※写真はイメージです。都市部や駅前では、道路に車を停め、用事を済ませたところでフロントガラスに「駐車違反」のシールを貼られた経験がある人も多いでしょう。車からちょっと離れただけなのに……。今回は、筆者がディーラー勤務時代に起こった駐車違反にまつわる出来事をご紹介します。
◆「急いで車検を通して欲しい」と来店
事件はちょうどゴールデンウィーク明けに起こりました。スポーツタイプのセダンで颯爽と来店した30代後半と思しきクールな男性が、「車検を急ぎでお願いしたいんだ」と言います。私はショールームの当番で受付を代わりに行い、ちょうど自分の担当エリアだったのでご挨拶しました。整備の相談は、サービスフロントマンに引き継ぐルールでしたので、そのまま代わってもらいました。
◆わざわざ枠を空けるも…
このお客様、なぜ急いでいたかというと、車検の残りが後3週間ほどに迫っていたのです。営業マンがついているお客様であれば3ヶ月くらい前から買い替えのアプローチを行うのが普通でしたから、車検の期日に間に合わないということはありません。一見のお客様だからこそ起こるドタバタ劇なのです。
受付をしたサービスフロントは、いっぱいいっぱいだった車検の整備枠をなんとか空けて、車を預かります。車検整備自体は何のトラブルも起こらずに1泊2日で終了。ちょうど土日を挟んだので車検証の代わりになる発行から2週間有効の「保安基準適合標章」というカードサイズの書類をフロントガラスに貼り付けて車を納めました。
ここからが事件です。車検証の更新に陸運局に行ったスタッフから「車検の更新ができない」と報告が入ったのです。書類の不備かと思いきや、スタッフから「駐車違反の反則金の滞納が3件もあって……」と、追撃ともいえる報告が。実は、駐車違反の反則金を支払っていないと車検の更新ができない「車検拒否制度」というものがあり、一見で来たお客様が見事に合致したのです。
フロントマンと私はお客様に電話。すると駐車違反に身に覚えがあるようで、督促状が届いていたことに気づいていたにもかかわらず、支払っていないとのことでした。このままでは車検が更新できないので早く支払って欲しい、と伝えました。保安基準適合標章の期限切れまで、あと5日まで差し迫っていたのです。
◆期限切れまで5日、結局どうなった?
駐車違反の反則金3件分を払ってもらうことになりました。しかし、警察のシステム上は反則金を支払っても数日間は未納状態のままになっていることが発覚。このような状態になった場合、反則金の納付証明書を添付書類として陸運局に提出することで「確認した」とみなされます。
最終的に残り2日というタイミングで車検証が発行され、お客様にお渡しすることができたのです。
◆豆知識:これをやると車検証が発行されないので注意!
5月は自動車税の季節。自動車税の滞納があると、駐車違反と同じように車検証の更新ができませんので注意しましょう。
駐車違反の反則金について、踏み倒すつもりがなくても時間がないなどで支払いに行けず、そのまま忘れてしまうこともあるでしょう。今回ご紹介したケースのように複数回も駐車違反をしてそのままにしていたら論外ですが、本当に忘れてしまうこともあるでしょう。ただ、その過ちはあとでリカバリーすれば大丈夫ともいえます。
期日までに支払う必要のあるものは早め早めに対処しましょう。車検ギリギリになってバタバタしないように、気をつけたいところです。
<文/宇野源一>
【宇野源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801