 「しっかりねじって隙間にぴったりはめて」。編み目に沿っているつもりが途中からずれてきたり、でこぼこした部分ができたり。きれいに仕上げる難しさを知った。

縁起物を飾り付け

 同期と二人で1時間ほどかけて二つのしめ縄を完成させた。「なかなかうまくできた」と、やりきった余韻に浸る間もなく、しめ縄を正月飾りに変身させる作業に取りかかる。

 今回作ったのは玄関用の「輪飾り」。家庭円満や子孫繁栄の意味があるという円形に縄を整え、吉事を願って紅白の水引、五穀豊穣(ほうじょう)の祈りを込めて稲穂をそれぞれ飾りつける。この過程も制作者のセンスが問われることになる。

 「松葉などを付けてもいい。地域によってさまざまな形、飾り付けが伝わる」といい、それを調べてみるのも面白そうだ。

 ここでも山川さんに手伝ってもらい、やっと完成。

 「よし、イメージ通りだ。案外手際がいいかも」と満足していたが、山川さんに同じ作業をやって見せてもらうと、記者の3分の1ほどの時間で出来上がり、完成度も段違い。何と美しい仕上がり。イタリアの展覧会で賞を取るなど、海外でも高い評価を受けるプロの技に圧倒された。

 改めて完成した直径20センチほどの輪飾りを眺める。わらの香りがほのかに鼻をくすぐる。さあ、どこに飾ろうか―。自分で作ったお飾りと一緒に迎える新しい年が待ち遠しい。

しめ飾りなぜ飾る

 しめ飾りは、年神様を迎える準備が整ったことを示し、不浄なものを家に入れないよう玄関に飾るとされる。県神社庁によると、飾り付けは12月25〜28日か30日。29日は「二重苦」を連想させて縁起が悪いとされ、31日は「一夜飾り」になって神様に失礼になるため、避けた方がいい。外すのは松の内が明ける1月7日や、とんど焼きを行う15日が一般的だという。

 山川さんによると、しめ縄は「左ない」と呼ばれる編み方が基本で、農作業などで使う縄とは左右反対に編み込んでいく。神様にささげる縄であるため、日常的に使う縄と区別するという意味があるそうだ。(鈴木総一郎)

不格好でも達成感はひとしお

 同期の鈴木記者がしめ縄作りを体験すると聞き、同行させてもらった。わらに触ったことさえなく、手先も不器用だが、なぜか「やってみたい」と興味を持った。

 まずは山川さんに縄をなう手本を見せてもらう。作業そのものは単純で、一見簡単そう。「これならできるかも」

 いざ挑戦―。わらは素手で触ると手が切れそう。子どもの頃、草の葉っぱで手を切った記憶がよみがえり、何だか怖い。それでも勇気を振り絞り、わらに挑む(大げさ)。束をねじる場面では、たびたび向きを間違え、力が入りすぎたり抜けすぎたり。本来なら1人でこなせるはずだが、鈴木記者と2人で助け合ってなっていく。

 いつまでねじればいいのだろう。腕の筋肉がパンパンに張ってくる。握力が限界に達した頃、「もうその辺りまででいいですよ」と山川さんの声。やっと完成、と思ったらまだあった。もう1束を巻き付けて終わる頃には腕だけでなく全身が痛い。完成したしめ縄を輪にして飾りを付けると、立派なしめ飾りに仕上がった。

 山川さんや鈴木記者と比べると、ちょっぴり形は不格好。それでも自分の手で作り上げた達成感はひとしおだ。何となく“パワー”も感じる。玄関に飾って新たな年を迎えたい。

 市販のお飾りは手軽でいいが、機会があればまた手作りに挑戦してみたい。若者の一人として、伝統文化を後世に伝えるためにも。(古川竜聖)

海外でも高い評価―しめ縄アーティスト・山川有美子さん

 2016年からしめ縄作りを始め、18年から「しめ縄アーティスト」として活動をスタートさせた。しめ縄作りの技術を応用し、稲わらだけでなく畳縁(べり)やデニムを使って竜やエビなど縁起物のオブジェを制作する。岡山市内で個展を開くほか、英国やイタリアの展覧会で賞を受けるなど海外でも高く評価される。「しめ縄の伝統と畳縁やデニムといった岡山の特産品の素晴らしさを伝えたい」と話し、自宅兼アトリエで精力的に創作活動を続けている。

(まいどなニュース/山陽新聞)

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