テレビや動画では人気コンテンツだが……老舗雑誌『鉄道ジャーナル』休刊、原因は鉄道ファンのあり方の変化?

0

2025年05月24日 08:00  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

『鉄道ジャーナル2025年06月号』(成美堂出版)
■鉄道ファン減少も関係?

 1967年の創刊以来、58年にわたって刊行され続けてきた老舗の鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」が、2025年6月号をもって休刊した。「鉄道ジャーナル」は、「鉄道ピクトリアル」「鉄道ファン」と並ぶいわゆる“三大鉄道雑誌”の一つである。紙が強いと考えられていた趣味系の雑誌、しかも趣味のなかでも熱狂的なファンが多い鉄道というジャンルの雑誌の休刊は、出版業界全体に大きな衝撃を与えた。


 その一方で、鉄道趣味の衰退を指摘する声もある。2010年に日本経済新聞が掲載した野村総合研究所の研究員のコメントでは、鉄道ファンは150万〜200万人ほどと言われていた。これはライトなファンを含めた数字であり、中心となる鉄道マニアは約2万人という。2000年代には漫画『鉄子の旅』がベストセラーとなり、一般層にも鉄道の魅力が浸透し、鉄道趣味を公言するアイドルや芸能人もクローズアップされた時代であった。


 それから15年経った2025年、最新の統計データは見当たらなかったが、当時よりファンが減っているのは間違いなさそうである。というのも、鉄道がじわじわと利用しにくい存在になっているためだ。特に、熱狂的なファンが多く愛用していた青春18きっぷは、システムが変更されたことによって、使いにくい切符になった。ローカル線を旅したり、乗りつぶしをするなどの“乗り鉄”がやりにくくなってしまったのである。


 そんなローカル線も2010年以降、廃止されたり、災害で運休したままになっている路線が目立つ。『鉄子の旅』の案内人であった横見浩彦氏が愛好した歴史があって趣もある木造駅舎は、鉄道会社の合理化の一環で、簡易な駅舎に改築されつつある。JR北海道では、資金難のため、高速運転を目指していたキハ285系気動車の開発が中止された。そしてコロナ禍での鉄道会社の経営難によって、合理化が一層進んだ。


■鉄道の需要は依然として高いものの……

  鉄道ファンにとっては寂しい話題が相次いでいるなか、寝台特急サンライズ出雲・瀬戸のチケットはプラチナチケットとなっている。また、富裕層やインバウンド観光客を狙った豪華仕様の列車などは運行されている。しかし、誰でも気軽に利用できる列車が数を減らしているのは残念である。


  鉄道ファンの在り方も様変わりした。鉄道旅の魅力を動画で発信するYouTuberが人気を得ている。鉄道ファンの情報入手先も、雑誌からネットに変わりつつある。臨時列車の運行情報などは、真っ先にネット上で共有されているが、速報性では紙媒体では勝てないだろう。鉄道雑誌はファンが写真を投稿する場としても機能していたが、そんな発表の場もメインはSNSに移ってしまった。あらゆる趣味で世代交代が進み、楽しみ方などを含めて変化していることを、如実に表しているかもしれない。



    ニュース設定