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筑波大学と琉球大学に所属する研究者らが発表した論文「人文系論文における係助詞『は』直後の読点使用の傾向と指導指針」は、「は」直後の読点の打ち方を調査した研究報告である。
日本語教育において、句読点の指導は教員の主観的な判断に委ねられることが多く、その妥当性を示す根拠に乏しい状況が続いてきた。この課題に対し、人文系学会誌に掲載された60本の論文を対象に、係助詞「は」の直後における読点の使用要因を分析し、どのように指導すべきかを考察している。
分析では、1文中の読点数、文の長さ、「は」直後の文字種、段落内の位置、執筆者という5つの要因を変数として設定し、一般化線形モデルによる検討を実施した。
その結果、「は」直後に読点が打たれる確率は4割弱(36.7%)であり、基本的には読点を必要としないことが明らかとなった。ただし、1文中の読点数が2個程度で、文の長さが70字程度あり、かつ形式段落の冒頭文(1文目)で「は」が使用される場合には、読点が打たれる傾向が強いことを示した。
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興味深いことに、1文中の読点数が多いほど「は」直後の読点は抑制される一方、文が長くなるほど読点が必要とされる傾向を確認した。これは文の長さに応じて係り受けの関係を明確にする必要性が増すためと解釈できる。
また、段落冒頭での読点使用割合が段落内部や末尾よりも高い理由としては、冒頭の主語が文末を超えて後続文にまで影響を及ぼす可能性が考えられる。さらに、執筆者による個人差の存在も確認できた。
これらの分析結果を踏まえ、アカデミックライティングにおける「は」直後の読点の打ち方指導では、まず「は」直後には約7割の確率で読点を打つ必要がないことを前提として教えることが重要である。
そのうえで、1文中の読点数が2個程度である場合、1文が70字程度の長さがある場合、形式段落の冒頭で「は」が使用されている場合という3つの条件がそろうときに読点を打つよう指導することで、母語話者の読点の打ち方に近づけることができると考えられる。
Source and Image Credits: 岩崎 拓也, 井伊 菜穂子, 人文系論文における係助詞「は」直後の読点使用の傾向と指導指針, 専門日本語教育研究, 2024, 26 巻, p. 27-3, 公開日 2025/01/28, Online ISSN 2185-7881, Print ISSN 1345-1995, https://doi.org/10.11448/jtje.26.27
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※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2
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