認知症かと思ったら…10人中9人が気づかない「ハキム病」の“症状”と“見分け方”

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2025年06月25日 11:10  web女性自身

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東京都内に住む72歳の女性は、呼びかけへの反応が鈍く、椅子に座ったままボーッとしている時間が増え、足をすって歩くようになった。同居の家族が「認知症ではないか」と心配し、女性は家族と一緒に脳神経外科を受診。すると、認知症ではなくハキム病(特発性正常圧水頭症)だと判明した。



アルツハイマー型認知症などであれば、進行を遅らせることはできても、劇的な改善は難しいと考えるのが一般的だ。



しかし、この女性が患っていたのはハキム病。頭の水を抜く手術後にリハビリに取り組むと、短期間で症状が劇的に改善。受け答えもはっきりとし、スムーズに歩けるように。表情まで明るくなり、趣味も再開し、寝たきりも覚悟していた家族を驚かせたという。ハキム病の手術を数多く行っている川崎中央クリニックの市村真也院長はこう語る。



「脳内にある脳室では脳脊髄液が常に生み出され、くも膜顆粒という場所で吸収されています。しかし、その過程でトラブルが起き、脳脊髄液の吸収が悪くなると、過剰に水がたまります。すると、脳室が次第に拡大、脳を圧迫するようになり“水頭症”と呼ばれる障害が引き起こされる状態に。なかでも、脳脊髄液の通り道が腫瘍でふさがるなどの明らかな異常がなく、原因が特定できないものがハキム病です。高齢の方の発症が多く、加齢が関係していることはわかっています」



原因不明ではあるが、正しい治療を受けると症状が改善するため、“治る認知症”といわれている。しかしながら、この病気の存在はよく知られていないのが実情だ。



年間の手術件数は全国で約5000件程度。一方、2022年の大阪医科薬科大学の研究グループの報告によると、65歳以上の高齢者のハキム病の有病率は1.6%。2020年の人口から推定すると、58万人もの患者がいる計算になる。



さらに、患者の平均余命が10年と考えると、年間の発症者は推定5万8000人ほど。手術数から考えると10人に1人しか適切な治療がされていないことになるという。異変に気づいても、単なる老化現象として放置されるケースも多い。



「CTなどの検査の画像の判断を誤った医師から、ハキム病であるにもかかわらず“脳が縮んでいます”と言われたため加齢による認知症と思い込む人も数多くいると考えられます。そのまま治療をせずに経過観察すれば、回復する機会を逸してしまいます」(市村先生、以下同)



病気の兆候を見逃さないため、症状を知ることが大切だ。現れる症状は主に3種類あるという。



「認知機能の低下、歩行障害、尿失禁がハキム病の3大症状。これに1つでも当てはまるようであれば専門の医療機関の受診をおすすめします」



これらの症状はアルツハイマー型認知症などともよく似ており、症状や問診だけでは専門の医師でも認知症かハキム病なのかを区別することは困難だ。しかし、ハキム病の初期段階の症状としては、歩行障害が多いという。



「年間60〜70件のペースで手術を行っていますが、徐々に動けなくなる、歩けなくなるという症状から救急車で運ばれ、そこでハキム病と判明する患者さんも多いです。そのほか、歩き出すときの1歩目がうまく出せなくなって受診するケースもよくあります。先日手術した70代の女性の患者さんの受診のきっかけも歩行障害でしたね」



認知機能の低下が同時に現れることもある。症状が進行すると、尿失禁をするようになることも。



「ハキム病が疑われる場合は、CT検査とMRI検査で特殊な撮影を行います。画像を見れば、脳が萎縮する認知症か、それとも水がたまるハキム病なのかがわかります」



ハキム病と診断された場合、入院治療が必要となる。



「まず脳脊髄液を採取して歩行の様子や認知機能の改善を確認するテストを実施します。



その後、過剰にたまった脳脊髄液の流れを正常に戻すため、皮膚の内側にある組織に細いシリコン製のチューブを挿入して、頭部から静脈へ水を流すルートを作り、脳脊髄液を頭の外に排出するシャント術と呼ばれる手術を行います」





■手術とリハビリで症状の劇的な改善も



高齢の患者が多いハキム病は体の負担を考えると、全身麻酔ではなく局所麻酔で手術ができる病院を選ぶのがベターだ。



「ハキム病の手術は日本では全身麻酔で行われることが多いですが、当院では最新のシステムを導入し局所麻酔で手術を行っています。全身麻酔に比べ、術後の回復スピードが圧倒的に違ってきます」



市村先生が行うハキム病の手術時間は何と20〜30分ほど。手術後はリハビリも行う。両者を合わせても3〜4週間ほどで回復するというから驚異のスピード回復だ。前出の歩行障害の70代の女性も、この手術とリハビリを受け、スムーズに歩けるようになった。



「個人差はありますが、食事をとるのが困難だった人が治療後できるようになったケースもあります」



手術費用やリハビリ費用は健康保険の適用対象。高額療養費制度もあるので、それほど大きな負担なく、健康を取り戻せる可能性がある。治療法は確立しているが、原因がはっきりとしないため、予防することは現状難しい。



「今までにない症状が現れるなど、おかしいと感じたときには、早めに受診するようにしてください」



アルツハイマー型認知症などと違い、ハキム病は正しい治療とリハビリで症状の劇的な回復が期待できる。症状に心当たりがあれば、早めに受診するようにしよう。

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このニュースに関するつぶやき

  • うっかり転んで硬膜下血種ができても脳圧迫から身体症状や痴ほう症に似た症状が出る。血種除去で治ることが圧倒的に多い。痴ほう?を疑ったらとりあえずCTはとったほうがいい
    • イイネ!6
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