【24年秋ドラマ】『ライオンの隠れ家』第10話 「障害者を持った家族」にとっての穏やかな着地、その先が描かれる

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2024年12月14日 13:02  日刊サイゾー

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 おっ……と、すごい展開を持ってきたな最後に。そういう感じでした『ライオンの隠れ家』(TBS系)最終回前の第10話。

 過剰に雄弁なドラマだなと思ってたんです。もうラス前なんで正直に言っちゃいますけど、こっちはヒロト(柳楽優弥)とASD青年・みっくん(坂東龍汰)の穏やかな日常にライオン(佐藤大空)という異分子が入り込み、引っかき回しながら徐々にみんなが少しずつ前に進んでいく、そういうものが見られれば満足だったわけです。とにかくみっくんはじめ3人の芝居がすごいし、食堂のおやじのでんでんもいいし、茨城の海沿いのロケーションもいいし、全然、そういう小さな世界でささやかに完結するドラマでよかったのに。

 山梨における地場ゼネコンと政治家のリニア利権がからんだサスペンスパートとか、謎の白い男・X(岡山天音)とか、ちょっとノイズになってるぞと思ってたの。そういうカラーを出してくると、でんでんが映るたびに「ボディを透明にされちゃうぞ」(@『冷たい熱帯魚』)という邪念が頭をもたげてくるというか、取っ散らかってた印象があった。

 ハナから、ささやかに完結するつもりなんかなかったんだな。振り返りましょう。

■万事解決した最終回、あれ?

 離婚をほのめかして妻の愛生(尾野真千子)とライオンこと愁人を呼び戻した橘祥吾(向井理)。愛生をボコにした上で物置に監禁し、愁人を乗せてクルマを走らせていました。

 行き先は、祥吾が幼少期を過ごした児童養護施設。すでに閉鎖されており、橘家の養子だった祥吾はいよいよ行き場をなくしてしまいました。

 愁人と2人、湖を見下ろす高台でボンヤリしていると、駆け付けたヒロトに愁人を奪われてしまいます。

 ヒロトがジャストなタイミングでこの場所を訪れることができたのは、みっくんが自立への第一歩としてグループホームのお泊り会に自ら参加したからでした。これまでの人生、ほとんどの時間をみっくんのお世話をすることに費やしてきたヒロト、それはみっくんを守っていたようで、実は気が付かないうちに縛っていたのかもしれない。愛情を勘違いしていたのかもしれない。そんなヒロトの告白に、祥吾も言葉を失ってしまいます。

 ヒロトに抱かれて去っていく愁人を見送る祥吾。家族を得て、その家族を守るために手を汚してきた男は、妻への暴行容疑で警察に連行されていきました。

 一方、グループホームではみっくんと、同じような症状を持つ小野寺さんが「自立」について話しています。「ここでは暮らさない、お兄ちゃんと暮らす」と言い張るみっくんに、小野寺さんは「弟がいます。弟は東京へ行きました。僕のことはめんどくさいです。僕には会いません」と、みっくんに語りかけます。

「今日は、いつかひとりになるときの練習です」

 ヒロトがみっくんを守る以外の生活を想像していなかったように、みっくんもまたヒロトと離れて暮らすことなど考えたこともありませんでした。

 愁人が「ライオンの隠れ家」に戻り、また3人の生活が始まりました。そこには、ライオンママの愛生も加わっています。事件を経て、少しずつみんなが変化しながら、また穏やかな日常が始まりました。血のつながっていない姉と、その息子。それにヒロトとみっくん。4人は確かに家族でした。プライド(群れ)は賑やかになり、ヒロトの負担も軽くなりました。

 時間を持て余すようになったヒロト、休職中の職場の同僚と飲みに行ってもみっくんのことが気になりますが、みっくんはヒロトのメッセージなんかどこ吹く風で、ライオンたちと楽しく過ごしているようです。

 ようやく、ヒロトにも自分の人生が始まる。仕事に戻ればいいし、余暇を自由に過ごせばいい。みっくんとの関係性も、少しずつゆっくりと変わっていくのかもしれないね。それは家族としての成熟だし、きっと今より豊かなものになるよ。

 と、全部いろいろちゃんと収まるところに収まって、いいドラマだったなと感慨にふけりながら見ていたんですが、それにしちゃ、あと1話あるんですよね。もうやることないだろと思ってたら、最後にヒロトがいなくなっちゃった。

 その先も見せるんだ、過剰に雄弁だな、まったく。

■「障害者と家族」の問題に回帰する

 物語の余韻として残したっていい場所に、このドラマは最終回で踏み込んでいくようです。障害者を家族に持ち、その面倒を見ることに人生を費やしてきた人間が、自由を手に入れるとはどういうことなのか。にわかにそれを考えなくてよくなったとき、何をしようとするのか。

 そのことを描くために、天涯孤独ゆえに闇に落ちた祥吾という男と対峙させる必要があったということなのでしょう。

 最終回でヒロトが何を語るのか、まったく想像できません。しかし、そこにひとつの「回答」があることだけは明らかです。そして、その回答を導くために、あのまどろっこしいサスペンスがあったことだけは間違いありません。

 良くも悪くも、このドラマはカラーに統一感がありません。ホームコメディとハードサスペンスを並行で語ってきたために、どこまでも不穏な空気が漂っている。

 そのことが「最終回、どうなるかわからん!」という期待感に寄与してくるわけですから、ドラマというのは不思議なものですね。楽しみに待ちましょう。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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