転職や就職、面接で失敗しない「“アンダー1万5000円”の高コスパなフォーマル&ビジネス用革靴」3選

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2025年02月12日 16:21  日刊SPA!

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ケンフォード「プレーントゥ」。1万4300円。写真は公式HPより
こんにちは、シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
転職が活発になる時期です。また就職活動が始まるのでそろそろ準備をしたいという大学生もいるでしょう。その際の靴の選び方で、つまさきはストレートチップに限るとか、プレーントウは失礼といった謎のルールを用いだす人がいます。大ウソです。誰が書いたかわからないネット記事は信用しないようにしましょう。

もちろんローファーは紐靴ではないので、おすすめしません。しかし黒できちんと光っている紐つきの靴であれば問題なし。たとえ高価なブランド靴であっても、薄汚れていて、カカトが削れているほうがよほど悪印象です。修理屋で30分もあればヒールを直して磨いてくれるので、どんどん利用しましょう。問題は、磨けて直せる素材かどうかということです。

今回は転職や就職はもちろん、冠婚葬祭にも強い、1万5000円以下で買えるコスパ抜群の靴を3足ピックアップします。

◆進化するケンフォード。昔の「重い・硬い」から快適シューズへ

まずはおなじみ、リーガルから「ケンフォード・プレーントウ」。 過去にお世話になった方も多いでしょう。リーガルの廉価版としての位置づけですが、定価は1万4300円。ひと昔前のケンフォードといえば、重くて硬くて痛いという印象でした。本当に重かった。学生ローファーのような合成ゴムで、減るのも意外に早かった。

しかし、現在は底がEVAという発泡スポンジに変わり、劇的に軽くなりました。あまりにも柔らかすぎる底の靴はかえって疲れるものですが、ほどよい硬さで疲れることはまずありません。カカトが削れても、リペアは簡単です。アッパーはガラスと呼ばれる樹脂加工が施された牛革ですが、よほどの大雨でもないかぎり、水にも汚れにも強い。こちらもひと昔前とちがい、履きならす必要がないほどソフト。もちろん磨けば光ります。

安さの理由は、セメント式という簡易的な製法で、本体と底は縫われていません。生産もアジア製です。現代では接着剤も進化しているので、EVAの底だとまずはがれることはないでしょう。かなりボリュームのある木型なので、体重があって締め付け感が苦手な方でも大丈夫です。

◆軽さ・耐久性・防滑性の完璧なバランス。ホーキンス「防水・防滑 ストレートチップ」

定価は1万4300円。ABCマートに行けば必ず売っている、とにかく息の長いシリーズです。名前の通り、滑りません。底のラバー部分に亜鉛を針状に結晶化させた特殊素材が配合されています。素材そのものに練りこまれているので、表面が減ったところでグリップ力が変わらないところがいぶし銀です。

このモデルも磨けば光る天然革に、発泡スポンジ底。正直、嗜好品でもない限り、今の時代に「重い靴」のメリットはなにもありません。軽いほうがいいに決まっています。ただ、軽さを狙うあまりに底の滑り止めを省いてしまうメーカーも多いので注意が必要です。このシリーズは滑らないだけではなく、本体が本格防水仕様で、台風でもない限りはとにかく悪天候に強い。筆者は20年以上前からこのシリーズを観察していますが、まちがいなく現行モデルが最高峰でしょう。ABCマートの革靴コーナーでは2足目半額セールもやっているので、対象であればストレートチップとプレーントウをそろえるのが賢いです。

◆幅が狭い華奢な足でもOK。アシックス「テクシーリュクス TU-7031」

定価は1万2100円。機能系ビジネスシューズはなぜか「幅広」が多い。日本人特有の誤った幅広信仰、勘違いは根強いものです。と思っていたら、アシックスがやってくれました。このモデルはやや細い「2E」仕様。甲もかなり低く、華奢な足なのに歩き回る方には救世主です。天然革・スポンジ底・ハイテク素材インソール。直せるし、磨けるし、隠しゴムもついていて脱着も簡単。どこまでも現場主義です、アシックス。

安い、軽いからといって壊れやすいという話は聞いたことがありません。売れてるだけでなく、どんどんマイナーチェンジしています。白眉は「裏ハトメ」。紐が通る穴は、ほとんどの場合革に穴をバスン!と開けるわけなので、紐の圧によっては革といえどもちぎれます。それを防止するのがハトメ。コンバースのように丸いリングがついている靴を見たことはありませんか? あれはファッションではなく、本体が裂けるのを防ぐための必需品です。

しかし表にハトメをつけてしまうとコンバースになってしまう。そこで表からは見えないように、裏からハトメをつけたものが「裏ハトメ」です。本体の中から手で触るとわかりますが、鉄のパーツで補強されています。私が20年ほど前に靴の設計をしていた時代、裏ハトメを使っていたのはリーガルの高級ラインなど、ほんの一部だけでした。見えないところにコストを割いてこの価格。本当にアシックスには頭が下がります。

◆これは注意。スポーツブランドですがあくまでおしゃれ靴です。「ジ・オニツカ」

最後に落とし穴。オニツカです。4万4000円と高価で機能性が謳い文句ですが、このモデル、歩き回る靴ではありません。クラシックなデザインはシンプルがゆえに難しいもの。日本製でオーバー4万円、オニツカと聞けば、だれでも歩きやすさを連想しますが、実はそうでもないのです。

誤解のないようにワンクッション置きますが、この靴は魅せるための靴です。たたずまいを楽しむといったほうがいいでしょうか。存在感を出すために、かなり重い、硬い、馴染まない。オニツカ=スポーツメーカーというわけではなく、歩くための革靴はオニツカの母体のアシックスに全振りしています。ジ・オニツカは結婚式やパーティなどの華やかな場面では光りますが、あくまでもおしゃれ上級者のための靴だと思ってください。オニツカはどちらかというとカジュアル〜ビジネスカジュアルが得意です。はじめの1足にはかなりリスキーなので、実用の靴ではないと思っていただいたほうがベターです。

◆詰めが大事、あると安心なツヤ出しスポンジ

面接の10分前に靴が汚れていたことに気づくケースもあるでしょう。磨き屋さんがそうそう近くにあるとは限らないので、泥汚れならウェットティッシュで拭きとり、ツヤが足りなければコロンブスの名作ダブルシャインがあると安心です。605円。

使い方は、書くまでもないでしょう。なでると、光ります。意外にスーパーやドラッグストアでも売っていたりするので、カバンにひとつあると便利。液体の靴クリームも便利なのですが、乾くのに意外と時間もかかるし、厚化粧になって革がひび割れるのでおすすめしません。ダブルシャインもシリコン材で一時的にツヤを出すだけなので、月に一回は磨き屋さんで落ち着いて磨いてもらった方が靴は長持ちします。

「いざ面接」と聞くと、靴は安物ではダメなのではと身構える方もいらっしゃいますが、ゴム底で十分です。極端に高い靴である必要は一切ありません。むしろ足にフィットしていないと靴ずれで出血しますし、かばって歩くと歩き方も不格好になります。1万円台前半でも今の時代、いい靴はあります。大切なのは価格ではなく、自分に合った一足を選ぶこと。自信を持って面接に臨みましょう。

【シューフィッター佐藤靖青】
イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』

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