超巨大ブラックホール「PDS456」の想像図。吹き飛ばされるガスを白色で示している(JAXA提供) 東京大などの研究チームは15日、X線天文衛星「XRISM(クリズム)」の観測で、地球から約20億光年離れた銀河の中心にある超巨大ブラックホールから、巨大なガスの塊が「弾丸」のように高速で次々と撃ち出されているのを発見したと発表した。論文は同日、英科学誌ネイチャーに掲載された。
銀河の中心には、巨大なブラックホールが存在。強い重力で物質を吸い込む一方、星の材料になるガスを外側に吹き飛ばし、銀河内の星の形成に影響を与えていると考えられているが、具体的にはよく分かっていなかった。
東大の萩野浩一助教と福岡教育大の水本岬希講師らは、約20億光年先の銀河の中心にあり、太陽の数億倍の質量を持つ超巨大ブラックホール「PDS456」をクリズムで観測。ブラックホール周囲のガスの速度や構造を詳しく調べた。
従来の理論モデルでは、ガスはなだらかに吹き出していると考えられてきたが、観測により、ガスは全長20億〜120億キロの巨大な塊となって全方向に向けて次々と撃ち出されていることが判明。1年間に太陽60〜300個分に相当するガスを吹き飛ばしていることも分かった。
萩野助教は「エネルギーは予想外に大きく、従来の理論モデルでは説明できない」と指摘。観測された「弾丸」が出ているのはごくわずかな期間に限られている可能性などを示唆した。