『おむすび』第54回 物語の外から差し込まれる「ギャル要素」が、そろそろ邪魔になってきた

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2024年12月12日 17:01  日刊サイゾー

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 週刊文春によると俳優の小手伸也さんは2017年1月に、SNSを通じて知り合ったファンの女性を食事に誘い、「彼女も奥さんもいない」と語った上で複数回にわたり関係を持ったのだそうです。小手さんも19年、報道に際して不倫を認め、謝罪しています。

 その小手さんが演じる専門学生・モリモリが不倫しているのでは? というシーンがありましたNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』。どうせ「実は不倫じゃありませんでした〜ゲラゲラ」とやりたいのでしょうけど、なかなかパンチの効いた配役ですね。

 今日も機嫌はよくないよ。振り返りましょう。

■ズルいって何なん?

 あんまりちゃんと勉強していなかった米田結(橋本環奈)、なかなか就職が決まりません。そんな折、プロ野球・巨人からドラフト指名を受けた星河電器のエース澤田(関口メンディー)が後輩の翔也(佐野勇斗)と結を呼び出し、社員食堂の栄養士になってくれ、と打診してきました。

 その理由は、かつて結が翔也に渡した献立が実に優秀だったこと、加えて星河という会社に金がないので給料の安い新人栄養士しか雇えないということでした。

 結たち一家が神戸に戻ってきたのは震災から12年後の07年。その翌年ですから、澤田は08年のドラフトにかかったことになります。06年までは社会人選手には、いわゆる逆指名制度がありましたから、ドラ1候補だったら所属企業にも球団からの裏金がじゃぶじゃぶ入っていたでしょう。運が悪かったね星河。あと2年早ければ。というか、「星河が貧乏」→「逆指名制度があると都合が悪い」→「時代設定は07年にしよう」と計算してやっていたなら大したもんですが、何しろ福岡県西方沖地震を「あえて描かなかった」という『おむすび』ですので、そんな周到な準備があったとは思えません。

 本題に戻しましょう。

 結はこの打診を「ズルい気がする」と言います。彼氏のコネで入社するなんて、ズルい。

 本当にズルいのは入社云々ではなく、結は自力ではアスリート向けの献立を作ることはできず、翔也に渡していた献立はほとんどサッチン(山本舞香)が考えたやつだったんだよな。これも、サッチンと結が協力して献立を考えて、出来上がるころには結がイニシアティブをとっていたという描写が過去に少しでもあれば成立するシーンなんですが、それがないから、「打診が来た」という展開自体に無理が生じています。

 とはいえ、別に星河に入ったっていいと思うし躊躇している意味がよくわからなかったところ、このドラマは「ギャル魂によって」と銘打ってしまっているのでした。このまま結がオファーを受け入れてしまうと、ギャルと関係なくなってしまう。ここでハギャレンを呼び出し、ギャルに説得させる必要があったんですね。突然、なんの連絡もなくやってきた4人衆とカラオケボックスで体よく会話をさせ、なんとなく結を納得させるのでした。

「甘えてよくね? それってムスビンが信用されてる証拠やし」

 そう言ったのはルーリー(みりちゃむ)でした。

 本当なら、これを言うべき人はほかにいるんです。好きな人が床屋をやれば床屋をやるし、農業をやれば農業をやるという人生を送ってきた女性、結ママ(麻生久美子)が言うなら必然性がある。ギャルに言わせる意味がない。

 いよいよギャル要素がお話を進める上で邪魔になってきたな、と感じます。ギャルじゃなきゃ言えないことは、何も言ってない。ただ物語の進行に必要なセリフのいくつかを、派手な服を着せた役者にしゃべらせているだけです。しかも、こんな都合のいいタイミングで唐突に現れていることにも納得できない。

 と思ったら、ママが呼んでたんだって。おまえギャルたちに交通費と休業補償払ったんだろうな。東京や熊本や福岡の人に連絡して「娘のために神戸来て」なんてお願いしといて、自腹はありえないからな。ありえないよねえ。日帰りでもないだろうし4人分合わせたら20万くらいになりそうだけど。

■甘えって何なん?

 でもたぶん自腹なんでしょうから、ママはものすごくハギャレンに甘えています。

 甘えてるとか、ズルいとか、そういうことで悩む主人公を描く回に相応しくない展開です。これもギャルを呼ばなければいけないという物語の外にある力が作用していて、気持ちが悪い。

 そしてそもそも、結という人の専門学校時代は、他人に甘えてばかりの日常でした。最初の調理実習の献立はサッチンとカスミン(平祐奈)に作らせていたし、翔也の献立もそう、炊き出しの前に味が濃かったり薄かったりする理由を結に教えたのも班の3人で、結は何も考えていなかった。

 そうして甘え切って生きてきた人が「甘えとる気がする」と思い悩み、他人に甘えることに自責の念を感じるのだとしたら、結という人はこれまで完全に無自覚で、みんなに甘えていたということになります。あれだけ甘えておいて、甘えたと思ってすらいなかったんだ。それが今回、一番怖かったところです。

 あと、事実上の婚約をしているわけだから、星河には「来年、翔也がプロ行ったら会社やめて結婚します」と言っといたほうがいいと思いました。採用も社員教育もタダじゃないもんね。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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