戦後80年に当たり、原爆死没者慰霊碑に供花される天皇、皇后両陛下=19日午後、広島市中区の平和記念公園 天皇、皇后両陛下は19日、広島県入りし、戦後80年に当たり、原爆犠牲者を慰霊された。同県訪問は即位後初めてで、被爆者のほか、若い世代の「伝承者」とも懇談した。
両陛下は羽田空港発の特別機で広島空港(三原市)に到着後、広島市の平和記念公園を訪れた。松井一実市長の先導で原爆死没者慰霊碑の前に進み、白い花束を供えて深々と拝礼した。
続いて、公園内に2022年に開館した被爆遺構展示館を初訪問。被爆した住居跡などの展示を見て、多くの人が亡くなったと説明を受けた天皇陛下は「痛ましいことですね」と述べた。広島平和記念資料館でも、焼けた服や三輪車などの遺品を真剣な表情で見て回った。
資料館では被爆者3人と、伝承者2人の計5人と懇談。14歳の時、飛行機のプロペラ部品工場で被爆し、建物の下敷きになった体験を語った梶本淑子さん(94)=同市=を、陛下は「ご苦労なさいましたね」といたわった。皇后さまは、「戦争は絶対にしてほしくない」と話す梶本さんに「平和は大切ですね」と応じた。
伝承活動とともに、小学校教諭として平和教育にも取り組む庄野愛梨さん(22)=安芸太田町=に陛下は「一番伝えていきたいことはどういうことですか」と尋ねていた。陛下は見学後、石田芳文館長に「被爆の実相を世界に広めていくのはとても大切なことですね」と述べたという。
両陛下の戦後80年に当たっての戦没者慰霊と記憶継承の訪問は、4月の硫黄島(東京都小笠原村)、今月の沖縄県に続き3カ所目。20日は、14年の土砂災害で大きな被害を受けた広島市安佐南区八木地区に足を運び、23年に開館した市豪雨災害伝承館で被災者らと懇談。原爆養護ホーム「矢野おりづる園」も訪れ、帰京する。

原爆死没者慰霊碑に拝礼される天皇、皇后両陛下=19日午後、広島市中区の平和記念公園

広島平和記念資料館を視察される天皇、皇后両陛下=19日午後、広島市中区(代表撮影)

広島平和記念資料館で、被爆者や伝承者と懇談される天皇、皇后両陛下=19日午後、広島市中区(代表撮影)