
元気がない日本を活性化するには、戦国武将を現代に召喚するしかないのかもしれません。先日、上野公園での「戦国武将EXPO2025」に行ってきました。武将・侍文化がテーマの歴史フェスで、観光地案内や物産、武将グッズ、甲冑(かっちゅう)着付け、居合斬り体験などのブースが並び、盛り上がっています。
会場に近づくにつれ、イカ焼きの匂いが激しくなってきました。隣にはたこ焼きの屋台が。戦国時代に食べられていたのか疑問です。戦国武将にちなんだ地方のブースでは、武将の鎧(よろい)や兜(かぶと)を身に着け、メガネをかけたスタッフがフライドポテトを食べていて、それを見た若いカップルがウケていました。戦国時代にはあり得ない牧歌的な空気です。
各ブースでは武将キーホルダーやアクスタ、家紋入りパッケージのコーヒーなどの推しグッズも売られていましたが、気になったのは武将の子孫のサインが当たるガチャガチャです。御利益がありそうですが、負けた武将の場合は微妙かもしれません。
このイベントで楽しみにしていたのが、武将の子孫トークショー。仙台真田家子孫の真田さん、長宗我部元親(ちょうそかべ・もとちか)子孫の長宗我部さん、筒井順慶子孫の筒井さん、明智光秀子孫の明智さんなどが登場。最初のテーマは好きなお酒についてで、ワインや日本酒がいいなど、和気あいあいと盛り上がっていました。武将や城のイベントで集まることが多いとか。戦ばかりだった武将の子孫たちが平和に集っているとは、ご先祖さまも驚いていそうです。
かつては絶対的なカリスマだった戦国武将ですが、真田さんが「小さい土地を巡って戦っている田舎のおじさん。天下国家のことなんて考えてない」と言い放ったのが印象的でした。そう言いながらも真田幸村の大河ドラマ化のために署名活動に奔走され、ご先祖思いです。他の子孫の方もそれぞれ先祖の大河ドラマ化のため署名活動をしていて、結構効果がありそうでした。明智光秀子孫の女性は「先祖が謀反を起こしたんだからつつましくしろ」などと言われることがある、と嘆いていました。500年も前のことで責められても…。本当の史実はどうだったのか、代々伝わる資料を解読し研究することへ使命感があるそうです。
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武将の子孫の方々は気高さや芯の強さを感じさせました。寒空の下のトークでしたが、寒そうな様子もないのに武士道精神が現れています。平民の子孫としては、イカ焼きを食べて寒さに耐えられなくなったので帰宅しました。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 10からの転載】
しんさん・なめこ 漫画家、イラストレーター、コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美大短期大学部卒業。著書に「女子校育ち」(筑摩書房)、「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「大人のマナー術」(光文社新書)など多数。2024年7月に「川柳で追体験 江戸時代 女の一生」(三樹書房)を上梓。
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