「iPhone 16e」が“iPhoneの価値”を再定義する製品だと考えられる、4つのデザイン視点

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2025年02月26日 11:21  ITmedia PC USER

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iPhoneシリーズのラインアップ全体のバランスを再デザインした製品が「iPhone 16e」だ

 Appleから「iPhone 16e」が発表された。


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 この製品は、長くiPhoneの象徴であったホームボタンとの決別を図ったiPhoneであり、多くの人が愛用したLightning端子に終止符を打ったiPhoneであると同時に、Apple Intelligence時代のiPhoneの新しいラインアップを完成させるパズルの最後のピースと言えるiPhoneでもある。


 多くの人が親しんでいたエントリーモデルの「iPhone SE」シリーズのような単なる低価格のモデルではなく、iPhoneという世界トップクラスの人気を誇るシリーズ全体の再定義を行う製品にもなっている。


 この記事では、Appleがこの製品をどのようにデザインしたのかを検証しようと思う(デザインというのは、ただ色形だけの話ではなく、もっと製品戦略の背景意図という意味でのデザインだ)。


●製品ラインアップのデザイン


 iPhone 16eは、「iPhone 16」シリーズに統合される形で登場した。従来の「SE」という独立した名称を廃し、16eというナンバリングを与えたことで、シリーズの一員であることを明確にした。


 この新しい名前、そしてAppleが開発した最新のモデム(通信)用Apple SiliconであるC1プロセッサの搭載、そして初となる2通りの光学撮影(標準と光学2倍ズーム)ができる「2イン1カメラ」採用などからも分かる通り、Appleはただ安いiPhone 16を作ったのではなく、Apple Intelligence時代のエントリーモデルがどうあるべきかを熟考している。


 ディーター・ラムス氏というドイツの有名なデザイナーが、「良いデザインの10カ条」というものを提唱している(興味のある人は調べて欲しい)。


 その中に「Gutes Design ist so wenig Design wie moglich.(良いデザインとは、可能な限りデザインを少なくすることである)」というのがある。外観上は、それほど大したことをやっていないように見えて、実は内部の構造なども大きく見直したiPhone 16eは、まさにこれを体現した新製品だろう。


 下の表は今回、iPhone 16eが置き換えたと思われるiPhone SE(第3世代)と、販売継続となる1世代前の製品となるiPhone 15、そして2024年9月に発表された現行製品のiPhone 16と16 Proのスペックを比較したものだ(画面サイズを大型化したiPhone 16 PlusとiPhone 16 Pro Maxは表の見やすさを優先して外している)。


 表のiPhone 16eの欄だが、黒い文字で書いた部分はiPhone 16や16 Proに近い、2025年モデルのベースラインとなる特徴だ。対して白い文字で書いた項目は、iPhone SEやiPhone 15に近いスペックの項目だ。


 単純にiPhone SEをアップグレードしたものなら、もっと全体的に白い文字になってもいいはずだが、1個1個のスペックを製品から得られる体験や価格、今回の特徴である最長26時間というバッテリー動作時間と天秤にかけて検討していることが分かる。


 筆者の個人的な印象だが、AppleはiPhone 16eが少なくとも製品出荷数では、その中心になると考えているのではないだろうか。iPhone SEは価格こそ手頃だが、その小さな画面サイズゆえに特殊なモデルという印象が強く、主流モデルになりきれていなかった。


 個人的には、ワイヤレス充電に対応しながらMagSafeに対応しなかったのは残念でならないが、iPhoneにあまりお金をかけず、これまでもアップグレードしてこなかった人は当然、MagSafe対応の充電器も持っておらず、利用しようとすると追加のコストになる。また短時間で高速に充電したい場合はUSB Type-Cケーブルを挿した方が速いと考えると、確かに優先度の低い機能だったのかもしれない。


 なお、このMagSafe非対応についてAppleは特に理由を挙げていない。Macworldなど一部の媒体が部品メーカーからの情報として、Apple C1がMagSafeと干渉をするからだと報道していたが、これについてAppleは正式に否定をしたようだ。


 一方で着信/サイレントスイッチは、アクションボタンに変更されている。これは今後、Apple Intelligenceの機能の1つとして提供するVisual Intelligenceが、2025年後半以降のiPhone利用で重要になると考えたのだろう。


 Visual Intelligenceは、iPhone 16や16 Proに合わせて発表された機能で、これらの製品ではカメラコントロールという操作部を使って呼び出す。呼び出すとiPhoneがカメラの撮影状態のようになるので、お店の看板を写すとそのお店の情報を調べてくれたり、花や動物にかざすとその種類を教えてくれたりと、見えているものについて、より詳しく教えてくれるインテリジェンス機能だ。


 確かに現在、国内でApple Intelligence機能の提供が始まったら頻繁に利用される機能の1つになるだろう。


●iPhone 16シリーズに近づいた外観デザイン


 外観上の印象は、iPhone 16に近くなっている。何といっても大きいのは、16や16 Proと同じ6.1型のディスプレイを搭載し、画面が本体の縁近くまで広がった。


 そしてホームボタンがなくなり、アクションボタンやUSB Type-C端子を備えたという点でも他のiPhone 16シリーズに近づいている。


 たまにiPhone SEの小さいサイズが良かったという声も聞くが、実際に調査をしてみると、大きな画面を望んでいるユーザーの方が多いことが分かっている。Appleとしても、限られたユーザーの要望に応えるために小さい画面をバリエーションとして残し、OSアップデートやアプリ開発でもそこに配慮し続けなければならない制約をいつまでも続けるよりも、少なくとも5年後の2030年頃までには全てのiPhoneの画面サイズを6.1型以上でそろえることが大事と判断したのだろう。


 外装は、エアロスペースグレードのアルミ(航空機にも使われる高強度のアルミニウム)になり、iPhone SEシリーズよりもはるかに高い耐久性を実現している。


 一方、外観については単体で見ても分からないが、カラーバリエーションがなくなったのは少し残念といえよう。これまでiPhone SEでも、ミッドナイトとスターライトに加えて(PRODUCT)REDの赤モデルが選べた。


 とはいえ、これまでのiPhoneを見てもエイズ基金応援の意味もある(PRODUCT)REDモデルは、製品発表から半年後くらいに追加されることも多いので、今回も製品の売り上げにブーストをかけるために、しばらくしてから追加される可能性はある。


●長時間のバッテリー動作を重視で大幅に再設計された内部デザイン


 iPhone 16eで、一番大胆に進化したのは内部の設計かもしれない。より安定した5G通信を、従来のQualcomm製モデムよりも省電力で実現する新開発のApple C1を搭載したこともそうだが、それに加えてカメラモジュールが1個になったことなどを組み合わせて、とにかくバッテリーの持ちの良さを売りにしようと考えたのだろう。


 バッテリーを中心に、それ以外の要素がバッテリーを囲むように内部構造をシンプル化した。これがバッテリー長時間化だけでなく、頑丈さの向上や修理のしやすさ(特に修理時のバックパネルの交換のしやすさ)にもつながっているようだ。


 Apple製品は外観が全く同じiPhoneでも、常に内部コンポーネントの配置を見直しているが、動画で見る限りiPhone 16eではコンポーネント配置がさらに整理され、部品間の重なりを減らしているように見える。


 これは、修理時に各部品へのアクセスが容易になることを意味している。実際、個別のコンポーネント交換がしやすくなり、特にバッテリーやディスプレイの交換がしやすくなっているという。また背面ガラスの構造も見直され、従来よりも簡単に交換できるようになった。


 ちなみに、いずれは地球上の資源の新たな採掘に頼らず新製品を作ろうとしているAppleだが、iPhone 16e部材のリサイクル比率はおよそ30%だ。カメラのワイヤーやプリント回路基板のメッキ部分、プリント回路基板や電磁誘導充電器、Taptic Engineのタングステンと銅線、全てのマグネットは100%リサイクル素材となる。


 バッテリーは再生コバルトこそ100%のリサイクル率だがリチウムは95%、ボディーのアルミは85%となっている。ただ、ここに挙げていない部材はまだリサイクル方法が確立できていないのかもしれない。


●製品体験のデザイン


 iPhone 16eは、Apple Intelligence時代のiPhoneで、この新しい時代にユーザーがどのようにiPhoneを使うかを考えて仕様が決められている。


 既に触れたが、そこにはApple Intelligenceのテキストの自動校正や要約機能を使って、これまで小さなiPhoneでは扱うことが大変だった長い文章をより効率的に理解したり、作成したりするといった使い道もあれば、Visual Intelligenceを活用して、カメラで写した物体の情報を瞬時に取得するといったことも含まれる。


 これまでのiPhone SEが苦手だった、暗い場所での写真もナイトモードを使ってよりきれいに撮影でき、人物などの対象物を撮影したとき、人が目で見ている印象により近い2倍ズーム(35mm換算で52mm)での撮影も“荒れ”のない光学撮影で撮ることができる。


 またUSB Type-C端子の搭載で、外付けSSDや楽器用オーディオインタフェース、カメラなどさまざまな周辺機器と直接接続ができるようになる。Lightning端子と比べると、ケーブルを挿した際のカチっという感触もなく不安な部分もあるが、既に多くのPCに採用されており、USB Type-C端子を備えた周辺機器であれば、物によってはiPhoneとPCの両方でケーブルを変えずに使い回しができるというメリットも新たに加わる。


 また凝った映像のアクションゲームなどをプレイする人であれば、iPhone SEやiPhone 15では処理が間に合わず、フレームレートが遅くて快適にプレイできない大作でもiPhone 16eなら快適に、(しかも、バッテリー動作で長時間)プレイできる可能性が高い。


 そしてほとんどの人は一生使わずに済むが、万が一、遭難したり事故にあったりした際に衛星通信機能を使ってSOSの発信が行われ、命が救われる確率も大きくなっている。


 iPhone 16eの登場は、こういったことを全てひっくるめて一新されたiPhoneシリーズの“最低限満たされるべき価値”であることを明らかにしてくれた。


 iPhone 16eをiPhone SEの後継製品と捉える人もいるが、実際には本製品はiPhoneという製品の価値を再定義した製品なのではないだろうか。


 ところで本製品の登場により、iPhoneが全製品同じナンバーでそろえられたことになる。そこで、気になることが1つある。製品の更新のタイミングだ。


 おそらくこれまでのiPhone SEのように不定期更新ではなく、毎年更新されることになるだろう。今回の16eの発表は2月に行われたが、他のモデルは例年9月に一斉に更新される。しばらくは、この半年差更新を続けるのか、それともいずれは9月にまとめて一斉に更新されるのか。


 Appleはぜひとも、製品の購入計画が立てやすいように明確に製品更新のタイミングを定めてほしい。



このニュースに関するつぶやき

  • 実際は、バカ売れして主流になって困っただよね?! >主流モデルになりきれていなかった
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