外に出るのがつらい日こそ、一歩を踏み出そう──梅雨に歩くことのすすめ

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2025年06月27日 07:30  JIJICO

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JIJICO

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梅雨の季節になると、気分が落ち込みやすくなり、体もだるく感じるという声が増えてきます。
外に出るまでが遠く感じてしまうのは、気のせいではありません。
湿気や気圧の変化、日照不足が、自律神経や脳の働きに影響を与えているからです。
けれど、そんな不調が出やすい季節だからこそ、「歩くこと」が大きな助けになります。
歩行は単なる移動手段ではありません。
精神科の視点から見ても、歩くことには気分や自律神経を整える効果があります。
特に梅雨の時期には、その力がいつも以上に必要とされます。
歩くことで整う理由は、大きく分けて三つあります。
一つ目は、リズム運動によってセロトニンの分泌が促されることです。
セロトニンは、気持ちを安定させる神経伝達物質として知られており、
歩行や軽い運動によってその分泌が高まることが研究からも明らかになっています。
二つ目は、脳の前頭前野が刺激されることです。
前頭前野は感情の制御や集中力に関係しており、
歩行中にはこの部分の活動が高まるという研究報告もあります。
気分が不安定なときや、思考がまとまりにくいときに、歩くことで脳がリセットされる感覚があるのはそのためです。
三つ目は、外の環境に身を置くことで感覚刺激が得られることです。
室内にこもっていると、視覚・聴覚・体感温度などの刺激が単調になります。
外に出て歩くことで五感が刺激され、脳が目覚め、自律神経の調整に役立ちます。
特に、朝の光を浴びながらの歩行は、体内時計を整える効果があり、睡眠の質にもつながります。
ではなぜ、梅雨の時期にこそ歩くべきなのでしょうか。
この季節には、日照不足によるセロトニンの低下、気圧や湿度の変動による自律神経の乱れ、
運動不足からくる代謝の停滞、そして閉塞感といった複合的なストレス要因が存在します。
その結果、気分の落ち込み、無気力、不安、イライラといった症状が現れやすくなります。
その悪循環を断ち切るには、小さく外に出ることです。
本格的な運動ではなくてもかまいません。
まずは玄関に立ち、靴を履くことから始めてみてください。
脳は「靴を履く」という行動を「出かける準備」として認識します。
玄関に立った時点で、すでに心と体に変化が起きています。
出かけられそうなら、家の周りを3分だけ歩いてみてください。
時間が短くても効果はあります。
大切なのは「歩いた」という感覚を体に刻むことです。
その小さな成功体験が、次の行動を後押ししてくれます。
雨の日には、無理をせず、傘をさして深呼吸だけでもしてみてください。
空気が重たいときでも、新鮮な刺激が脳を目覚めさせます。
呼吸が深くなるだけで、緊張が少しほどけるはずです。
歩行は、こころの“地ならし”です。
気持ちが不安定なとき、まず地面を感じて歩くことで、
自分の中のリズムが取り戻されていきます。
地に足をつけるとは、実際に足を使って歩くことです。
それは同時に、心のバランスを取り戻すということです。
足元の感覚が安定することで、呼吸も浅くならず、感情の揺れも少し和らぎます。
歩くことは、身近なケアでありながら、
脳、神経、気分、そして姿勢にまで影響する包括的な方法です。
特別な道具も時間もいりません。
今日、玄関に立つことから始めてみてください。
それだけでも、昨日より少し整った自分に近づくことができます。
外に出るまでが遠いと感じる日こそ、小さな一歩を。
歩くことは、心に届く行動です。
梅雨という季節が教えてくれるのは、止まっている時間にこそ動く意味がある、ということかもしれません。


《参考文献》
『1万人を治療した天気痛ドクターが教える 「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』佐藤純著
『体の不調がスーッと消える「天気痛さん」の本』佐藤純・片岡信和監修



(上野 由理・美脚専門家)

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