
「こんがり焼けたパンみたいなカニ!」と投稿された画像が898.6万回表示されて注目を集めました。手のひらに乗ったつぶらな瞳の小さなカニの甲羅は、良い感じに焼き色がついたパンみたい。さらにその下のハサミや足は綺麗な紫色をしています。
「コッペパンみたいやなぁwww」
「天然でこの色! 美しいですね」
「かわいい」
「紫がまたオシャレ」
見慣れないカニにこんなコメントが多数つきました。
投稿した「しゅーさん」(@h2c2o4_2h2o)は、カニは「ハバヒロマンジュウガニ」であること、「個体差があるみたいで、全てがパンみたいになるわけではなさそう。笑」と補足しています。
「普段は野鳥観察をメインに行っていますが、干潟の生き物にも興味がありますのでそちらの観察も行なっています」と話すしゅーさん(周戸大季さん)は、琉球大学で博士研究員をされています。詳しくお話を聞きました。
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――こんな綺麗で美味しそうな(笑)カニがいるんですね。
ハバヒロマンジュウガニは今回初めて観察しました。ポストが話題になって素直にびっくりしています。みなさんカニがお好きなようで、その後投稿したスベスベマンジュウガニもいつも以上にいいねしていただきました。偶然にもハバヒロマンジュウガニは鮮やかな紫色のハサミがブルーベリージャムに見えたり、紅芋に見えたりとみなさんの豊かな発想のコメントをいただけて、私自身も興味深く見させてもらいました!
――スベスベマンジュウガニも、ツルツルした見た目でおもしろい名前ですね。こちらは毒成分を持っていると書かれていました。
ハバヒロマンジュウガニは、毒があるかどうかはおそらく明らかにされていないです。ただし、近縁種のスベスベマンジュウガニに代表されるように、マンジュウガニ属、もっと広く言えば、オウギガニ属はとくにサンゴ礁域に生息するものは海洋性の毒成分を体内に持つことが多いです。ですので、不明であるとは言え、有毒の可能性が考えられますので間違っても食べないようにしてください。
――それは気をつけないといけないですね。どのような目的で、干潟を観察されているのですか?
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普段は野鳥観察をメインに行っていますが、干潟は純粋に生き物観察ということで行っています。干潟は様々な生き物で構成されているので、見ていて飽きませんし、多少自身の研究と関係があるので勉強も兼ねています。
――どのような研究を?
もともと大学院生までは有機合成化学という手法を用いて新しい物質を作って性質を明らかにする研究に携わっていました。博士号を取得してからは、もともと自然が大好きだったので生き物に関わる研究がしたいと思い、現在では干潟に生息するシギ類と呼ばれる鳥に着目して研究を進めています。今まで行ってきた化学の知識を活かしながら、シギ類の食性や干潟環境の評価を行なっています。
――化学と生き物の研究分野もあるのですね。沖縄に住んでどのくらいなのですか?
沖縄に引っ越してきて実はまだ1年くらいです。大きく研究分野を変えて、縁あって琉球大学で研究を行うことになったので、今年度から沖縄在住となりました。沖縄は本州とは異なった独特の生態系が広がっており、生き物観察の趣味としても研究フィールドとしても素晴らしい環境だと思います。
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――ということは、カニがいたのは沖縄の干潟ですか?
このカニが観察された場所は「カーミージー」(沖縄県浦添市)という場所なのですが、ここは軍港の埋め立て予定地なのです。決まってしまったことは半分仕方ないとは言え、埋め立てられて消えていくような場所にも多くの生き物が住んでいます(クマノミやウミウシなども観察できます)。沖縄には素晴らしい自然があって、それらがこのように皆さんを楽しませてくれることを知っていただきたいです。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)