妻の実家は350年続く老舗旅館 「たたむしかない」義父母の本音に広告営業マンの心は揺れた 城崎を愛する人たちの奮闘

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2025年06月21日 07:10  まいどなニュース

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風味豊かな4種類の地ビール ©テレビ大阪

国内外から人気の高い関西の温泉地「城崎温泉」。そんな城崎温泉の賑わいの背景には、地元で代々盛り上げてきた人たちはもちろん、地元以外からやってきた“伴侶”たちの奮闘がありました。

【動画】城崎温泉と老舗旅館に新風を吹き込んだ伴侶たち

広告営業マンから350年続く老舗旅館の社長へ

話を伺ったのは「山本屋」社長で高宮浩之さんと女将の美奈さん。

二人は学生時代に知り合い、卒業後、浩之さんは東京で広告会社の営業マンとして働いていました。一方、「山本屋」の3姉妹の長女だった美奈さんは、京都の旅館に就職。その後結婚します。

美奈さんの実家「山本屋」は、江戸時代に創業し、350年以上続く老舗旅館。目の前には「城崎温泉」のシンボルである柳並木があり、外湯めぐりもしやすい好立地にあります。

そんなある日、「山本屋」に帰省した際に、「継いでくれる人がいないからたたむしかない」という妻の両親の本音を知った浩之さん。「300年も続くこの旅館をたたんでしまっていいのか」と悩んだ末に旅館を継ぐことを決意、1993年に城崎へ移住します。

ピンチを乗り越え、愛され続ける「城崎ビール」。誕生のきっかけは法律改正!

90年代当時は旅行代理店の「宿泊パックツアー」が主流で、城崎温泉でもツアー料金に合わせた部屋・食事を提供していました。他地域からやってきた浩之さんは、どこも似たようなプランになっていることに違和感を覚え、今後の旅館経営にはアピールとなる“個性”が必要だと考えました。

そこで浩之さんが注目したのは・・・「酒税法改正」。世間では「酒税法改正」に伴い小規模施設でもビールが作れるようになり「地ビール」がブームに。城崎温泉の年間観光客100万人という大きなマーケットで面白いものできるのではないかと、「城崎ビール」作りに挑戦することを決めたのです。

まずは「山本屋」の信用を武器に銀行から1億円を借り、アメリカで醸造設備を買い付け、駅前にビール工場を建設。アメリカでスカウトしたビール職人に日本に来てもらい、「城崎」の味を探求しました。「個性」と「万人受け」のバランスが大事な「地ビール」作りは、「地元の食材に合うビール」を目指して試行錯誤を続け、2年がかりで完成!

こだわりのビールは現在4種類。中でも、城崎名物のカニを美味しく食べるために味を調整した「カニビール」は、特にこだわって作ったのだそう。

さらにビールの完成に合わせてアメリカンスタイルの地ビールレストランも開店。観光客だけでなく、地元住民らも駆けつけるほどの賑わいを見せました。また、地元酒店にも商品を置いてもらい、「城崎ビール」の知名度をあげていきました。

順調に進んでいた「城崎ビール」事業ですが、思わぬピンチが訪れます。2004年豊岡地方を襲った台風23号により、城崎入口の川が氾濫。周辺の1万8000棟が浸水被害受け、ビール工場も例外でなく、社員が一時工場に取り残されるほどの大災害となり、機械の損傷も激しく、浩之さんはビール事業を諦めることを考えます。

しかし、取り残され救助された社員だけでなく、街の人たちからの「あれこそ城崎の名物や」と再開を期待する声が上がり、ビール事業の再開を決意!ブームだった「地ビール」が、20年経った今ではブームではなく「クラフトビール」という1つのジャンルとして確立するまでになりました!

今も観光客や地元住民から愛される「城崎ビール」を作った浩之さん。現在「城崎温泉観光協会長」や「かに王国 国王」を務めるほど、城崎温泉になくてはならない存在となっています。

客室稼働率はナント98%に!ピンチをチャンスに変えた若女将の一言とは⁉

続いて、地元以外から迎えた”伴侶”は、大正15年創業の「但馬屋」の若女将、柴田麻未さん。大阪・八尾出身の麻未さんは、家族の勧めで大学生時代に城崎温泉観光大使となり、PR活動をすることに。そこで、当時運営スタッフだった「但馬屋」社長の柴田良馬さんと出会います。

観光大使を務める中、麻未さんは「城崎温泉をもっと勉強したい」と、実際の観光地やお店を良馬さんに案内をしてもらうことに・・・。しかし、当時は観光大使とスタッフという間柄。運営委員はこの行動に激怒し、良馬さんはスタッフから外れることになりました。しかし疎遠になってから2年後、再び連絡を取るようになったことから結婚を前提とした交際がスタート、ついに結婚することに。

結婚後は4代目の若女将として厳しいベテラン仲居の下、日々女将修行をしていた麻未さんですが、これからという矢先、2020年の新型コロナ感染拡大防止で2ヶ月半もの間、城崎のすべての温泉旅館が休業に追い込まれてしまいます。宿泊事業者向けの補助金を活用してはいましたが、今後は客単価をあげなければ経営が立ちいかない状況になってしまいました。

ただ単価をあげてしまってはお客さんの満足度は得られない・・・そこで麻未さんは「宿泊者アンケートの声を取り入れよう」と提言!「但馬屋」は95年の歴史の中で最大の全面リニューアルに踏み切ります。

和紙や土壁、梁など日本古来の素材や作りを要所に残しながら、客室はそれぞれ趣の異なる和モダンなオシャレなテイストに進化。さらにアンケートにあった声から畳部分に床暖房を導入したり、水回りにこだわりのタイル模様を施したり、貸切風呂もライトを効果的に使った幻想的な空間に仕上げたりと、麻未さんのアイデアを多く取り入れてリニューアルを実施しました。

リニューアル後は、いかにお客様を呼び込むかが重要だと、若い人への打ち出し方を考えます。麻未さんは「コンパクトなお部屋、貸切風呂、部屋食」という旅館の特徴を活かし、『大切な人との距離がぐっと縮まるお部屋』というコンセプトで発信。このコンセプトは功を奏し、宿泊者一人あたりの客単価も向上し、2024年の客室稼働率は98%と過去最大となりました。

若い感性で新型コロナ禍のピンチを飛躍に変えた麻未さん。「『城崎温泉』という人気温泉地にあぐらをかかず、但馬屋らしさを大切にオンリーワンの旅館を目指したい。」と、さらに城崎温泉をより盛り上げるべく未来を見据えていました。

「城崎温泉」の旅館同士はライバル同士というよりも「共存共栄」の精神で仲間意識が強いと言います。地元以外から来た人も受け入れる姿勢が、さらなる発展につながったのでしょう。

番組情報

〇番組名
日経スペシャル もしものマネー道もしマネ
〇内容
『もしもの時』に備えるマネー道!マネー活用バラエティ!
〇放送日時
テレビ大阪 第1〜3日曜日 午後2時放送!放送終了後はYouTubeチャンネル、TVerで無料見逃し配信中。

(まいどなニュース/クラブTVO編集部)

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