
政治のしくみや人権問題、そして「そもそも民主主義ってナンだ?」そんなことを学べる「民主主義博物館」が5月25日、東京・大田区の田園調布にオープンしました。
東急線の多摩川駅から歩いて10分ほどの住宅街にあります。
「博物館」と言っても、大きな建物がドーンと建っているわけではなく、マンションの1階のテナントとして入っています。
ちなみにお隣はヘアサロン、その隣はデトックスマッサージ店という並びです。
通りすがりの人でも入ってもらえるようにと、博物館の外観はガラス張りで、中の様子が見えるようになっています。
黄色がイメージカラーで明るい雰囲気の博物館を運営しているのは、若者の声を政策に反映させる活動をしている日本若者協議会です。
では、どんな展示があるのでしょうか。
まず、壁一面に56枚のパネルが並んでいます。
それにはそれぞれ「民主主義とは」とか「人権とは」「ジェンダーとは」「ルッキズムとは」といったキーワードが書かれていて、パネルをめくるとその言葉の説明があります。
例えば「民主主義とは」のパネルをめくるとこう書かれています。
「民主主義は対話と尊重」「選挙が行われていても日常生活で対話や相互理解、互いの尊重が重視された社会でなければ民主主義が浸透しているとは言えない」とあります。
さらに「人権とは」をめくると「あらゆる人々が人間らしく生きていくための権利」「性的マイノリティの権利など、時代によっても変化します」とあります。
さらに「人権とは思いやりのことではなく、政府や自治体が制度などによって保障していくもの」とあります。
民主主義博物館を手掛けた日本若者協議会の代表理事・室橋祐貴さん
「辞書的な解説ではなくて実社会に照らした時に、各キーワードがどういうふうに機能しているとか、機能していないかというのを書いています。
別に選挙とかに限らず、日常生活の家庭や学校、会社、そういう意思決定の場においてみんなで決めていくことが民主主義としては重要だと思っていて、でもそういうのってあまりできてないよねというのを解説では結構書いたりしてるんですけど。
その時にやっぱり一部の人たちだけで決めちゃうと、少数派の人権が見過ごされちゃったりするので、あらゆる人が意見を出しやすい環境というのを同時に作っていかないとあらゆる人の人権保障はやっぱり難しいと思っています。
『民主主義と人権はセット』なので、この2つのキーワードを一番上に持ってきてるっていうのもそういう意味合いもあります」
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そのほかにも多くの展示があります
・靴を脱いでくつろぎながら社会運動の当事者のインタビューが見られるコーナー
(※取材時は1人しか見られなかったが、今後増やしていく予定)
・戦後の日本の社会運動の年表(アイヌ差別、ハンセン病訴訟、#MeToo運動など)
・海外と日本の社会運動の比較
・社会を変えた成功事例の紹介(署名活動やデモなど)
・デモのプラカードの展示と実際に作ってみる体験
・来場者が意見を書くスペース「私が首相になったら」「民主主義って○○かもしれない」
・民主主義に関する書籍
このようにコンパクトながら多くの展示がある民主主義博物館ですが、室橋さんは作った意味をこう話します。
民主主義博物館を手掛けた日本若者協議会の代表理事・室橋祐貴さん
「海外ではそもそもベースとして、まず学校できちんと教育される。子供たちから『ヒューマンライツ』とか『デモクラシー』という言葉がめちゃくちゃ聞かれるんですよね。民主主義国家だから自分たちには社会を変えるパワーがあるみたいなことをすごい主張してきて、だから当たり前に選挙に参加するし、デモとかにも行く。でも日本だとそんなに民主主義っていう言葉だったり人権とか政治っていう言葉があんまり身近じゃないというか、なかなか学校でもこういうのを教えられない。政治に興味を持ち始めるのは、やっぱり子育てが始まって行政との付き合いが出たりとか、社会人になって税金を納めるようになるとか、そういうタイミングが多いと思うんですけど、その時に学べる場所が意外とあるようでない。なのでそういった層が学べる場所にもしていきたいと思っていて、理想的には親子で来てもらったりして、お互いに感想をシェアしたりとか、話し合うきっかけみたいな場にもしてもらえたらなと思っています」
オープンからまもなく1か月。
すでに近所の小学生や中学生も来てくれているそうですが、取材に訪れた日も高校生が来ていました。
文化祭で平和に関する展示をするそうで、その参考にするために来館したということです。
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訪れた高校生の感想
・博物館を作っている人が、私たち同世代の人たちが集まって、こういうふうに企画して実際に形にしているっていうのを知って、すごいなと思って来たので、見習いたいと思いました。
・自分たちのことなので政治へ関心はすごくあるんですけど、細かいところをこれから自分で知識の収集をしなきゃと思ってますね。
・今年が戦後80年という節目なので、戦争を起こさないために過去こういう悲惨なことがありましたっていうだけじゃなくて、今後そういうのが起きないようにはどうしたらいいかを、政治や選挙権を絡めて使おうと思っています。だけどちょっと気軽に見えるものにしたいと思ってるので、わかりやすく誰でも読めるようなものにしたいです。
この博物館は、イベントスペースとしても貸し出しているということで、室橋さんは学校の授業などでも活用してほしいと話しています。
民主主義博物館を手掛けた日本若者協議会の代表理事・室橋祐貴さん
「学校の授業でも使ってもらえたらなと思っていて、教科書に載っている内容って、国会議員の数だったり、衆参の違いだったり抽象的な話がほとんど。政治的中立性もあって、先生たちもなかなか踏み込んで教えられないし、そもそも先生たちも正直あんまり知らないということもあるので。なので、ここに実際に来てもらって、これをベースにみんなで自分たちの権利がどう守られてるか保証されているかみたいなのを議論したりとか、そういう機会にできればなと思っています」
また、6月25日からは参議院東京選挙区の候補者による公開討論会と交流会が開催される予定です。
詳しくは民主主義博物館のSNSなどをご覧ください。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:進藤誠人)
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