ローソンが「大きなおにぎり」の販売を強化している。以前はエリアごとに開発していたが、現在は本社主導で開発を進め、店舗共通の定番品として展開。2024年の販売個数は前年比で8割増と好調だった。
【画像】ローソンの大きなおにぎり、4月末に発売した新商品(計5枚)
近年ではコンビニ各社でおにぎりの巨大化が進んでいるが、ローソンが好調の要因はどこにあるのか。おにぎりの開発担当を務めるデリカ・厨房部、シニアマーチャンダイザーの内田恵美氏に開発の経緯と売れ行きについて聞いた。
●担当者が話す「好調の要因」
ローソンは現在「大きなおにぎり 鮭」と「大きなおにぎり シーチキンマヨネーズ」の2品を年間の定番商品とし、3月には「沢庵としそわかめ」と「豚焼肉マヨネーズ」の2品を追加投入した。2024年におけるシリーズ品の販売個数は前年比で8割増。新商品を投入した3月単体の販売個数は前年同月比6割増と、近年の売れ行きは好調だという。
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「通常のおにぎり2個だと少し多いものの、1個だと少ないという量的なニーズがあったのだと思います。昨今の物価高も影響しているかもしれません。その他、タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する消費者が増える中、食事を簡単に済ませつつもしっかりと満足感を得たいという消費者のニーズもつかめたと考えられます」(内田氏、以下同)
通常品の「手巻おにぎり 熟成紅鮭」は203円、「大きなおにぎり 鮭」は279円と価格は1.4倍。しかしカロリーは2倍弱と、コスパは良い。内田氏が話すような背景からか、コンビニ業界では一回り大きいおにぎりの投入が相次いでいる。ファミリーマートは2023年7月に「大きなおむすび」を発売。セブンも通常品より一回り大きい「一膳御飯おむすび」を販売している。
●「ワンコインランチ」からのシフトが進んだか
大サイズ品の好調を背景に、ローソンは開発を強化。同様の商品は2010年代以前から展開していたが、本社での開発に切り替えた。
「以前から各エリアで独自の商品を展開していたのですが、2024年から本社での開発に切り替えました。2022年に発売した『具!おにぎり』の販売が順調だったこともあり、大きいサイズ品のニーズに応えようと考えたのです」
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「具!おにぎり」はサンドイッチのような構造で具を挟んだおにぎりシリーズのことだ。中身の具が外から見える商品で、価格は300円を超える。値は張るが、だからこそ従来品への影響はないといい、すみ分けができている。
近年における大サイズ品の好調は物価高も影響していそうだ。農林水産省が公表する1世帯当たりの消費額を振り返ると、外食は2018年以降にコロナ禍も相まって減少した一方、中食需要は伸びている。特に「おにぎり」の支出額は2023年が2018年比で3割増と、変化が著しい。
物価高でもはやワンコインランチはほぼ死語となり、外食はコロナ禍以降1000円時代に突入した。節約志向が高まる中、外食から大きいサイズのおにぎりへのシフトが進んだと考えられる。
●「弁当」とはカニバらないのか
大きなおにぎりに話を戻そう。同商品はサイズが大きい分、男性客比率が高まる。一方で、購入の組み合わせは通常品と変わらないという。
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「従来のおにぎりと比較すると、30〜50代男性が増え、男女比率は10%高まる傾向がみられます。組み合わせは従来品と同様、おにぎり2個を購入したり、『からあげクン』などのカウンターフーズと購入したりする方が多いです。男性の中にはパンと買う方もいらっしゃいます」
大きなおにぎりの鮭とシーチキン、あるいは鮭とからあげクンの組み合わせで500円ほど。カップ麺と合わせれば500円以下に抑えられる。ワンコインが死滅しつつある外食や弁当よりは安い。
とはいえ、大サイズ品の投入による弁当販売への影響はないという。弁当は「しっかり食べたいニーズ」をつかむ一方、大きなおにぎりは手軽ながらもお腹いっぱいに食べたいニーズに応えた商品であり、それぞれニーズは異なると内田氏は話す。
4月29日には「大きなおにぎり チャーハン」、5月13日には「大きなおにぎり しば漬けしそひじき」を発売した。両者とも海苔がない混ぜ飯タイプだ。以前に発売した混ぜ飯系おにぎりは女性客からの支持が高く、今後も強化する方針だとしている。ファミリーマートでも2025年に海苔なしのおにぎりを強化する方針で、巨大化に加え、混ぜ飯系もコンビニおにぎりのトレンドといえるかもしれない。
消費支出に占める食費の割合を表すエンゲル係数は近年急上昇している。高度成長期から減少し続け、2000年代のデフレ経済下では25%を下回ったが、2024年は28.0%。1982年以来の水準に戻った。
外食の価格相場は下がりそうになく、節約志向が続く中で大きなおにぎりは今後も好調に推移しそうだ。おにぎりの巨大化が進むコンビニ業界で、今後どのような新商品が生まれるのか注目したい。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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