



橘ケンから受け取った賠償金で私たち家族が支えられたのは事実です。この20年間ずっと彼が事故のことを忘れず罪悪感を持ち続けていてくれたことに、私は親近感すら抱きました。だから、このときの言葉に嘘はなかったのです。



一瞬、言葉を失いました。なんと橘ケンは結婚して子どもまでいたのです。そこから私のなかでどす黒い感情が止まらなくなりました。どうしてこの人は私を不幸にしておきながら、幸せになっているの……? 加害者のくせに……!


事故から20年経って橘ケンと再会した私。そのときは本当に恨みという感情はありませんでした。私を見て、震えて、申し訳なさそうにしている彼。私と同じように20年間苦しんでいたんだと思うと、不思議と親近感すら抱いたのです。これからは「加害者」と「被害者」じゃない新しい関係を築いていきたいと思いました。
しかし彼が結婚していて子どももいると聞いた瞬間から、私のなかにどす黒い感情が渦巻くようになってしまったのです。私の身体をこんなふうにしておいて、何ひとりだけ幸せになっているの……? 私は人並みの幸せを手に入れている橘ケンを、再び許せなくなってしまったのです。
【第16話】へ続く。
|
|