エルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2025年WRC第2戦ラリー・スウェーデン 2月15日、北欧スウェーデンで開催されている2025年WRC世界ラリー選手権の第2戦『ラリー・スウェーデン』のデイ3は、スペシャルステージ(SS)9から15までの全7本が行われ、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合首位に立っている。TGR-WRTのレギュラードライバーである勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)は、総合2番手で大会3日目を終えた。
シーズン唯一のフルスノーラリーとしても知られる『ラリー・スウェーデン』。立ち並ぶ針葉樹に囲まれた圧接路を舞台に、特別な15インチスタッドタイヤを使って競われる大会も、この日で折り返しを迎えた。
■ペースアップで表彰台圏内に急浮上
ここまで最高峰クラスでは、リタイアを伴うクラッシュも起こらずにハイスピードラリーらしいタイトなタイムバトルが展開されている第2戦。そして、迎えたデイ3からは出走順が総合順位の降順となり、昨日ラストのスーパーSS8より前の順位をもとに、ジョルダン・セルデリディス(フォード・プーマ・ラリー1)から走行を開始した。
天候は昨日よりも晴れ間が増え、最初のSS9は氷点下11度と冷え込んだなかで9時10分より開始となった。1スペックとなっているタイヤ選択については、全車がスペア2本を備える6本運用に揃った。
この日のステージは、路面に雪が積もっている影響で、出走順の早い順に雪を掃く“クリーナー”の役割が強まり、走行が進むにつれてタイムは向上していく。そんななか、前日までタイムを上げきれずにいた2度のチャンピオン、カッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)が好走を見せ、ここまでの鬱憤を晴らすステージウインを飾った。
そして、続くSS10では総合首位エバンスも少しスパートをかけたようで、今大会4度目のステージ最速をマーク。一方、優勝を争う勝田やオット・タナク(ヒョンデi20 Nラリー1)は数秒遅れ、徐々にギャップを築き始める。
午前最後のSS11になると、鳴りを潜めていたヒョンデ・シェル・モービスWRTの“現王者”ティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)がプッシュし、2番手以下を3.0秒離す快速を披露した。
一方で僚友タナクは、透明な何らかのフルードがフロントウインドウに吹き出すトラブルに見舞われ、さらにはアドリアン・フルモー(ヒョンデi20 Nラリー1)もヘルメットのアゴ紐をスタート後に締め直すというトラブルから望まぬタイムロスを喫したために、ステージ最速のヌービルが総合3番手へと急浮上した。
■総合上位勢で今大会初のデイリタイア
サービスパークのある『ウーメオー』にて昼のミッドデイサービスを終えた一行は、ループステージの2本目へ向けてふたたび西へ移動。各クルーのタイヤについてはフルモーのみが5本選択、他は6本選択となった。
依然僅差の状況で迎えたループステージでは、午前中の走行で轍ができたことでコンディションも変わり、コーナーによっては雪の下から泥が表面に撒かれている箇所も散見される。
こうした状況では、出走順の影響やタイヤへのダメージなども考慮したペース配分が求められ、午後最初のSS12ではトヨタ勢は静観、ヒョンデ勢は追い上げ態勢とペースが分かれた。こうした様子のSS12を制したのは、スペアタイヤを1本減らす選択をしたフルモーとなり、タナクが2番手タイムで続く。
そしてSS13では首位エバンスが、得意な区間でのギャップ拡大に乗り出したかのようなスパート。チャンピオン経験者のヌービルとロバンペラを抑えてステージウインを飾り、4番手タイムとなった勝田との差を8.6秒に広げる。
一方で、SS11での無慈悲なタイムロスの挽回に燃えていたフルモーだったが、ここで勢い余って雪原に乗り出し、スタックしてしまう。クルーらは懸命に雪をかき出すも、停止したマシンを救い出すことはできず、あえなくデイリタイアとなってしまった。
続いて、日も沈み始めた16時にスタートが切られたSS14。先ほど健闘したエバンスだったが、ここではラインが膨らんで雪壁に触れてヒヤリのタイムロス。代わりにトップを奪ったのはヌービルとなり、勝田、タナクが続くトップ3となったことで総合での差がふたたび縮まる展開となる。
この日最後のSS12は、サービスパーク周辺で行われるナイトステージだ。気温も下がった暗闇のなかで行われたタイムアタックでは、ジャンピングスポットもあるギャラリーステージで各車が躍動。しかしそのなかで、首位エバンスをふたたび悪夢が襲った。
中低速の左コーナーで突如リヤのコントロールを失ったエバンスは、そのままストールしてストップしてしまう。ライトポッドの明かりも消えてシステムが停止した様子だったが、すぐにエバンスは再起動してエンジンも無事にかかり、何とか順位を失うことなくフィニッシュラインを切った。
そんな一波乱もあったSS12はヌービルが制し、エバンスと勝田が3.0秒差で築くトヨタのワン・ツー体制に対して3.3秒差にまで迫った。さらにその6.5秒後方には、ヒョンデのダブルエースを担うタナクも続く。そして総合5番手には、この日は全ステージでトップ5タイムと調子を取り戻しつつあるロバンペラがつけた。
明日の大会最終日は、SS16からSS18までの全3本が実施予定。スペシャルステージの総走行距離は68.78km、リエゾン(公道区間)も含めた総距離は224.12kmだ。