生まれつき両前脚のない柴犬の春子ちゃん(Instagram/@haru_fuku_taro2022より) 「お散歩行く?」という飼い主さんの問いかけに、全身で喜びを表現する柴犬の春子ちゃん。生まれつき両前脚がない春子ちゃんは、車椅子やカートなども活用しながら、一緒に暮らす柴犬の福ちゃんと共に普段から散歩を楽しんでいる。そんな散歩前に喜んでいる姿をおさめた動画が、987万回再生を超える反響を呼び、「しっぽが行くって言ってる」「全身で表現していて可愛い」「愛おしいです」「感情表現豊かな子ですね」などとコメントが寄せられた。お散歩中の春子ちゃんの様子やほかのワンちゃんとの関係性などについて、飼い主さんに聞いた。
【動画カット】しっぽをブンブン!「散歩に行く」と全身で喜ぶ姿が愛おしい春子ちゃんの散歩の様子も◆お散歩の時間になり大興奮! 生まれつき両前脚のない柴犬・春子ちゃんの可愛らしい姿
――お散歩前とお散歩中、お散歩後のワンちゃんたちの様子を教えてください。
「春ちゃんは両前脚がない分、行動範囲が少ないので、庭でもおトイレを済ませることができます。でも、外の空気や景色が好きなようで、お散歩に連れて行ってほしいと訴えてきます。お散歩時間になるとソワソワして『そろそろ時間ですよ』と鳴いて教えてくれます」
――どのようにお散歩をされるのでしょうか。
「移動手段は、車椅子、カート、自転車などがありますが、降ろしてほしいポイントが近づくと興奮して飛び降りそうになるので気をつけています。降ろしてあげるとすぐに用を済ませるので、とても手間のかからない良い子です。その後、疲れるまで自力で移動して、クン活をしたり穴を掘ってみたりと散歩を楽しんでいます。全力の散歩後は水をおいしそうに飲んで満足しています」
――先住犬の福ちゃんは、春ちゃんを気にかけている様子も見られる?
「福ちゃんはお散歩時間になっても催促することなく、『行こう』と言うと静かに寄ってきます。春ちゃんが天真爛漫の末っ子気質であるのに対し、福ちゃんは控えめで妹思いのお姉さんという感じです。THE柴犬気質のツンデレさんですが、いざという時は妹を守ったりそっと寄り添ったりしてくれるやさしい性格です」
――生まれつき両前脚がない春子ちゃんを、どのような思いで迎え入れたのでしょうか?
「叔父が柴犬ブリーダーで、その娘である従妹から連絡を受けて見に行ったときは、『まだ小さいのに可哀想に…』と初めて見る前脚のない子犬にショックを受けました。でも、『これからこの子はどうなるのか?』『引き取り手がなかったらこの子はどうなるのか?』といった考えが巡りました」
◆「この子を飼ってくれないか?」と従妹から相談も…初対面で前脚のない子犬にショックを受けた
――複雑な気持ちになりますよね。
「私になら安心して任せられるからと、『この子を飼ってくれないか?』と従妹に相談をされました。私の家には先住犬の福ちゃんがいたので迷いましたが、退職して時間の融通がきく母も一緒に助けてくれると言ってくれたので、春ちゃんを迎えることを決心しました」
――春子ちゃんをお迎えしたときの様子を教えてください。
「迎えるにあたり、何に気をつけないといけないのかを考えました。まずは段差をなくしたバリアフリーのケージ。そして、胸をついても痛くないように、フローリングにフカフカのマットや敷物を敷きました」
――トイレなどはどうしているのですか?
「うちに来たときからトイレは外派だったので、時間を決めて外に連れて行きました。平日の日中は仕事をしているので、実家まで春ちゃんを連れて行って母に見てもらっています。あと、水の器や餌箱なども、どのタイプがいいのかを何種類かを試して、今の入れ物に落ち着きました」
◆「できないところを助けてあげる」 両前脚がないからといって制限はしない
――ほかにも何か意識していることはありますか?
「前脚がないからといって制限をするのではなく、できないところを助けてあげるというスタンスで育てているので、無理そうな段差もジャンプして飛び越えますし、胸をつきながら上手に走ることもできますし、散歩も楽しめるようになりました。春ちゃん専用の車椅子も作ったので、行動範囲も増えました。前脚がないだけで、ほかの犬となんら変わりないと思っています」
――福ちゃんと太郎くんが春子ちゃんと初めて会ったときの様子は?
「気が強いオスの性格を持ち合わせる太郎も、愛情たっぷり過保護に育ててきた福ちゃんも、初対面は難なくクリアしました。福ちゃんは春ちゃんの取り扱いに戸惑っていましたが、春ちゃんが戯れることでだんだんと距離が縮まり、ワンプロができるようになるまであまり時間はかかりませんでした。福ちゃんは母のように姉のように一歩引いて控えめに接し、太郎は生前、春ちゃんを孫のように、春ちゃんは太郎をおじいちゃんのように慕っていました」
――動物と生活する中で、「大切にしていること」や「幸せを感じる瞬間」を教えてください。
「大切にしているのは尊重すること。言葉を発しない分、何をしたいのか、どうしたいのか、何を考えているのかをきちんと読み取ってあげることが大切だと思っています。ペットとしての動物は、どうしても受け身でしかないので。楽しそうで幸せそうな顔をしてくれたときに一番幸せを感じます」