元宝塚雪組トップ・彩風咲奈「柔らかくなったと言われる」 退団から5ヵ月で生まれた変化

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2025年03月19日 09:10  クランクイン!

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クランクイン!

彩風咲奈  クランクイン! 写真:高野広美
 昨年10月に宝塚歌劇団を退団した元雪組トップスターの彩風咲奈。この春、退団後初のステージ「彩風咲奈 1st Concert『no man's land』」で新たな一歩を踏み出す。本格再始動を前に、初コンサートに懸ける思いや、17年におよぶ宝塚生活など、彩風咲奈のこれまで、今、そしてこれからを聞いた。

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◆今しか見せられない“中間地点の自分”を届ける1stコンサートに

――ファーストコンサートのお話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?

彩風:またこのように舞台に立つ機会をいただけたことがうれしかったですし、まだ男役としてしか舞台に立ったことがないので、どういうことに挑戦できるのかなと思いました。男役を卒業してから半年くらいなので、完全に変化しきった自分ではなく、今しかお見せできない“中間地点の自分”をお届けできるようなコンサートにできたらなと思っています。

――構成・演出は荻田浩一先生が務められます。

彩風:宝塚の下級生時代に先生の作品には2作出演させていただきましたが、そのころから先生のお稽古の緊張感が大好きでした。今回お会いした時に、先生は「よく覚えていてくれたね」とおっしゃったんですけど(笑)、またいつかご一緒したいと思っていたのでうれしかったです。お稽古をしながら、先生の知らない、ここまで成長したんだという私を見ていただきたいです。

――どんなコンサートにしたいと伝えられましたか?

彩風:ダンスがすごく好きなので、まずはダンスを踊りたいというのはお伝えしました。今回そうそうたる振り付けの先生方に入っていただいたので、いろんなダンスを踊れたらなと思います。歌に関しても、ずっと応援してくださっている方々にも楽しんでいただけるように宝塚の曲ももちろん歌いたいですし、あまり挑戦してこなかったポップスやジャズなど、いろんなジャンルの歌に挑戦していきたいです。

――彩風さんは雪組一筋だったので、新しい皆さんと作品を作られるのは組配属以来になるのかなと。

彩風:ワクワクドキドキしています! 自分から積極的に話しかけるタイプではないので、どんな感じになるんでしょう(笑)。退団された男役の皆様が「男性に対してもつい自分のほうがリードしちゃう」「座っているときに男役らしくなっちゃう」とおっしゃいますが、そんなエピソードが自分にも出てくるのかな?と楽しみにしたいと思います。

◆水夏希&望海風斗に学んだこととは?


――大阪公演には水夏希さん、東京公演には望海風斗さんがスペシャルゲストとして出演される回もあります。彩風さんにとって、おふたりはどんなトップスターさんですか?

彩風:水さんは本当に1から100まで基礎を教えていただいた方で、水さんから教えていただいたことが“男役・彩風咲奈”のいろんなことに広がっていった感じなんです。水さんはいつも稽古場に誰よりも遅くまで残っていて、ずっとお稽古されていました。その姿がとても素敵でしたし、自分もたとえどんな上級生になってもそういうふうにしたいなと思っていました。しかも、水さんはお稽古の過程を隠すことなくお見せになるんです。お稽古に入ったばかりで、もちろん当時の私から見ると素敵に演じてらっしゃって踊りもとてもかっこよかったりするんですけど、水さんの中ではまだ完璧ではない時から、みんなの前で努力される姿が印象的でした。私もその後同じ立場にならせていただいた時に、そうありたいなと思っていました。

新人公演で初主演をさせていただいたのも水さんのお役で、その時は公演の後に、水さんに「すごく良かったよ」って言っていただいて。その次に水さんの退団作品『ロジェ』の新人公演でも主演をさせていただいたのですが、その時は自分が直すべきこと、学ばなきゃいけないことをまた1から100まで教えてくださいました。当時の私にはすぐに理解して習得できることばかりではなかったと思うんです。でも水さんが最後に、これから先に必要なことやどうしていったらいいか考える機会をくださったんだなと感謝しています。

――望海さんとは、トップスターと2番手としてお芝居やショーでもやりとりが多かったですよね。

彩風:はい。望海さんが組替えで雪組に来られた時に、その新しい風に衝撃を受けました。私は組替えもなくずっと雪組で過ごしてきたので、衝撃の出会いだったというか、こんな方がいらっしゃるんだ!と驚いて。その後、いろんな作品でご一緒させていただいた時に、毎回私はこのままではダメだと思うくらいパワーやエネルギーがすごくて、自分を見つめ直す機会をその時々で与えていただいた方です。

――特に思い出に残っている作品を挙げるとすると?

彩風:『ファントム』ですね。学年的にも望海さんの父親役が務まるだろうかと不安でしたし、望海さんはもちろん、トップ娘役の真彩希帆ちゃんも歌唱力が素晴らしくて、『ファントム』という作品をお客様がすごく待ち望んで期待されていることが伝わってきたので、今考えるとプレッシャーの塊でした(苦笑)。毎日悩みながら稽古に励んだ思い出があるのですが、初めて望海さんと2人で向き合って歌ったときに、望海さんが(主人公の)エリックそのものだったので、自分の心配なんてどこかに吹き飛んでしまったんですね。自分のほうが下級生だからとか、父親に見えるだろうかと悩んでいたことを、望海さんがエリックという役で存在されているから、向き合った瞬間にはすべて忘れて役に没頭できたことが印象に残っています。どの作品でも望海さんが100%役になられて、100%のエネルギーで自由に舞台に立たれていたからこそ、自分もある意味遠慮なく役者として立たせていただけました。

――アフタートークには彩凪翔さん、舞羽美海さん、愛月ひかるさんもご登場されます。彩凪さんとは予科本科でもあり雪組でも切磋琢磨された仲、舞羽さんと愛月さんは同期で退団公演ではお花渡しに登場されるなど縁の深い皆さんですね。

彩風:凪様は雪組の下級生時代にいろいろな作品で一緒の場面で踊っていたり、『灼熱の彼方』という作品で2人でバウ初主演をさせていただいたりと、宝塚での美しい青春時代を一緒に過ごさせていただいた方です。美海も、下級生時代に荻田先生の作品に2人で出演させていただいたのですが、その頃から一緒によく泣いて、一緒によくお稽古をしていました。愛は組は違いますがすごく仲良しですし、彼女も男役というものをすごく愛していたので、愛が作る男役から刺激をもらっていました。トークではどんな話が飛び出すか分からないですけど、そんな予測不能な感じを楽しんでいただけたらと思います(笑)。愛月ひかるがどんどんしゃべってくれると思います!

◆「柔らかくなった」と言われることが多い 退団から5ヵ月での変化 


――2007年の入団以来、宝塚で過ごした17年間はどんな時間でしたか?

彩風:人生の大切なことをたくさん教えていただきました。そして本当にたくさんの人に出会えました。その1つ1つの出会いがなかったら今の自分はないなと思う宝塚人生でした。

――ターニングポイントになった作品や役はありますか?

彩風:その時々にあるのですが、『るろうに剣心』の斎藤一ですね。自分に挑戦できるかな、無理じゃないかなと思っていたものに挑戦させていただけて、小池(修一郎)先生に感謝していますし、あの役があったからこそ、その後の幅が広がったなと感じています。卒業前のコンサートでも一場面やらせてもらったのですが、お客様の反響が一番大きかったですね。

あとは2番手の時代に出させていただいた『SUPER VOYAGER!』の「海の見える街」。ファンの皆様から「彩風咲奈と言えば、あの黄色いスーツ!」と言っていただけるような場面が作れたかなと思います。今回のコンサートでご一緒する三井聡先生と初めてご一緒した場面だったのですが、その当時出ていたメンバーと毎日必ず集まってすごくお稽古した思い出があります。舞台でお披露目した時に、お客様がすごく喜んでくださっているのが伝わってきてすごくうれしかったので、1つのターニングポイントになっていると思います。

――退団からの日々はゆっくりできましたか?

彩風:ゆっくりしていたようで、ゆっくりしていないかな。少し海外旅行には行きましたけど、近場でしたし。舞台を観に行ったり、ペットを飼っているのでペットとの時間を楽しんでいたら、あっという間でした。

ずっと英語の勉強を始めたいとは思っているんですけど、アプリで少しずつやっているくらいで。舞台で英語の歌を歌うこともありますし、できたらいいなと憧れますよね。あと私、よく外国の方に道を聞かれることが多くて(笑)。いつも単語で返してしまうので、スムーズに道案内できるようになりたいです。

――古巣・宝塚の舞台はご覧になりましたか?

彩風:雪組の『愛の不時着』と『FORMOSA!!』を観劇しました。素敵でした! 宝塚っていいなと思いましたし、こんな素敵な方々と私は一緒に舞台に立っていたんだ!とも思って。朝美絢さんから目線をもらってキャッ!となりましたし、(夢白)あやちゃんも頑張っていて、ファンのころに戻ったようで楽しかったです。

――退団されてからご自身でここは変わったなと感じられる部分はありますか?

彩風:「柔らかくなったね」と言われることが多いです。在団中は意識していなかったことですし、自分も当たり前だと思っていたんですけども、知らず知らずのうちに宝塚歌劇団の男役というものをどんな時も身にまとっていたんだなと思います。それが自然と取れたから柔らかくなったのかな。顔がすっきりしたとか、柔らかくなったと言われるんですけど、ファッションもメイクも髪型も全然変わっていないんですよね。

――ファッションやビジュアル面で変えていこうという思いは…。

彩風:それがまったくなくてですね。スカートが穿きたいとか髪を伸ばしたいとかはなくて、着てみたいデザインのスカートがあったり、やってみたい髪型があったらするかも…という感じです。髪型もショートカットが好きなんですよね。

――今回のコンサートを皮切りに、今後も舞台や映像などさまざまな作品で新しい彩風さんと出会えることを楽しみにしています。

彩風:卒業して知らない世界に足を踏み入れたばかりで分からないことばかりなので、まずはいろんな人に会って話を聞いたり、いろんなものを見たり、いろんな所に出かけたりして、たくさん刺激を受けたいと思っています。挑戦したいことや夢を、自分の足、耳、目で探したいと思っています。

私は自分の幸せのためもありますけど、誰かのために舞台に立ちたい、皆様が喜んでくださるから舞台に立つ、それが一番の幸せと思っていたので、皆様が驚き、でも楽しんでもらえることに挑戦していきたいなと思っています。必ずしもすべて変わることがいいことなのかもまだ分からないので、いろいろ失敗しながら、新しい彩風咲奈を発見していきたいなと思います。

(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)

 彩風咲奈 1st Concert『no man's land』は、5月2日〜4日大阪・梅田芸術劇場メインホール、 5月10日〜12日東京国際フォーラム ホールCにて上演。

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