遺族に聞こえる声で「くっさ!」、遺品整理で見つかったお金を横領…特殊清掃員が明かす“悪質業者の実態”

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2025年05月18日 09:01  日刊SPA!

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特殊清掃の現場。画像提供:ブルークリーン
 孤独死や事件、事故などが起きた現場を清掃する「特殊清掃」だが、素行不良の業者が遺族に対して絶対に言ってはいけない失礼な言葉を発したり、遺品から現金や貴重品を横領するなどの悪質な行為が問題視されている。
 都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに特殊清掃業者としてあるまじき行為について詳しい話を聞いた。

◆遺族にも聞こえる声で「くっさ!」

 特殊清掃は遺族と向き合う仕事でもあるため、従業員の礼儀やマナーの教育を徹底しているという。

「我々に依頼する方の多くが、身内を亡くしたばかりです。失礼な対応を取らないように教育しています。

 見積もりの段階では様々な業者が現場を見にくるのですが、他の業者が大きい声で『くっさ!』と言っていたことがあります。外にいる我々とご遺族にまで聞こえてしまっていたので、弊社ではそのようなことを絶対に言わないというマニュアルを作っています」

◆現場で見つかったお金を懐に入れる業者も

 遺品整理を頼まれることも多く、しっかりと従業員を教育しないと間違った行動につながることがある。

「現場の品を『すべて処分してくれ』みたいな形で依頼を受けた場合、すべてゴミ袋に入れていくという作業になるのですが、依頼主に返さなくてはいけない品物もあるんです。

 捨てようが何しようがうちの自由でしょ、みたいな考え方をする人も一定数いますが、そういう考えの人には会社として注意しないといけないと思っています」

 たとえば、現金が見つかって山分けするのが特殊清掃業界ではよくある話のようだ。

「金庫から10万円出てきました、みたいなことって結構あるんですよ。本来だと依頼主に相談しないといけません。もちろん、現金はそっくりそのままお返ししなくてはなりませんし、貴金属であれば返却をするか、買取の場合はいくらになりますと見積もりを出します。基本的に現場にある物は我々の物ではないんです。にもかかわらず、出てきたお金などを懐に入れてしまうといった業者も存在していることは事実です」

◆“遺品は自分たちの物ではない”にもかかわらず…

 ブルークリーン株式会社では、判断が個人に委ねられないように、様々な起こりうる事象について細かくマニュアル化をしているようだ。

「仕分け方マニュアルというのを作っています。『ぜんぶ捨てて大丈夫』と言われても絶対に捨ててはいけないリストってやつですね。主には現金、有価証券とかギフト券、何かの契約書や印鑑です。銀行のカードや貴金属もその類です。もし故意に貴金属などをポケットに入れていた従業員がいたら、規定に沿って処罰するというところまでマニュアル化しています。幸いなことにうちの会社にはそういったトラブルを起こした人はいません」

 しかし、何の悪気もなくマニュアル違反を犯してしまうスタッフも過去にはいたという。

「前の現場で全て処分していいと言われて、処分してもいいリストの中に入っていたペンチや金槌を処分せずに自分のものにしてしまっていたスタッフがいました。これは綺麗だし捨てるのがもったいないから次の現場で使おうみたいな。本人的には結局は処分するものだし、金になるようなものじゃないからもらっても問題ないと思ったのでしょう。

 でも本来は、その工具もこちらで何か利用する場合は、買取対象となります。大前提として忘れてはいけないのは、遺品は自分たちの物ではない。ご家族様、ご遺族様の所有物を片付けることを代行しているということです」

◆素行に気をつけて採用してもすぐに辞めてしまう人が多い

 間違った行動をする従業員を雇わないよう、面接にも気を遣っているようだ。

「基本的には誠実さが感じられない方とか、話していて様子がおかしい方は採用を見送ることが多いですね。あと、履歴書の空白期間が長い人にも注意しています。ただ単に無職期間が長かっただけならいいのですが、よくよく話を聞いてみると、過去に盗難やら強盗で逮捕されたことがあるのではないか……という疑惑が生まれたことも。犯罪歴もきちんと書いてくれれば、こちらも向き合って話を聞けるのですが、書かずに誤魔化す人が多いので」

 貴重品を取り扱う仕事であるため、疑わしい人は採用を見送ることが多い。また、採用してもすぐ辞めてしまう人も少なくないという。

「時代にそぐわない考え方をしているかもしれないですけど、仕事を始めた以上は責任を持って働いてもらいたいなと思います。特殊清掃ってかなり稼げそうな仕事に思えるかもしれませんが、我々は法人化をして、従業員の給与体系もしっかり設定しているので、『今月は売り上げが良かったから日当1万増やしておくよ』みたいなことはできないんですよ。賞与って形で、のちに還元したりはできますけど。だから、思ったよりも稼げないと感じて辞めていく人は多いです。仕事の量もムラがありますし、ネットで噂されているほど稼げる業界ではないと思います」

◆防護服や防毒マスクの重要性を理解していないスタッフ

 現場でいちばんの問題は、“防護服や防毒マスクの重要さを理解していないこと”なのだとか。

「同業他社と見積もりのタイミングが被ることがありますが、防護服や防毒マスクを装着せずに現場へ入っていく方々を見かけます。状況が分からない中、生身で現場に踏み入ることが、どれだけ危険な行為か認識されていないように感じます。

 そのような業者を見ると、危機感やリスクに対する意識が低いのでは?と疑問に思ってしまいます。お客様からも『前の業者さんは防護服を着てなかったけど大丈夫なの?』と聞かれることもありますが、『大丈夫じゃないですよ』って答えてます。会社の教育の仕方が悪い証拠ですし、たまに代表者自身が防護服を着ていない場合もあるので」

 また、快適さを求めるあまり防護服や防毒マスクを外すスタッフも多いという。

「夏場の防護服って本当に暑いんですよ。まあ着てなくても暑いんですけど。ただ、暑いからラクになりたいという理由で防護服を着ないで防毒マスクも外して作業するスタッフがいる。口うるさく言っているんで、最近は少なくなりつつはあるんですが。

 防護服や防毒マスクをしなきゃいけない理由って、感染症や安全対策だけではないんですよ。もちろん、感染症に罹って仕事に穴を開けたなんてもってのほかなんですが。それ以外に、防毒マスクをしていると外の匂いを全く感じなくなるので、外した時に現場にどのくらい臭いが残っているかをまともな鼻の感覚でチェックできるんです。

 特殊清掃の現場は、防護服と防毒マスクさえつけていればどんな人でも入っていけます。厳しい仕事ではありますが、興味がある方は門を叩いてみてください」

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦

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