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2019年から始まった「GIGAスクール構想」では、小学校以上の教育課程において学習用端末の“1人1台”配備が進められた。本来、学習用端末は数年をかけて配備される予定だったが、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、オンライン(遠隔)学習が進められることになったことから2021年度までに義務教育課程(小中学校など)への配備はおおむね完了した。
学習用端末の想定使用(耐用)年数は5年に設定されており、早い学校(自治体)では2024年度からリプレースが進められているが、置き換えのピークは2025〜2026年度になるとされている。PCメーカー各社は、この大きな買い替え需要に狙いを定めて「Next GIGA(GIGA 2.0)」の仕様に準拠する学習用端末の投入と売り込みを進めている。
4月23日〜25日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された教育関係の展示会「EDIX 東京 2025」でも、主要なPCメーカーやプラットフォーマーがブースを構え、教育関係者に自社の学習用端末やOS/プラットフォームの優位性をアピールしていた。
●約5年間の“蓄積”を踏まえた展示が多数
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筆者は毎年EDIXを取材しているが、2025年はPCメーカーの出展が目立っていた。先述の通り、GIGAスクール構想向けに投入した学習用端末の置き換えが本格化することを見越した取り組みだろう。
構想が実行に移されてから約5年が経過し、PCメーカーにも学習用端末の運用に関するいろいろなノウハウが蓄積された。そのこともあってか、PCメーカーのブースは全体的にそれ生かした展示内容となっていた。
●ASUS JAPAN:学習用端末から教師用端末まで多彩な展示
ASUS JAPANのブースでは、学習用端末としてChromebookが多数展示されていた。同社の学習用Chromebookは、手持ちの鉛筆をスタイラスペンとして代用できることが特徴で、筆圧検知はできないものの、鉛筆を持ち替えることなくずに紙のノートにも画面にも書き込めることを訴求する。
導入コストを意識してか、今回展示したモデルはMediaTekのSoC「Kompanio 520」を搭載するものが多かった。このことは他社にも共通する傾向だ。
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また、同社は教職員向け端末も展示しており、Core Ultra 200Vプロセッサを搭載するビジネス向け「Copilot+ PC」を始め、液晶ディスプレイ一体型PC、ミニタワーPC、超小型(SFF)デスクトップPCなど、多彩なラインアップを取りそろえていることも強調していた。
●Dynabook:小学校の教室を模したブースで「机への収まり」をアピール
Dynabookは、以前から文教向けPCに力を入れている。今回は他社よりもコンパクトな10.1型Windowsタブレット「dynabook K70」と、同画面サイズの「Dynabook Chromebook C70」を中心に展示を展開していた。
ブースの大部分は、小学校の教室を模していた。小学校で実際に使われている机や椅子を並べて、「コンパクトなdynabookの学習用端末なら、教科書やノートと一緒に机に置いてはみ出さず、落下の危険が少ない!」という旨をアピールしていた。
同社や他のメーカーに話を聞くと、義務教育課程における学習用端末の故障で一番多い原因が「机からの落下」だという。Dynabookの学習用端末は本体やキーボードドッグの底面に滑り止め素材が貼られており、滑り落ちにくい。故障のリスクを軽減していることも、同社の学習用端末の強みということだ。
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●日本HP:PC本体だけでなくビデオバーや大判プリンタも展示
日本HPのブースでは、同社が展開しているさまざまなChromebookやChromebook Plusを中心に、よりハイスペックなCopilot+ PCまで、数多くのPCを展示していた。
加えて、「Google Meet」「Microsoft Teams」といったビデオ会議サービスをより快適に使えるPolyブランドのUSBビデオバーや、A0サイズの印刷に対応する大判インクジェットプリンタの展示も行われていた。展示されていた大判インクジェットプリンタはスキャナ機能も備えた複合機であり、実際に多くの学校で導入されているという。
ある意味で、日本HPの“総合力”をアピールする展示となっていた
●レノボ・ジャパン:鉛筆書き込みOKな学習用端末やワークステーションを展示
レノボ・ジャパンは、鉛筆で画面に書き込める学習用端末を中心に、さまざまなPCやソリューションの展示を行っていた。
印象的だったのが、ハイエンドワークステーション「ThinkStation P7」のデモ展示だ。
学習用端末はスペックが必要最小限であり、特に中学校以上の課程で本格的な写真/動画をしたり3Dモデルの作成を行ったりする際にパフォーマンス不足が否めない。そのため「パソコン教室にパワフルなPC(ワークステーション)を配備し、必要に応じて使う」というニーズもあるといい、それを踏まえて展示したものと思われる。
●マウスコンピューター:あえてクリエイター/ゲーミングPCを中心に展開
マウスコンピューターは、他のPCメーカーとは異なりクリエイター向けPCやゲーミングPCを中心にブースを展開していた。これはレノボ・ジャパンの段でも触れた通り、パソコン教室へのハイエンドデスクトップPC/ワークステーションの配備ニーズに応えるのはもちろんだが、高等学校課程において「eスポーツ部」を設置する(または設置を検討する)学校が増えていることも踏まえている。
もちろん、学習用端末への導入を想定したChromebookや、教員用端末としての導入を想定したノートPCも展示していた。
少しユニークだったのが、液晶ディスプレイのデモだ。同社は傘下にディスプレイブランドの「iiyama」がある。文部科学省が提示した「令和7年度以降の学校におけるICT環境の整備方針及び学校のICT環境整備3か年計画」では、教職員の業務用ディスプレイを「1人1台」整備する方針が盛り込まれており、それを踏まえた動きとなっている。
●NECPC:実は自社での展示は“初” Z世代向けの「LAVIE SOL」も訴求
NECパーソナルコンピュータ(NECPC)は、今回初めてEDIXでブースを展開した。「あれ、以前からブースあったよね?」と思ったかもしれないが、実は従来はNEC(日本電気)がブースを展開していた。文教向けを含むNECPCの法人向けPCは、今までNECが販売を担当していたからだ。
ところが2025年4月、NECは法人向けPCの販売業務をNECPCに移管した。規格/開発から販売までをNECPCが一貫して行う体制になったことに伴い、ブースの“主”もNECPCに移ったというわけである。
ブースでは、Z世代が考えたZ世代のためのノートPC「LAVIE SOL」や、裏蓋を外さずにバッテリーを簡単に交換できるChromebook「NEC Chromebook Y4」、NECブランドのカラーレーザープリンタ/複合機や電子ホワイトボードなどが展示されていた。
●サードウェーブ:幅広いPCを展示
サードウェーブのブースでは「AI」「ドローン」「VR」「クリエイティブ」「eスポーツ」といったシーン別にお勧めのPCを訴求していた。
例えば3DプリンターやHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などを絡めつつ、同社が得意とするゲーミングPC「GALLERIAシリーズ」やクリエイター向けPC「raytrekシリーズ」をアピールしたり、校務の効率アップに向けてビジネス向けの「THIRDWAVEシリーズ」のノートPCを提案するという感じだった。
●Google:Chrombookを多数展示しつつ、「Gemini」など自社AIをアピール
Googleのブースでは各種Chromebookに加えて、自社が開発/提供している生成AI「Gemini」やAIサービス「NotebookLM」の教育分野での応用に関するデモが行われていた。
一部のPCメーカーと同じく、Chromebook Plusは教員用端末として訴求していた。一方、学習用端末のChromebookはメーカーはもちろん機種も豊富となって、かなりにぎわっていた。
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