沖縄本島北部「やんばる」に位置する奥共同店。住民らが出資して運営する「共同売店」の発祥と言われる=8日、沖縄県国頭村 「みんなと会話をするのが楽しみー」。沖縄県北部の国頭村で119年続く「奥共同店」は、住民らが毎日顔を合わせる憩いの場だ。沖縄戦で一度は焼失したが、再建され、戦後の復興を支える原動力になった。
店舗では食料品や日用品を取り扱うほか、ガソリンスタンドも併設。外にはテーブル席が設置され、住民らの笑い声が絶えない。近くに住む比嘉ツヤさん(91)は週4日、足を運ぶ。「現金収入が少なかった時は、子どもを学校に通わせるために店からお金を借りることもあった」と振り返る。当時、「共同売店」の出資者である住民らが、店を通じて教育費や生活費などを工面し合って生きてきたという。店の運営に関わってきた糸満盛也さん(74)は、「ここには『ゆいまーる(助け合い)』の精神がある。戦後復興に必要とされる求心力があった」と話す。
一方、集落の過疎化により、店を取り巻く環境は順風満帆ではない。糸満さんは、「世界自然遺産『やんばる』の観光資源を生かし、活性化できれば」と期待する。実際にSNSや口コミなどを通じて、全国各地から訪れる人も増えてきた。大阪から来た夫婦は、「都会にはない温かさを感じる」と話す。地域を支えてきた奥共同店は100年を超えた今、つながりを求める人たちの支持を集めて新たな歴史を刻む。

店外に設置されたテーブル席で「ゆんたく(おしゃべり)」をする糸満盛也さん(右から2人目)ら。朝7時の開店と同時に、人が集まった=8日、沖縄県国頭村

店員と言葉を交わす比嘉ツヤさん(右)。「共同店での思い出はたくさんある。みんなと会話するのが楽しみ」と笑顔を見せる=8日、沖縄県国頭村