
犬と暮らすなら保護犬を—そう考えていた飼い主さんが、よちゃんと出会ったのは2020年の夏。たまたま図書館で読んだ雑誌に、よちゃん出身の保護団体が紹介されていたのがきっかけでした。
しばらくして犬と一緒に暮らせる物件に引っ越し、再び雑誌を読み返した際に、偶然にも同じ保護団体だと気づいたといいます。
「当時、保護犬の存在は何となく知っている程度でした。行き場のない子がたくさんいることを知って『うちでお迎えできたら』と思うようになったんです。また、犬と暮らすならミックス犬(いわゆる雑種犬)を迎えたいとも思っていました。成犬のミックス犬はなかなか声がかからないという話も聞いていたため、犬種にはこだわらず、保護犬・ミックス犬・成犬をお迎えしようと決めてご縁を探しました」
こうして出会った保護団体で、最初は別の子に問い合わせたものの、すでに里親さんが決まっていたそうです。
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「その後、『よく似た性格の犬がいます』と教えていただき、お見合いをすることに。よちゃんは、山で保護された元野犬で、出会ったときにはすでに推定2歳の成犬でした。保護団体さんが里親募集を目的として運営しているカフェにいたので、そこで初対面を果たしました」
よちゃんとのご縁を感じた飼い主さんは、家族の一員として迎えることを決意。こうして、よちゃんと飼い主さん家族はともに新たな暮らしを始めたのです。
動けなかった初日と、少しずつ変わっていった日常
お迎え初日、よちゃんは家にやって来ると、隅っこでじっと固まってしまったといいます。
「保護団体さんが家まで連れてきてくれたのですが、『こんなに動かない子は初めて』と言われるほど。とても怖がりでした」
当初は、早く家に慣れてほしいという思いから試行錯誤した飼い主さん。ところが、よちゃんは心を閉ざしてしまう一方でした。そして、飼い主さんは自分のしていることがよちゃんにとって負担になっていると気づいたといいます。
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「今でこそ散歩大好きですが、当初はとても怖がっていました。それにも関わらず、私は早く散歩に慣れたほうがいいだろうという思いから、何とか外に連れ出していたんです。でも、怖がるよちゃんを見て、無理をさせていたと気づき猛省しました。その後はよちゃんのペースに合わせて、ただ待つ方向に変えました」
また、よちゃんは男性が苦手で、飼い主さんの夫になれるまで半年近くかかったといいます。距離が縮まらず、飼い主さんの夫は落胆する日々を送ったこともーそれも焦らず、待つようにしたことで少しずつ変わっていきました。
「今では、私よりも先に夫を遊びに誘うほど仲良しに。よちゃんには、待つことの大切さを教えてもらいました。“怖がりな犬は大変”と思われてしまうかもしれませんが、時間がかかったところはあったものの、そのほかの面では、手のかからない子だったなと思います」
生活は“よちゃんファースト”へーXをにぎわせたエピソードとは
よちゃんをお迎えしてから、暮らしの中心が少しずつ変わっていったといいます。
「優先順位の1位がよちゃんになりました。どうしても人間側に合わせて暮らしてもらう場面が多いので、せめて散歩や遊びの時間はしっかり確保できるように動いています。よちゃんはいつもかわいらしくて、家庭がより一層、明るくなりました」
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先日、よちゃんはXで大きな注目を集めました。
「よちゃんがくつろいでいるとき、窓から差し込んだ光が虹色になって床に反射し、ちょうどよちゃんのお尻から虹が放出しているように見えることに気づいたんです。その光景があまりにおもしろかったので、思わず写真を撮影。なにげなくXに投稿したところ、多くの反響をいただいて驚きました」
虹色の光は、目隠し窓フィルムに日が当たって、たまたまよちゃんのお尻の位置に当たっていたそう。よちゃんをいつも見守っている飼い主さんだからこそ、気づくことができたといえるでしょう。あたたかく優しい絆を感じるエピソードが生まれました。
「よちゃんはただそこにいただけで、何かしたわけでもないのですが、本当にいつも楽しい気持ちにさせてくれます」
無防備な“変身ポーズ”にほっこり、これからは幸せな日々を
現在、よちゃんは推定6歳。飼い主さんとの時間が積み重なるにつれ、よちゃんは自分の安心できる居場所を見つけていきました。
「お迎えから半年ほど経ったころ、よちゃんがヘソ天をしてくれるようになりました。前片足をピーンと伸ばしたまま仰向けになって爆睡。我が家では“変身ポーズ”と呼んでいます。怖がりだったよちゃんが、無防備な姿を披露してくれことが嬉しかったです。そして、『こんなポーズで寝る犬がいるのか』と笑ってしまいました」
また、よちゃんには室内、室外、問わずするのが好きなことがあるそうでーー。
「目的はよくわからないのですが、よちゃんは“穴掘り”が大好きなんです。外で夢中になってホリホリして、よく泥だらけにー。室内でも、座布団や敷物をよく掘っています」
今でも怖がりなところは変わらないというよちゃん。それでもお迎え当初と比べると、落ち着いて対応できるようになったといいます。
「お迎え当初、焦ってたくさん無理をさせてしまいました。今度は、私たちが頑張る番です。これからは、よちゃんが少しでも楽しく穏やかに暮らすことができるように気を配りたいと思っています」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)