
100円ショップとプロ用の水彩絵の具、もちろん違うのだろうけれど、実際のところどんな違いがあるのだろう? そんな疑問を、同じ紙に同じ絵を描くことで比べてみたという投稿が話題になりました。
「100円ショップの水彩絵の具とプロ用の水彩絵の具、違いは何か?というお問合せがあり、品質がさすがに違うだろうとは思いつつ、描き味なども違うのかな、と疑問に思い、描き比べてみました。W&Nのプロフェッショナル水彩紙に上はW&Nの絵の具、下はセリアの絵の具、セリアの筆で描きました。」
比べてみたのは、水彩画教室なども開催している日本水彩画会会員の画家「小野月世✿」(@tsukiyo_ono)さんです。100円ショップの絵の具は12色入りで110円(驚きの安さ…)。一方、プロ用絵の具は「ウィンザー&ニュートン」(W&N)の絵の具で、セリアの約6倍の価格です。
二つの絵の具を使って、W&Nのプロフェッショナル水彩紙に描きました。完成した薔薇の絵は、W&Nが色の深みがありますが、セリアも淡い色合いで美しいです。
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「弘法筆を選ばずといいますが、どちらも別の雰囲気があって好きです。」
「どちらも素敵 よーーく見ると下の方(セリア)の葉っぱに苦労が感じられます おもしろい試みですね」
「全体の絵を見てしまうと、上手さに惑わされてしまうので、例えば画面の左端四分の一ぐらいだけ見えるように他を隠すと、絵具自体の違いがよく見えますね。よいもの見せていただきました。」
描き比べてみたプロの感想は?
小野さんは描き比べてみた感想も投稿しています。
「描いてみて明らかに違ったのは筆に含ませてパレットで溶いた時の含み具合。セリアのはベタついて伸び難い。均一に溶かすのにしばらく混ぜ混ぜしないとムラになる。色が薄い。これらは顔料に混ぜるバインダーによるものでしょう。メーカーによって混ぜ物は含有量など様々ですが、何が混ざってるのかな〜」
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「紙に置いた時、筆から離れる感じもスッとはいかず、ちょっと筆で塗り拡げる感じ。なので筆跡が残りやすい。これは私の描き方では上手くいかないけれど、仕上がりが薄い感じで薄〜く伸ばす、またはむしろ厚塗りでベタベタと重ねて描くならそれはそれでなんとかなるかもしれない。水彩ぽいのはできる」
「見た感じでは正直何の絵の具を使ったとか見分けるのは難しいですね。ただ、比較すると明らかにプロ用の方が描きやすいし発色に深みがでます。あとは品質の問題ですね。のちのち変色、退色すると困る場合はプロ用を使いましょう。水彩を気軽にお試しで楽しまれるならこれもアリかな、と思いました」
「オマケですが、同時に使ったセリアの筆は意外と良かったです。ナイロン筆ですが先がまとまりやすく、描いていてバサつかないです。ずっと使うと穂先が痛むのが早いかもしれませんが、平筆も丸筆も消耗品として持っていても損はないかも。3本で100円ですからこれは凄い」
小野さんは画材など絵に関することを語る動画配信「月世の部屋」を、不定期で月に1回おこなっています。その質問箱に100円ショップとプロ用絵の具の違いについて質問があったことから今回の実験になりました。
最終的な回答として、「値段が有り得ないくらい安いので、顔料などの品質の違いがあるのは予想していましたが、描きにくさもある事がわかりました。初心者が入門に使いたいと思うかもしれませんが、慣れるのにやはり練習が必要かと思います」とし、使い分けるなら「楽しみで描くぶんにはどちらでも構いませんが、長く保存する、販売する、等の必要がある場合はやはりプロ用を使うべきでしょう」とのこと。
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描きやすさに違いが出ることについて「絵の具には顔料系と染料系があり、顔料は水に溶けないので、接着剤代わりのアラビアガムのようなバインダーを混ぜてあります。セリアはおそらく染料系で、染料系は水に溶けているので、体質顔料という無色の顔料を染めて絵の具っぽくしてあります。セリアの絵の具が描きづらかったのは混ぜてある体質顔料と糊分が水に溶けづらいものだったようです」と話しています。
また、描く用紙によっても違った結果になりそうだとも。「どんなものでも絵は描けますが、自分の描き方に合った画材を使われるのが、上達の近道かと思います」とのことでした。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・太田 浩子)