フランスで開催中の第78回カンヌ映画祭で、最高賞パルムドールを争うコンペティション部門に出品された、早川千絵監督(48)の新作「ルノワール」(6月20日公開)の公式上映が17日、行われた。会場のグラン・リュミエールの約2300席は満席となり、エンドロールでは約6分間のスタンディングオベーションが起きた。
12歳でカンヌ映画祭に初参加した主演の鈴木唯は、女優賞を受賞した場合は日本人初、主要賞においても、2004年(平16)に「誰も知らない」(是枝裕和監督)で、当時14歳で男優賞を受賞した柳楽優弥を抜き、史上最年少受賞の期待がかかる。レッドカーペットを歩く直前、鈴木は高揚感を抑えきれず跳びはねる、子供らしい一面も見せつつ、満面の笑みで両手を振りながら歩き、次々と呼びかけるメディアの声に堂々と対応した。
公式上映後、日本メディアの囲み取材に応じ「私は、俳優を始めて、たった2年でカンヌに行けてしまい、びっくりしています」と率直な思いを口にした。そして「自分が想像していた以上に、観客の皆さんがワァーと反応してくれたり、『ユイ』って声をかけてくれたり(今までに自分が)見たことがないぐらいの数の人に映画を見てもらえて、すごくうれしかったです」と笑み。「経験したことがないことばかりで、びっくりしたけど、あ〜、めっちゃくちゃうれしいなぁって体の底から感じました」と喜んだ。
早川監督は、22年に長編初監督作「PLAN 75」が、同映画祭ある視点部門に出品され、新人監督賞「カメラ・ドール」受賞こそならなかったが、同賞に準ずる監督に授与されるスペシャルメンションを授与された。日本映画のコンペ部門への出品は、役所広司(69)が男優賞を受賞した「PERFECT DAYS」(ヴィム・ヴェンダース監督)、坂元裕二氏(57)が脚本賞を受賞した「怪物」が出品された23年以来2年ぶり。カンヌ映画祭の会場で最も大きい、グラン・リュミエールで上映されたことに「映画祭の一番大きいリュミエールで上映するのは初めてでしたが、場内の熱気が段違いで、胸が一杯になりました」と感無量の思いを口にした。
長編映画2作目で、連続でのカンヌ映画祭出品となった早川監督は、18年に是枝裕和監督(62)の「万引き家族」が受賞して以来の、パルムドール受賞を目指す。「海外のメディアの取材を受けた中で『この映画はいろいろなエピソードがあって、点がどんどんつながっていき、全体像が見えてくる。そういったところが、印象派の絵画のようだ』とおっしゃっていただいた。面白いなと感じましたね」とフランスでの反応を語った。
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鈴木については「子どもに演出をするのは難しいだろうなと覚悟を持って挑んだのですが、唯ちゃんは何も言わなくても演技をしてくれて、監督としては非常に楽でした」と撮影を振り返った。そして「どうやったら、こんな風にできるんだろうなって思うことばかり。唯ちゃんさまさまでした」と、鈴木の柔軟さと高い演技力に感謝した。
「ルノワール」は、日本がバブル経済真っただ中だった80年代後半の夏を舞台に、闘病中の父と仕事に追われる母と暮らす11歳の少女・沖田フキを主人公に物語を展開。マイペースで想像力豊かなフキは、空想にふけりながら、それぞれに事情を抱えた大人たちと触れ合う。子供特有の感情を細やかに描写するとともに、フキが関わる大人たちの人生の、ままならなさや人間関係の哀感を温かなまなざしとユーモアを持って描き出す。高齢化社会が深刻化し、75歳以上の高齢者が自ら生死を選択できる制度「プラン75」が施行された、近未来の日本を描いた「PLAN 75」とは、ひと味違った作品だ。
鈴木が、役柄と同じ当時11歳で多数の候補者の中からオーディションで主演に大抜てき。フキの母詩子を石田ひかり(52)、闘病中の父圭司をリリー・フランキー(61)が演じた。フキが出会う大人たちを中島歩(36)、「PLAN 75」に引き続き河合優実(24)、さらに坂東龍汰(27)と、各年代の実力派俳優が演じた。日本、フランス、シンガポール、フィリピン、インドネシアの国際共同製作で、24年7〜9月に国内、同11月には海外で撮影が行われた。
◆「ルノワール」1980年代後半のある夏。11歳の沖田フキ(鈴木唯)は、両親と3人で郊外の家に暮らしている。時には大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性を持ち、得意の想像力を膨らませながら自由気ままに過ごしていた。時々、垣間見る大人の世界は刺激的だけどなんだか滑稽で、フキは楽しくて仕方ない。だが、闘病中の父圭司(リリー・フランキー)と仕事に追われる母詩子(石田ひかり)との間には、いつしか大きな溝が生まれていき、フキの日常もいや応なしに揺らいでいく。
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