【F1】角田裕毅「運命の10月」まで残り2レース フェルスタッペンと「実質0.35秒差」で示した実力の片鱗

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2025年10月07日 11:00  webスポルティーバ

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F1第18戦シンガポールGPレビュー(後編)

◆レビュー前編>>

「いったい、どうなってるんだ! なぜだかまったくわからない!」

 予選を13位で終えた瞬間、角田裕毅(レッドブル)のずっと抑えていたフラストレーションが、ついに爆発した。

 金曜からタイヤのグリップを引き出すのがうまくいかず、サスペンション周りや重量配分などさまざまなセットアップ変更、アウトラップのタイヤの温め方など、ありとあらゆることを模索したものの、予選でもうまくいかなかった。

 Q1ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)と0.546秒差の10位で、黄旗区間でスロットルを戻さざるを得ず0.2秒ほどロスしたことを考えれば、実質的に0.35秒ほどの差であり、十分に競争力のあるラップタイムだった。

 スペアパーツ数の都合上、角田は前戦アゼルバイジャンGPと同様に旧型のフロントウイングを使わざるを得なかったものの、それだけで0.3秒や0.5秒の差が生じるわけではない。ドライバー自身の習熟度としても、現時点では0.1〜0.2秒程度の差があるのは、これまでのレースで角田自身も現実として受け止めている。

 だから「実質0.35秒」という差は、フロントウイングの違いを差し引きすれば、ドライバーの差としては十分に許容範囲にあるということだ。

 しかし、Q2最後の重要な局面ではまったくタイヤのグリップが引き出せず、フェルスタッペンと0.781秒もの差が開いてしまった。

 当然ながらこれは、ウイングの差だけでもなければ、ドライバーの差だけでもない。タイヤ本来のグリップを引き出せなければコンマ何秒を簡単にロスしてしまうという、どのチームにもある事象の結果だ。

 今回の予選でメルセデスAMGが躍進したのも、マクラーレンやフェラーリが後退したのも、そのタイヤをいかにうまく扱えるかによって変わる、コンマ数秒によるところだ。

「(新型ウイングが使えれば)今週末かなり苦戦している部分の助けにはなると思いますし、そんなに大きな差ではないでしょうけど、差があるのは確かです。でも、セッションによってタイヤの挙動がまったく違っていたり、グリップレベルが全然違っていて、タイヤのグリップを引き出すのにものすごく苦労している状態です。なぜなのかは、わかりません」(角田)

【光明は少しずつ見え始めている】

 それでもFP3で確認したロングランは、やはり前戦バクーで大きな改善を果たせたさらにその延長線上にあった。決勝でもフリーエアでは好ペースを維持し、スタート直後の後退さえなければ入賞できていた可能性が高い。

 いや、予選をうまく運んでフェルスタッペンの0.4〜0.5秒差なら、フェラーリ勢と6〜7番グリッドを争えたはずだ。その位置からレースに臨んでいれば、もっとクリーンなレースでロングランペースのよさを結果につなげられたはずだった。

「2戦前まではペースは悪くて、18位とか19位でまったく希望も何もありませんでした。ただ、その問題はほぼすべて解消されて、今はかなりコンペティティブ(競争力のある状態)になって、上位で争える状態になりました。

 でもこの2戦は、それまでとは完全に真逆の状況になって、予選一発のタイヤグリップを引き出すのに苦労しました。予選一発とロングランをひとつにまとめ上げることがキーポイントだと思いますので、そこが今の目標です」

 結果がすべてではない。このシンガポールGPの結果ですべてが決まるわけではない。結果だけがすべてを物語るわけではない。

 すでにバクーでは結果を示し、そして運命の10月に残された、あとふたつのレースでどんな結果が残せるかが2026年を決する。

 そこに向けた光明は、少しずつ見え始めている。結果にしか目を向けない者には見えないその光明を、次はオースティン(第19戦アメリカGP)で見せつけてやれ。

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