季節は教科書通りには進まない 過去には北日本でも沖縄より早い梅雨入りがあった

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2025年05月16日 15:09  日本気象協会

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日本気象協会

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今日16日は、九州南部で全国トップを切って梅雨入りとなりました。太平洋高気圧が沖縄を通り越して北へ張り出し、梅雨前線は本州付近まで北上、沖縄や奄美よりも早い梅雨入りです。過去にもこうした事例はあり、1963年(昭和38年)には、奄美や九州南部〜北陸・東北南部にかけての広範囲で梅雨入りした後に、沖縄が梅雨入りしたこともあります。同年1月頃は、38豪雪として北陸を中心に記録的な大雪になり後世に語り継がれている年でもあります。まだ、梅雨入りしていない地域の方々も、大雨対策は早めに計画的に行いましょう。

1963年 梅雨入りの確定値 沖縄の梅雨入りは東北南部よりも遅かった

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1963年の梅雨入りの確定値をみてみましょう。

図のように、梅雨入りの発表の先陣を切ったのは5月4日ごろの東海地方。次いで5月6日ごろの関東甲信地方、5月8日ごろの中国地方、5月11日ごろの奄美地方、その後2週間程期間があいて、5月28日ごろの九州南部に続き、5月29日ごろには北陸地方、6月3日ごろには東北南部で梅雨入りとなりました。同年の沖縄地方の梅雨入りは6月4日ごろですから、多くの地方の梅雨入りは沖縄地方より早かったことになります。

1963年の5月は、太平洋高気圧の北への張り出しが異例の強さで、梅雨前線が沖縄を通り越して一気に本州付近まで北上、沖縄地方より早く梅雨入りした地方が続出したものと思われます。

1963年 9月の確定値でも梅雨入りが特定されなかった近畿と四国

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梅雨の時期の検討は、気象庁の予報官にとって最大の憂鬱と称されることもあります。
今回取り上げている1963年は、9月に発表される確定値で近畿地方と四国地方で梅雨入りが特定できないとされました。1951年からの全国の統計(確定値)では、後にも先にもこの2例のみです。

気象庁の現状の運用ルールでは、後日実況の全体像を俯瞰、じっくり精査して確定値で日にちを特定できないとされた年であっても、速報段階では、必ず日にちを決めることが求められているのです。

そこには、自然の一部である人間が、自然現象に予報段階で必ず線引きすることを求められる難しさが常にあります。

梅雨入りの動向を左右する「太平洋高気圧」北上して沖縄を通り越す

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図のピンク色は、上空の太平洋高気圧の領域(高度5880m以上)を示しており、北上して既に沖縄を通り越しています。この北側には梅雨前線が東西に延び、今夜から〜17日にかけては、北陸の石川県能登地方でも、警報級の大雨となる可能性が出ています。その後も、晴れ間の広がる日はありますが、梅雨のはしりのような天気が多く、梅雨入りが例年より早まる可能性もあります。

近年は、梅雨入り前でも、短時間強雨などの大雨が頻発しています。本格的な雨のシーズンに入る前に、大雨への対策は早めに計画的に行いましょう。

1963年(昭和38年)という年 1月の北陸を中心とした38豪雪

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1962年度の冬の期間(1962年12月〜1963年2月)は、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常年でした。ところが、1月を中心に負の北極振動が強まり、後世に語り継がれる記録的な大雪となりました。期間中の最深積雪は福井で1月31日に213cm、金沢で1月27日に181cm、富山で1月26日に186cm、高田で1月30日に143cmを記録。期間降雪量と歴代ランキングは、福井で589cm・3位、金沢で589cm・2位、富山で631cm・6位など記録的な大雪となりその影響は甚大となりました。

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