mineoが「50GBプラン」を新設、使い放題を「5Mbps/200kbps」にアップデートした理由 格安競争からの脱却へ

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2025年03月18日 06:11  ITmedia Mobile

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3月13日から、月額2948円で50GBをマイピタに追加した

 低容量のデータ通信が主戦場だったMVNOだが、徐々に中・大容量のプランが拡充されつつある。3月に容量別の料金プラン「マイピタ」に50GBのコースを新設するオプテージのmineoも、その1社だ。これまで、同社のマイピタには20GBコースまでしかなかったが、その上に50GBを設けることで、大容量通信の需要も狙う。


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 50GBプランの新設と同時に、mineoは速度別の料金プランの最上位コースとなる「マイそく プレミアム」の通信速度を見直す。プレミアムはもともと3Mbpsで使い放題だったが、月曜から金曜のお昼のみ、32kbpsに速度が絞られていた。改定後は、通信速度が5Mbpsに上がり、制限時のそれも200kbpsに緩和される。


 マイピタとマイそく、それぞれの最上位プランを充実させたmineoだが、その背景には、ユーザーのデータ使用量が年々伸び続けていることがあるという。オプテージのモバイル事業推進本部 モバイル事業戦略部長 松田守弘氏と、モバイル事業推進本部 モバイル事業戦略部 コンシューマモバイル戦略チーム チームマネージャーの前田圭介氏に、新料金導入の狙いを聞いた。


●大手キャリアではなく、50GBプランのターゲットである若年層の使い方を想像した


―― これまで20GBが最大容量でしたが、一気に倍以上の50GBを追加しました。これはなぜでしょうか。


松田氏 大容量コースを追加した形ですが、お客さまからのアンケート結果や、市場の通信動向を踏まえています。通信量は、年々増えています。具体的に言うと、総務省のデータではこの6年ぐらいで2倍になっています。また、エリクソンのレポートでも、将来的な動向として、世界のデータ使用量が向こう5年で倍増するという想定が出ています。


 一方で、お客さまに契約しているプランをお聞きしてみると、30GBを超える容量の方がかなり増えています。特に若年層では、3人に1人ぐらいがそういったプランを契約していました。これに対し、今の私たちのプランを見返してみると、20GBまでの4プランしかなかった。少し先を見据えて、大きな容量が必要だねという結論に至りました。


―― 若年層を例に挙げていますが、mineoとしてこの層を取りこぼしていたということなのでしょうか。


松田氏 はい。年齢構成が30代、40代に偏りがあり、若年層は取れていませんでした。


―― 20GBの上ということでキリよく40GBではダメだったのでしょうか。


松田氏 平均で見るとそうですが、今までのラインアップでもオプションを使うことで、20GB以上の容量が使えました。30GB、40GBよりもう少し上にカバー範囲を広げるという意味で、50GBにしています。


―― そのオプションですが、50GBだと「夜間フリー」や「パケット放題 Plus」が無料になります。これらを組み合わせると、実質的に無制限に近くなりそうですが、大手キャリアの無制限プランのような領域も狙っているのでしょうか。


松田氏 直接的にキャリアの方を見たというより、50GBプランのターゲットである若年層の使い方を想像しました。スマホで動画を見たい、SNSを見たいというのはもちろん、家の回線として使われる場合もあります。1人暮らしであれば、モバイルだけの方もいます。ここに夜間フリーがあれば、OSのアップデートだったり、アプリのインストールだったりで、一時的に大容量通信が必要なときに便利です。そういった利用シーンを考え、3つのオプションを無料で付与することで非常にお得に使えるものに仕上げました。


前田氏 夜間フリーは、夜間という名称ですが、実は朝も結構遅い時間まで対象です。午前7時半までなので、通勤時にYouTubeを見たりもできます。


―― なるほど。結構通信しそうな時間がフリーになるんですね。そこまでいくと、50GBでもデータ容量が余る人が多いかもしれないと思いました。


前田氏 「パスケット」も無料で付いているので、余ったデータ容量は無期限に繰り越すことができます。マイピタのデータ容量をあまり細かく刻んでいないのは、パスケットの自由度を強みにしているところもあります。もし50GBで余るならいったん20GBなどにしていただき、足りなくなったら再び50GBに戻すという使い方もできます。


●ピークの時間帯に一気に使うというより、いろいろな時間帯に分散する


―― 50GBプランは、ガンガン通信しそうなユーザーが多そうです。キャリアとの接続帯域は大丈夫なのでしょうか。


松田氏 50GBのターゲットによるところがあります。ここまであると、ピークの時間帯に一気に使うというより、いろいろな時間にトラフィックが散らばっていくのではないかという想定です。夜に長く動画を見るなど、今までのトラフィックの分散と違う形になるのではないかと考えています。


―― その狙いが外れてしまったらちょっと大変ですね(笑)


前田氏 そうなると大変です(笑)。ただ、大変だからといって品質を下げるわけにはいきません。基準値は僕らの中にあるので、それを満たそうとすると、僕らの懐が厳しくなります。


―― それも違った意味で大変そうですね……。ちなみに、他のMVNOだと大容量プランは分け合いを前提にしていることもありますが、そういう使い方がメインになるとは考えていないのでしょうか。


前田氏 ターゲットとしてはそう(個人の若者)ですが、機能としてシェアはあるので、ご家族と分け合いながら使うといったことはできます。2回線目を1GBにして、分け合いながら使うのはアリだと思っています。


―― 単刀直入に伺いますが、2948円という料金はahamoに非常に近いと思います。ここは意識したのでしょうか。


松田氏 特定のどこかを意識したというより、今のコースを見た際にどのあたりであれば皆さまの意識の中に入れていただけるかを考えた方が強いですね。


前田氏 大容量サービス自体は他社を意識せず、使われ方を見ながらやるべきことだと思って企画をしています。ただし、最後の値付けに関しては、他社がどのぐらいかはある程度見ています。他社を見ると、税込みで3000円を超えるとちょっと出しづらい。そこはギリギリ抑えて2000円台にしています。


●マイそく プレミアムは5Mbpsで動画も視聴しやすく お昼も200kbpsでスマホ決済が使える


―― マイピタの50GBと同時に、マイそく プレミアムの速度も上げています。この狙いも教えていただけないでしょうか。


松田氏 マイそくは、お昼の時間帯に制限があり、それ以外の時間帯は一定の速度で使い放題になるというプランです。その中のプレミアムは、今まで3Mbpsで使い放題になっていました。ただ、3Mbpsだと、スタンダードの1.5Mbpsとあまり差がない。世の中のコンテンツもリッチになっているので、そういった意味もあって5Mbpsにグレードアップしました。高精細な動画を見ていただいたり、アプリのダウンロードに使っていただいたりというレベルを考え、5Mbpsにしています。


 お昼の制限に関しても、今までの32kbpsから200kbpsに大きく緩和しました。ここについては、ご要望も多くいただいていました。スマホ決済などを使えるようにという意味も込めて、200kbpsにしています。


―― 確かに、32kbpsだとアプリ側に通信環境が悪いと見なされてオフラインモードになってしまうかもしれないですね。制限時間帯のお昼でも、ランチを食べて決済できるというとイメージがつけやすいですね。


松田氏 3kbpsだとなかなか厳しいですよね。


前田氏 マイそくのコンセプトは、使い放題というよりも帯域の有効活用から発想していました。そのため、お昼にはどうしても制限があります。一方で、お客さまからすると、ここがストレスになってしまう。フルフルで開放するのは難しいですが、少しでも使いやすくなるよう考えました。


―― イメージ的には、動画がちゃんとフルHDになると言えば分かりやすいですかね。


松田氏 そうです。


前田氏 Netflixの推奨速度は、5Mbpsです。じゃあ、3Mbpsで見られなかったかというと実際には見られていましたが、5Mbpsにすることで推奨速度に達することはできました。


―― 使い放題でこの値段はかなり引きが強そうと思ったのですが、実際にはマイピタの方がユーザー数は多いですよね。これはなぜでしょうか。


松田氏 なぜなのかつかみ切れていないところはありますが、先ほどお話していたお昼の制約のところに引っ掛かる方はいると思っています。また、マイピタのように容量が決まっていると、他社と比べやすいところもあります。他社から移ってくるときに、容量を合わせれば同じような使い勝手でいけると分かるのは大きいと思います。加えて、マイピタに対してパケット放題 Plusをつけると、結局はマイそくと同じような使い放題になります。


●10周年記念イベントに2700人が来場、ファン∞とくは端末割引が好評


―― 2つの新プランですが、コミュニティーの声はどこまで意識したのでしょうか。


前田氏 声は挙がっていました。特にプレミアムに関しては、強くご意見いただくこともありました。逆に50GBは市場動向を加味して作ったところがあります。もちろん、大容量を求める声がなかったわけではありませんが、そこまで何件もあったというわけではありませんでした。


―― そのコミュニティー活動ですが、去年(2024年)はリアルな祭を開催しました。逆にその分、少しリアルイベントの回数は減ってしまったような印象ですが、この点はいかがでしょうか。


松田氏 昨年10周年を迎え、何か大きなイベントをしたいという思いがありました。普段、「マイネ王」にそこまで関われていない方でも気軽に来られるよう、リアルなイベントとして「マイネお祭り」を開催しました。その大きなイベントがあったので、なかなか他に手が回らないことはありましたが、力をかけた結果として2700人の方にご来場いただけました。ご家族連れや友人と一緒に来ていただく方も多く、これまでとは違った形で裾野を広げられたと考えています。コミュニティーとしてコアな方をよりコアにしていくのと同時に、裾野を広げてコミュニティーを大きくしていくのは方向性として重要だと改めて感じました。


―― ファン向けという意味合いだと、昨年「ファン∞とく」も改定し、継続年数に応じた特典がつくようになりました。こちらに関しては、どんな声が多いでしょうか。もっと豪華にして……という意見もありそうですが。


松田氏 正直、そういう声もありましたが、端末割引に使えたり、オプション代の足しにできたりと、今までより使い道が増えたところは評価されています。一方で「こんなんできへんか?」という声もあるので、そこは広げていきたいですね。


―― やはり利用が多いのは端末割引でしょうか。


松田氏 今は端末が多いですね。また、SIMカードを交換するといった手数料への充当にも使っていただけています。


前田氏 キャリア変更に使えるので、ドコモさんの通信速度が出ないので変えたというようなことも……


―― 速度が不満でキャリア変更する人もいるんですね。


前田氏 はい。多くはありませんが、実際にいました。


●半年間990円のキャンペーン終了後も、離脱率は思ったほど高くない


―― 今回は主に大容量の追加や改定でしたが、MVNOはどちらかというと小容量のユーザーが多いという話も聞きます。他社と比べるとmineoはここがやや割高になっていますが、改定などのご予定はありますか。


松田氏 目の前の予定としていえることはありませんが、マイピタをどういう構成にしていくかは、考えていかなければいけないことです。価格だけを見ると、競争力を失っている部分もあります。ただ、1GB、5GBでもパケット放題 Plusを入れることで、5GBなり10GBなりを使える環境にはあります。実際、そういう形で使っている方も多い。単純に、1GBでこの値段というわけではないところもあります。


前田氏 マイネ王では動画の最後にパケットをつけたり、視聴人数に応じてパケットをプレゼントしたりという企画をやっています。マイネ王をフル活用している人は、1GBプランでも5GBぐらい使えたりする。独自性をもって差別化していくことは、常に意識していきたいと考えています。


―― ユーザー数も、やはり1GBや5GBプランが多いのでしょうか。


松田氏 今はキャンペーンをやっているので20GBに申し込む人が多いですが、それがないと、1GBや5GBが多くの割合を占めます。総量でいえば、5GBまでが主流です。ただしキャンペーンの結果、大きな容量を契約する方が増えているので、使い方として両極端になっているところはありますね。


―― 20GBまでどのプランでも990円だと、普通20GBを選びますよね(笑)。


松田氏 そうですね(笑)。


前田氏 ただ、昨年はキャンペーンが終わったあと1GBに変更するといった方は、想定を下回っていました。逆に、20GBのままにしている方が多かったですね。その意味だと、もともと20GBを使う層にリーチすることができたキャンペーンでした。


―― キャンペーンは毎年何らかの形でやっていますが、一昨年(2023年)とはどう違ったのでしょうか。


前田氏 一昨年は、1GBを110円で使えるところに訴求ポイントを置いていました。ただ、それだと低容量の方が多く集まり、110円のまま離脱してしまう方も多かった。


―― 逆に20GBまで990円にするキャンペーンは、ちゃんと使う方が多かったので継続したということですね。


松田氏 その通りです。離脱率も思っていたより高くありません。


―― キャンペーンは新設の50GBプランも対象ですが、ここはさすがに990円にはできなかったんですね。


松田氏 そこまではさすがに怖くて踏み込めませんでした。トラフィックを読めないところがあります。


前田氏 ただ、割引額は20GBと一緒にしています。


●取材を終えて:低容量、低価格一辺倒の競争環境からの脱却へ


 マイピタの50GBプラン投入の背景には、ユーザー層を多様化していきたいmineoの意思があるように感じた。利用者からの声を受けてというより、将来の動向をにらんで導入したものだったエピソードも、それを裏づける。既存ユーザーを上位プランに誘導していくのが主な狙いではなく、mineo(やMVNOに)欠けていた若年層を獲得する動きの一環だったというわけだ。


 20GBまで990円にそろえるキャンペーンも、狙いは同じだ。収益が上がりづらい低容量、低価格一辺倒の競争環境から脱却しようとしていることもうかがえる。MVNOが健全に収益を上げていくうえで、こうした取り組みは重要だ。一方で、データ容量を上げると、今度は大手キャリアがライバルになってくる。価格以外の面で、どう差別化していくのかがますます重要になりそうだ。



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