10GbE対応ルーターやハブ、無料の管理ツールからOpenWrtベースのWi-Fi 7ルーターまで――「Interop 2025」で最新製品やテクノロジーを見てきた

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2025年06月20日 17:11  ITmedia PC USER

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Interop Tokyo 2025の会場風景

 6月12日から14日まで幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された「Interop Tokyo 2025」は、日本最大級のネットワーク/AI技術に関する展示会だ。その模様を2回に分けてお伝えする。


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 この記事では、Linksys、キオクシア、ティーピーリンクジャパン、ネットギアジャパン、Googleの5社の展示を紹介する。


●Linksys:OpenWrtベースのWi-Fi 7ルーターが約5.5万円で登場


 ネットワーク機器メーカー「Linksys(リンクシス)」のブースで目を引いたのは、黒いボディーのWi-Fi 7ルーター「Velop(ヴェロップ) WRT Pro 7」だ。想定価格は5万4980円で、6月25日の発売を予定している。


 Velop WRT Pro 7は、Wi-Fiルーター向けLinuxディストリビューション「OpenWrt」をベースにしている点が最大の特徴だ。「透明性が最大の特徴です」と、担当者は説明する。


 通信の動作が1から10まで“見える”オープンソースルーターは、セキュリティー意識の高い企業にとっては魅力的に映るかもしれない。またプログラムに詳しい人なら、どういう動作をしているかを確認できる上、コミュニティーの目による監視効果も期待できる。


 興味深いのは、このOpenWrtがLinksysのルーターをベースに約20年前に始まったという歴史だ。それが今回Linksysブランドの製品に“公式”展開されるのは感慨深い。本モデルはSSHログインも可能で、ターミナルからカスタムコマンドを流し込むこともできる。


 担当者は「ChatGPTでコマンドを生成してもらって流し込むこともできますよ」と説明する。例えば子供のWi-Fiを深夜に切りたいといった設定も、AIの助けを借りれば上級者でなくても可能になるというわけだ。


 一方で、従来の一般消費者向け「Velopシリーズ」では、今後展開予定のWi-Fi 7対応モデルが参考展示されていた。スマートフォンアプリで簡単に設定できることが特徴だ。


●キオクシア:宇宙実証からAIソリューションまで、SSDの可能性を広げる


 SSDを始めとするフラッシュストレージで知られる「キオクシア(KIOXIA)」のブースは、「当社のSSDは国際宇宙ステーション(ISS)で使われています」という説明から始まった。意外すぎて、筆者は説明員に思わず聞き返してしまった。


 ISSでは従来、宇宙飛行士が行う実験データの地球への伝送に12時間もかかっていたという。そこで性能の良いPCをISSに設置し、現地でデータ解析を行うことにした。結果、演算時間は6分、伝送時間は2秒にまで短縮されたそうだ。


 こういう過酷な環境では、いわゆる「ミリタリースペック」の製品が使われることが多く、ストレージ(SSD)も同様……と思いきや、採用されたのはキオクシア製の民生品SSDだったという。


 「地上よりも過酷な環境でも、当社製品の丈夫さと安定性が評価されました」と、担当者は胸を張る。確かに、宇宙での実証は最高の品質保証といえるだろう。


 メモリ製造の技術においては、第8世代NAND「BiCS FLASH」の製造方法の展示が興味深かった。従来は1枚のウエハーで作っていたものを、「メモリセル部分」と「制御部分」を別々に製造し、最後に貼り合わせるという。


 「部品ごとに最適な製造条件で作れるので、性能が大幅に向上しました」とのことで、以前はもこうした“重ね合わせ”という発想がなかったようだ。


 さらに注目したいのが、キオクシアが1月に公開したAI関連ソリューション「KIOXIA AiSAQ(アイザック)」だ。


 通常、AIシステムでベクトル検索を行うには高価なGPUと大量のメモリを必要とするが、このソフトウェアを使うと、SSDを使って同様の処理を実現できるという。結果として、消費電力とコストを大幅に削減できる。


 担当者は「RAG(検索拡張生成)を使ったチャットボットなどのAIシステムで、大量のデータから適切な情報を探し出す処理に使えます」と語る。AI時代の新しいアプローチとして注目に値する。


●TP-Link:“無料”で企業ネットワーク管理の常識を変える


 ティーピーリンクジャパン(TP-Link)のブースで強調されていたのは、法人向け製品における“管理無料”≪という特徴だ。


 TP-Linkの法人向け監視(ネットワーク)カメラは、遠隔管理が完全無料となっている。担当者は「例えばレストランチェーンで、大阪や札幌の店舗を東京本社から管理できます。それが無料です」と説明する。他社では月額ライセンス料が必要なのに対し、TP-Linkなら機器代金(と通信料金)だけで使えるということになる。


 カメラの価格も1万〜4万円と競合他社の約半額で、30〜40種類のラインアップから用途に応じて選べる。駐車場にはバレット型で威圧感を演出し、レストランにはドーム型で威圧感を避ける――そんな使い分けも可能だ。


 他の法人向けネットワーク機器も同様に、無料で管理可能だ。ルーター、スイッチ、アクセスポイントの統合管理が無料で行える。不具合箇所の特定はもちろん、再起動、トラフィックの監視、SSIDの作成まで追加料金なしでできるのは大きなメリットだ。管理にかかるデータは、AWS(Amazon Web Services)の日本国内リージョンで行っているという。


 価格競争力と無料管理システムという組み合わせは、特に中小企業にとって魅力的に映るだろう。


●NETGEAR:10Gbps時代の専門特化戦略


 ネットギアジャパン(NETGEAR)では、法人向けネットワークスイッチ/ルーターの製品展開を「IT向け」と「AV(オーディオ/映像)機器向け」で明確に分けていることが特徴だ。ブースの展示も、IT向けとオーディオ向けに分けていた。


 IT向け製品は10Gbpsイーサネット(10GbE)対応製品が中心で、10GbEルーターの他、40ポート対応10GbEハブやWi-Fi 7対応アクセスポイントなどを展示していた。Wi-Fi 7対応かつ10GbE対応のアクセスポイント「WBE750」は、想定価格が20万90円だという。


 IT向け製品コーナーでは、クラウド管理システム「Insight」も紹介していた。機器の状態確認や設定変更、ポート監視、トラフィック確認などをリモートで行える。利用料金は1年目が無料、2年目以降が1台あたり年間2500円となっている。


 「10GbEの導入を検討する企業は、映像系が多いですね」と担当者は語る。確かに、4K/8K映像を扱うようになると、多くの企業で導入されている1000BASE-T(1Gbpsイーサネット)では速度が不足する。編集データをイーサネット上で行う場合、コマ落ちを防ぐためにも高速化は欠かせない。


 そういう意味でも、AV向け製品の展示は興味深いものが多かった。プロAV向けイーサネットスイッチ「SM4310」は、仮想LAN(VLAN)で設定した色分けが、ポートのLEDにも反映される機能を持つ。ソフトウェアで赤に設定すれば、物理ポートのLEDも赤く光る。ケーブルを「赤に挿して」「青に挿して」という指示が可能になるわけだ。


 さらに、このスイッチは非圧縮映像/音声伝送規格「SMPTE ST 2110」の伝送にも対応しており、放送局にも導入できる本格的な仕様だ。


 プロAV専用のWi-Fi 7アクセスポイントも用意されており、コントロールパネルの無線化需要に応えている。


●Google:ChromeOSによる「exe実行禁止」の究極セキュリティー


 グーグル(Google)のブースでは、ChromeOSとChrome Enterpriseの展示が行われていた。中でもChromeOSのセキュリティ機能の説明は印象的だった。


 「ChromeOSにおけるランサムウェア被害はゼロです」と担当者は断言する。その理由はシンプルで、ChromeOSはWindowsの「exeファイル」を一切実行できないからだ。マルウェアもランサムウェアの多くはWindowsで稼働するPCを標的、基本的にexeファイルとして侵入する。それを根本から防げるのだ。


 Googleの公式発表でも、これまでChromeOSでのランサムウェア被害は報告されていない。ただし、ChromeOSにも脆弱(ぜいじゃく)性の報告はあり、ソフトウェア更新によるパッチも行われている。それでも、他のOSと比べて報告数が少ないのは、ChromeOSのアーキテクチャの効果と言えるだろう。


 ChromeOSはコスト面でも魅力がある。CPUは「Core i3」「Ryzen 3」以上、メモリ容量は8GBというスペックでも、Windowsと比べると快適に動作する。管理も楽で、トラブルが起きたら初期化してもらえばいい。Wi-Fiに接続して企業アカウントでログインすれば、IT管理者が設定したポリシーが自動適用される。「初期化して」で済むサポートは、IT管理者の手間を大幅に軽減する。


 文教市場向けというイメージが強いChromeOSだが、企業導入も着実に進んでいる。ロッテは約2600台を一気に導入し、日本郵便はリモートワーク端末として活用しているとのことだ。


 Chrome Enterpriseでは、Chromeブラウザの管理機能を提供している。無料プランである「Chrome Enterprise Core」でも300以上のポリシー設定やURLフィルタリングに対応する。有料プランの「Chrome Enterprise Premium」になると、DLP(データ損失防止)やカテゴリー別フィルタリングなども利用可能だ。


 さらに「Google Agentspace」という新しいソリューションも展示されていた。社内データの横断検索プラットフォームで、Slack/Microsoft Office/Microsoft SharePoint/Salesforceなどと連携可能。出典を必ず明示する仕組みになっており、IDベースのセキュリティで閲覧権限も考慮される。



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