“オールIntel”なPCはいかが? ドライバが成熟した「Arc A750」は、AAAタイトルをWQHDで快適にプレイできて2万円台も狙える高コスパGPU

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2025年02月12日 15:21  ITmedia PC USER

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特価で2万円を切るIntel Arc A750の実力やいかに……?

 ゲーミングPCに搭載するグラフィックスカード(GPU)と言えば、これまではNVIDIA GeForce RTXシリーズとAMD Radeonシリーズの二大巨頭だったが、2022年6月にIntelからゲーマーやクリエイター向けのGPU「Intel Arc A Graphics」シリーズが登場した。


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 CPU内蔵グラフィックスで培った技術も同社にはあるはず──ということで、ある程度は性能に期待していたのだが、発売当初はドライバの出来がイマイチで、ゲームタイトルによってパフォーマンスにバラツキがあった。


 現在は発売から2年半の月日が経過し、ドライバの完成度もだいぶ高まり、WQHD程度のゲームであれば、AAAタイトルでも快適にプレイできるようになっているようだ。


 筆者は最近、メインPCのマザーボードを交換した関係でCPUとメモリ、マザーボードが余っていたこと、たまたまセール価格でIntel Arc A750が1万9800円で購入できたということもあり、“オールIntel”なゲーミングPCを組む機会があった。


 ドライバがある程度成熟した今、Intel Arc A750はどの程度のパフォーマンスを発揮するのか、筆者としても非常に気になるので、ベンチマークテストを通して実力をチェックしてみた。


●レファレンスモデルは見た目が格好良い


 今回購入したモデルは「Intel Arc A750 Limited Edition」で、サードパーティーのベンダーではなく、Intel自身が製造した標準モデル(レファレンスモデル)だ。


 デュアルファンを搭載したミドルレンジに位置付けられ、表側は黒一色の非常にシンプルなデザインに落ち着いている。


 背面には、モデル名のARC A750 Limited Editionと記されたバックプレートで覆われており、非常に格好良い。レファレンスモデルということもあって、なんだか特別な気持ちを感じさせ、所有欲を満たしてくれる。


 PCI Expressの補助電源はミドルレンジモデルということもあってか、8ピン+6ピン構成になっている。TDPは225Wで、対抗モデルである「GeForce RTX 3060」の170Wと比べると消費電力が高い。発売当初に人気がいまひとつだった理由としてよく挙げられるものだ。


 ただ、2025年1月時点での実売価格が約3.2万円で、セール価格では2万円を切ることを考えると、今となってはTDPの高さはそこまで気にならないのではないだろうか。


 映像出力ポートはDisplayPortが3基、HDMIポートが1基という標準的な構成で、DisplayPortは最大8K/60Hz、HDMIポートは最大4K/60Hzの出力をサポートしている。今回は、DisplayPortでWQHD(2560×1440ピクセル/リフレッシュレート165Hz)のゲーミングディスプレイに接続した。


 今回組んだゲーミングPCは、筆者の友人の間で流行っているオープンフレームを採用した。オープンフレームであればメンテナンス性も高く、熱対策にもそこまで気を回さなくても良くなるので、筆者個人としても気に入っているスタイルだ。


●CPUは旧世代だが、PCパーツ代約12万円で組めるゲーミングPCの実力はいかに……?


 Intel Arc A750の外観チェックはこれくらいにして、ここからはベンチマークテストを実行してIntel Arc A750の実力に迫っていこう。


 なお、今回ベンチマークテストを行うゲーミングPCの構成は以下の通りだ。


テストPCの構成


・CPU:Intel Core i5-12400F


・CPUクーラー:SCYTHE 虎徹 MARK3


・マザーボード:ASUS TUF GAMING H770-PRO Wi-Fi


・メモリ:Corsair CMK64GX5M2B5600C40


・グラフィックスカード:Intel Arc A750 Limited Edition


・SSD:WD 1TB Black SN750


・電源ユニット:玄人志向 KRPW-GK650W/90+


 CPUは第12世代と、3世代前のCPUではあるが、WQHDで165Hzのゲーミングディスプレイを使うのであれば十分だと考えて流用した。


 Intel Arc A750を特価の1万9800円で購入した場合、ケースを除くパーツ代の合計が約12万円で組める。スコア次第では、お財布に優しい第三の選択肢になりそうだ。


 「CPUとGPUをオールIntelで構成したゲーミングPCはどの程度パフォーマンスを発揮できるのだろうか」とワクワクしながら組み上げたので、早速ベンチマークテストを実行して実力をチェックしてみた。


●3DMark


 まずは3Dグラフィックス性能を測れる「3DMark」の結果を確認していこう。ベンチマークスコア比較の参考値として、筆者のメインマシンのベンチマークテスト結果もあわせて記載しているので参考にしてほしい。結果は以下の通りだ。


ベンチマークテスト比較用PCの構成


・CPU:Intel Core i7-13700KF


・CPUクーラー:玄人志向 KURO-AIOWC240


・マザーボード:ASRock Z690 Extreme WiFi 6E


・メモリ:Crucial CT32G4DFD832A.M16FF


・グラフィックスカード:Sapphire RX 7700 XT


・SSD:SOLIDIGM P44 Pro 2TB


・電源ユニット:Seasonic FOCUS GX-850 ATX 3.0 SSR-850FX3


Time Spy(DirectX 12ベース/WQHD描画)


・Intel Arc A750:1万1747ポイント


・AMD Radeon RX 7700 XT:1万5835ポイント


Time Spy Extreme(DirectX 12ベース/4K描画)


・Intel Arc A750:5599ポイント


・AMD Radeon RX 7700 XT:7507ポイント


Fire Strike(DirectX 11ベース/フルHD描画)


・Intel Arc A750:2万1544ポイント


・AMD Radeon RX 7700 XT:2万7425ポイント


Fire Strike Extreme(DirectX 11ベース/WQHD描画)


・Intel Arc A750:1万3ポイント


・AMD Radeon RX 7700 XT:1万7910ポイント


Fire Strike Ultra(DirectX 11ベース/4K描画)


・Intel Arc A750:5236ポイント


・AMD Radeon RX 7700 XT:9817ポイント


Steel Nomad(DirectX 12 feature level 12.0ベース/4K描画)


・Intel Arc A750:2634ポイント


・AMD Radeon RX 7700 XT:3207ポイント


Speed Way(DirectX 12 Ultraベース/4K描画)


・Intel Arc A750:2336ポイント


・AMD Radeon RX 7700 XT:3066ポイント


 まずはDirectX 12ベースのベンチマークテスト、Time SpyとSteel Nomadのテスト結果から見てみよう。


 比較対象のAMD Radeon RX 7700 XTは、Intel Arc A750の対抗モデルの一つ上のモデルとなるため、結果に大きな差が生まれるのではないかと考えていた。しかし、結果としてはTime Spyは約74.4%、Steel Nomadは約82.1%と、想像していたより奮闘している結果となった。


 DirectX 12に最適化されたゲームも最近ではどんどん増えてきているため、これから新しいゲームをプレイする方にとっては、思わぬ収穫となる。


 続いて、DirectX 11ベースのFire Strikeのスコアを見てみると、フルHD描画までであれば、Radeon RX 7700 XT比で約78.6%となった。DirectX 12ベースのテストとほぼ同じパフォーマンスを発揮できていたが、WQHD描画以上になるとガクッと値が落ち込み、Radeon RX 7700 XT比で約54.6%と結果が奮わなかった。


 発売当初は「DirectX 9やDirect X11への最適化が不十分だった」という話もあった。ドライバのアップデートがあったからとはいえ、まだ少し見劣りしているのが正直なところだ。


 例えば、VALORANTはDirectX 11ベースで動作していることもあるため、もう少し最適化が進むことを期待したい。


 最後にDirectX12 UltraベースのSpeed Wayの結果を見てみよう。Speed Wayは、DirectX Raytracing Tier 1.1を使用してレイトレーシングの性能をベンチマークできるため、「Intel Arcのレイトレーシングには少し弱い」という話が本当なのか実際に手元でテストしてみた。


 結果としては、Radeon RX 7700 XT比で約76.2%のパフォーマンスが発揮されており、イメージしていたよりはレイトレーシングを有効化したゲームもそれなりに快適にプレイできるのではと感じられる結果となった。


 この結果を基に、実際のゲームのベンチマークテストでIntel Arc A750のパフォーマンスを深掘りしていこう。


●Cyberpunk 2077


 今回はAAAタイトルかつレイトレーシングを使ったベンチマークテストもできる「Cyberpunk 2077」のベンチマークテストを実行し、AAAタイトルがどの程度快適にプレイできるのか確認してみた。プリセットごとの結果は以下の通りだ。


 なお、どちらの環境もWQHDでベンチマークテストを実行している。


ウルトラ


・Intel Arc A750:68.59FPS


・AMD Radeon RX 7700 XT:90.73FPS


レイトレーシング:低


・Intel Arc A750:69.42FPS


・AMD Radeon RX 7700 XT:89.52FPS


レイトレーシング:中


・Intel Arc A750:47.5FPS


・AMD Radeon RX 7700 XT:58.07FPS


レイトレーシング:ウルトラ


・Intel Arc A750:39.16FPS


・AMD Radeon RX 7700 XT:50.03


レイトレーシング:オーバードライブ


・Intel Arc A750:10.76FPS


・AMD Radeon RX 7700 XT:24.04FPS


 こうして結果を見てみると、レイトレーシング:オーバードライブ以外のプリセットについては、AMD Radeon RX 7700 XT比で平均約78.3%のフレームレートでプレイできており、Intel Arcはレイトレーシングに弱いというイメージが若干崩れた。


 Cyberpunk 2077はVALORANTやApex Legendsのような競技性の高いゲームと違い、30FPS以上で動作していれば快適にプレイできるようになっている。それを踏まえると、WQHDでレイトレーシング:ウルトラプリセットに設定しても、Intel Arc A750を搭載したテストPCであれば、快適にプレイできそうだ。


●意外とすごいぞ、Intel Arc A750


 つくづく発売当初のイメージの悪さがA750をはじめとしたIntel Arcシリーズの足を引っ張っているなと感じさせる。


 Intel Arc A750でも、AAAタイトルゲームをWQHDで快適にプレイできるのであれば、セール価格で2万円を切るIntel Arc A750はお財布に優しい優秀なゲーム用GPUといえるのではないだろうか。


 購入当初は周囲の友人から、「オールIntelでゲーミングPCを組んでみてほしい」と言われ、半ば人柱を覚悟して組み上げてみたのだが、結果としては優秀なゲーミングPCとして活躍してくれそうでひと安心した。


 もしゲーミングPCをこれから組もうとしている方は、NVIDIA GeForce RTXシリーズやAMD Radeonシリーズにこだわるのではなく、Intel Arcシリーズも検討の候補に加えてみてはいかがだろうか。



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