『手塚世界と私 〜W3ワンダースリーの出演者が語る〜』に出席した成河 撮影:岡千里 手塚治虫さんの漫画を原作とした舞台『W3 ワンダースリー』が6月から東京と兵庫で上演される。これに先がけ『手塚世界と私 〜W3ワンダースリーの出演者が語る〜』が12日、都内で行われ、俳優の成河が出席。手塚作品との出会いと本作への意気込みを語った。
【写真】手塚治虫さんを囲む井上瑞稀、成河ら 本会は、手塚プロダクションの協力のもと、舞台『W3 ワンダースリー』上演へ向けてより作品への見識を高めるべく、手塚治虫の聖地、手塚プロダクション事務所ロビーの『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』のキャラクターが展示されている中で開催。ほかに、KEY TO LITの井上瑞稀、俳優の彩吹真央、演出・上演台本のウォーリー木下氏、手塚プロダクション湯本裕幸氏が参加した。
本作の原作『W3』は、1965年〜66年まで『週刊少年サンデー』に連載されたSF漫画で、誕生してから今年で60周年を迎える名作。原作者である手塚さんは「ただ一つ。これだけは断じて殺されても翻せない主義がある。それは戦争はご免だということだ。だから反戦テーマだけは描き続けたい」と語ったといわれている。
そしてこの『W3』も、戦争、温暖化、食糧危機、地震やエネルギー不足など、人類が直面している自然と共存する上での多くの課題を抱えた地球の宇宙から観た姿を描き、宇宙からやってきたボッコ、ノッコ、プッコや、手塚漫画に欠くことのできないランプなど多彩な登場人物で構成され、反戦テーマをベースに描かれている。
舞台では、日本の田舎にある小川村に住む少年・星真一役を井上、星兄弟の母でF6号役を彩吹、秘密諜報機関フェニックスの一員である真一の兄・光一の潜入先で待ち受けるエーグニ警備隊のランプ役を成河が演じる。
手塚作品との出会いについて、成河は「中学校の図書館で、中学生なんて別になかなかいかないわけですけど、難しいものがいっぱいある中に、唯一『火の鳥』が全巻置いてあった」とし「同級生の中でも話題になってきて、『お前あれ読んだか』『いや、図書館なんか行かないよ』みたいなこと言いながら、読んだ人の話がすごくおもしろくて熱く語るみたいな中で読んだのをとても覚えています」と明かす。続けて「今思い返せばですけど、非常に間口が広くて、すごく難しいことをやさしく楽しく考える機会をいただいたんだなと思います。世界の複雑さというものに、きちんと興味が持てるような体験をさせてもらったんだなというふうに記憶しています」と振り返る。
今作の原作となる『W3』も出演にあたり読んだといい、手塚さんについては「いろんな角度から、いろんな深度から、常に戦争っていうものをどうしたらみんなで、日本人にとって、日本で暮らす人間たちの中で共有できるのか、議論できるのかっていうことをずっとしてきた方なんだなと今は思っています」と熱弁した。
自身が演じるランプについては「戦争を繰り返してきた人類というもののネガティブな歴史というものを一身に背負われたような役割があります」とし、「その人間に光を当てられるかどうかという兄弟のお話、そして座組とお客さんみんなでそれに光をどう当てていくのかというお話になると思います」と明かす。
最後のあいさつでは「難しいこと、目を覆いたくなるようなことっていうのも語ることはあるでしょう」とした上で、「非常に入りやすい間口、本当にどの層の人でも楽しめる、ワクワクドキドキ興奮できるような飽きさせない時間を、ものすごいメンツで今作っているので、ぜひ、予習もよし、復習するもよし、何するもよしですけど、ほんとに軽率に劇場へ来ていただけたら」と呼びかけた。
本公演は、6月7日〜29日に東京・THEATER MILANO-Za、7月4日〜6日に兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホールにて上演される。