アマミノクロウサギ=2022年9月、鹿児島県奄美市 鹿児島県・奄美大島と徳之島だけに生息する特別天然記念物アマミノクロウサギは、普通のウサギより成熟速度が5倍遅いことが、岡山理科大(岡山市)と東京大の研究チームの分析で分かった。餌や天敵が少ない島特有の環境に適応した結果と考えられるが、絶滅リスクを高める要因にもなっているという。論文は4月、日本哺乳類学会が発行する国際誌の電子版に掲載された。
アマミノクロウサギは体長約40〜50センチ。環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されており、生息数は奄美大島で2000〜4800頭、徳之島で約200頭と推定される。
研究チームは、国立科学博物館や北九州市立自然史・歴史博物館に保管されている計約260頭の標本を観察し、生殖器の状態と成長過程などを詳しく分析。うち31頭の骨を切断し、木の年輪のように1年ごとに刻まれるとされる「成長停止線」の数を調べた。
その結果、1年以内で成獣になる本州のノウサギと比べて、アマミノクロウサギは成長停止線が多く、成獣になりたての個体では5本確認された。子ウサギの骨にも成長停止線があり、研究チームは5年ほどかけて成長すると判断した。
こうした特徴は、ハブ以外に天敵のいない島の特殊な環境下が影響しているという。岡山理科大の林昭次准教授は、出産する子の数が少ない特徴も合わせて「成長を遅くして、島内の限られた餌を食い尽くさないようにしたのではないか」と指摘する。
その上で、「成長が遅い上に子を産む回数が少ないと、生息数が一度減少したら回復が難しくなる。今後も保護する必要がある」と懸念を示した。