サッカー日本代表が大勝したインドネシア戦 際立ったデータを残した新戦力がいる

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2025年06月13日 18:10  webスポルティーバ

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「勝ったことはもちろんですが、常に選手たちが積極的に、アグレッシブにゴールに向かって行くプレーを見せてくれました。局面局面で、激しく、厳しく、粘り強くというところも出して、勝利につなげてくれたと思っています」

 試合後の記者会見でそう語ったのは森保一監督だった。

 今予選初の黒星を喫したオーストラリア戦から中4日。日本は最終節でインドネシアをホームに迎え、6−0で圧勝した。新しいメンバーを多数招集し、W杯本番に向けて選手層に厚みを持たせることを今シリーズの主な目的としていただけに、指揮官が満足そうに試合を振り返るのも当然と言えるだろう。

 一方、第7節からインドネシアを率いるパトリック・クライファート監督は「最初の数分はよかったが、昨日(試合前日)の会見でも話したように、日本は絶対的に質が高いチームで、個人としても集団としてもW杯レベル。結果は残念なものになったが、監督としての私も含めてこういう試合から我々は学ぶ必要がる」と完敗を認め、すでに出場を決めている10月のアジア4次予選(プレーオフ)を見据えていた。

【思いどおりに敵陣に前進】

 この試合を振り返ってみると、確かにクライファート監督が語ったように、インドネシアが日本に食い下がったのは試合開始から10分程度に限られ、11分に町野修斗がヘディングシュートを放ってからは、日本が一方的に攻撃を仕掛け続ける展開が続いた。

 インドネシアの布陣は5−4−1。基本的には、前節で日本に勝利したオーストラリアと同様の陣形で日本の攻撃を封じにかかったが、個々のプレーの質やチームとしての組織力は、オーストラリアのそれとは大きく異なっていた。4次予選出場を確定させていたことも影響したのかもしれないが、それを差し引いたとしても、この日のインドネシアには集中力を欠いたプレーが散見され、守備組織は壊滅的だった。

 たとえば、オーストラリアは日本のボランチを経由するビルドアップを封じるべく、5人で日本のダブルボランチを囲み、徹底的に中央を絞って縦パスを通させなかった。しかしこの日のインドネシアの場合、5−4−1は単なるかたちだけのもので、日本のビルドアップをどのようにして封じるかといった具体策を整理できていないように見えた。

 実際、1トップの10番はアリバイ的な守備しか行なわず、2列目の4人も横に並んで網を張っただけ。それにより、この試合で日本のボランチを務めた遠藤航と佐野海舟は序盤から自由にボールを受けてビルドアップに参加し、中央と左右両サイドを使い分けながら、ほぼ思いどおりに敵陣に前進することができた。

 日本のビルドアップで特徴的だったのは、遠藤が最終ラインに下りて4バックを形成し、佐野(海)が前に出て4−3−3の陣形に変化するシーンが時折見られたことだった。これは昨年10月15日のオーストラリア戦で見せたかたちと同じで、そのひと工夫だけでインドネシアの前線からの圧力を回避することに成功。佐野(海)は、相手10番の前後左右を自由に動いてボールを受けられた。

 もっとも、日本が4バックを形成しなくても、日本が前進に苦労することはなかった。インドネシアの2列目の「4」は統率が取れておらず、日本が縦パスを通すのに十分な隙間もあったからだ。インドネシアには前半のうちにふたりの負傷交代を強いられる不運が重なったにせよ、そういった点だけで見ても、日本の勝利はロジカルだった。

 特に、日本は相手の初歩的なミスを見逃さず、早い時間帯に2ゴールを挙げたのが大きかった。最終的に、代表キャップ数の少ない選手が多く出場したなかで6ゴールを奪ったうえ、相手にシュートを1本も打たせずにクリーンシートで勝利したことは、今後に向けてポジティブな材料になっただろう。

【くさびのパスもクロスも多く記録】

 各スタッツも、試合結果を反映したものになった。

 日本のボール支配率は70.9%(AFC公式記録、以下同)。とりわけ前半の立ち上がり15分では83.6%をマークした。シュート数も1試合トータルで22本を記録し、そのうち10本が枠内シュート。パス関連のスタッツを見ても、日本は1試合で645本を数え、成功率も90.4%(敵陣でのパス成功率も85.2%)と、極めて高い数値をたたき出している。

 また、日本がこの試合で打ち込んだ敵陣でのくさびのパスは、前後半合わせて21本を記録。前半終了間際に3失点目を許したインドネシアの集中力が切れてしまったことも影響し、前半の8本から後半は13本に増加させている。クロスボールの供給についても前半に8本、後半が10本と、トータル18本を記録した。

 これらのスタッツだけを見ても、日本が一方的に攻めた試合だったことがわかるが、そのなかで際立っていたのが、1トップを務めた町野のポストプレーだ。日本が記録した敵陣でのくさびのパス21本のうち、町野が受け手となったのは10本。ミドルゾーンで受けた縦パスも含めると、13本もあった。

 この試合における町野は、後半に入って58分にゴールを記録したほか、19分の久保建英のゴールと55分の森下龍矢のゴールをアシストし、1ゴール2アシストの大活躍。それら数字以外の部分でも、ポストプレーヤーとして前線で起点になるなど重要な任務を遂行していた。

 相手のレベルが上がったなかで、町野がどこまで同じクオリティーのプレーができるかは今後の試合で再確認する必要はあるだろうが、ポストプレーも担える1トップとして、上田綺世とのポジション争いにも注目が集まりそうだ。

 その他、この試合では佐野(海)、森下、三戸舜介ら新しい戦力が高いパフォーマンスを披露し、途中出場の細谷真大もゴールを記録。相手の守備の問題はあったにしても、それぞれの選手たちが今後に向けた収穫を手にしたと言える。

【W杯本番への準備はどのように進むのか】

 とはいえ、今回のインドネシア戦によって日本の課題が解消されたかと言えば、そういうわけではない。今予選におけるオーストラリアとの2試合や、ホームでのサウジアラビア戦(3月25日)で証明されたように、一定のレベルの相手との対戦では、なかなか攻撃を機能させることができない問題は、依然として残されたままだ。

 そして最も注目されるのは、来年のW杯本番に向け、森保監督がどのようなチーム戦術で準備を進めるのかという点だ。このまま攻撃的に運用する3−4−2−1を貫くのか、それとも基本布陣を4バックに変更するのか、もしくは前回大会ではジャイアントキリングにつながった守備的3バックに舵を切るのか。オプションを用意するにしても、限られた準備試合のなかでブラッシュアップする必要はある。

 4年前のケースを考えると、今回も本番直前までわからない部分もあるが、少なくとも9月に予定されるメキシコ戦とアメリカ戦は、現状のチーム戦術がどこまで通用しそうなのかを確認するには絶好の機会となるはず。

 選手のパフォーマンスとともに、森保監督の采配とベンチワークは要注目だ。

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