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日本野球機構(NPB)は7日、「スポーツエコシステム推進協議会」とパートナーシップを締結したと発表した。9月のオーナー会議で承認されたもので、野球界としてスポーツの権利保護と健全な発展に本格的に関与する形となる。違法賭博や不正利用のリスクが高まる中、スポーツを社会の共有財産として守り、持続可能な仕組みを築く狙いだ。加盟を機に、NPBは国際的なルールづくりと連携強化に乗り出す。
NPB榊原定征コミッショナーは「NPBが進めてきた権利ビジネスの発展や、選手を不正や反社会的勢力から守る活動と高い親和性がある。今後は連携を通じて、世界のスポーツ団体との協働を深め、その発展と価値向上に貢献したい」と話した。同協議会は「権利の明確化」「社会的価値の創出」「DX推進」を3本柱に掲げ、資金・人材の循環を通じて持続可能なスポーツ産業の構築を目指している。NPBはこの趣旨に賛同し、パートナーシップ締結を決めた。
今年5月の同協議会シンポジウムでは、日本居住者による海外スポーツベッティングサイトの利用額が推計6兆4503億円、そのうち約4兆9112億円が日本のスポーツを対象にした賭けと報告された。肖像権の不正利用や八百長の温床となる恐れがあり、国際的な枠組みである「マコリン条約」への加盟が検討課題となっている。
同協議会の評議員を務める巨人の山口寿一オーナー(68)は5月のシンポジウムで「選手を八百長から守るためのナショナルプラットフォームも真剣に考えている」と危機感を表明している。スマートフォンの普及により、選手が不正に巻き込まれるリスクが高まっていると警鐘を鳴らした。
協議会の推計では、24年に日本居住者が海外サイトでNPBに賭けた金額は5281億円、世界全体からは8829億円に達した。いずれも巨額で、合法・違法を問わず「野球のデータや試合が賭けの対象として利用されている現実」が浮き彫りになった。
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ヨーロッパでは19年に発効したマコリン条約により、各国が八百長防止の情報共有を行う「ナショナル・プラットフォーム(NP)」を整備している。日本は未署名だが、同協議会では官民一体で批准を目指す方針が示された。
違法賭博や反社会的勢力排除といった課題を抱える中、スポーツを社会の共有財産として健全に発展させるための「エコシステムづくり」。NPBの加盟は、その取り組みの一歩となりそうだ。
▽一般財団法人スポーツエコシステム推進協議会・稲垣弘則代表理事のコメント このたび、日本野球機構(NPB)とパートナーシップを締結できたことを光栄に思います。NPBは長年にわたり、野球を通じて人々に夢や感動を届け、日本のスポーツ文化を牽引(けんいん)されています。当協議会の会員企業は115社を超え、企業活動を通じて培った知見やネットワーク、人材が結集しています。今回のパートナーシップ締結により、NPBのネットワークや知見・実績と、当協議会の多様なリソースを結びつけることで、スポーツ産業を起点とした新たな価値創出や持続可能な仕組みづくりが一層進展すると期待しています。また、当協議会は欧州評議会をはじめとした世界の関係機関と連携しながら、選手の不正操作対策を中心とした違法スポーツ賭博対策を推進しております。今後、当協議会は、選手保護に向けたさまざまな取組みについても、NPBと連携してまいります。
▽一般社団法人日本野球機構・榊原定征会長コメント このたび、一般財団法人スポーツエコシステム推進協議会(C−SEP)とパートナーシップを締結できましたことをうれしく思います。C−SEPは、「権利の明確化」「社会的価値の創出」「DX推進」というミッションを掲げ、115社を超える多様な会員企業や国内外のスポーツ団体との協議・連携を積み重ねてこられました。特に、近年NPBとしても喫緊の課題である違法スポーツ賭博対策において、C−SEPが国際的なネットワークを通じて推進されている点は大変心強く感じております。その取組は、NPBと各球団が進めてきた権利ビジネスの発展や、選手を不正や反社会的勢力から守るための長年の活動と高い親和性を持つものです。
今後はC−SEPとの連携を通じて、国内スポーツ団体とのノウハウ共有や、世界のスポーツ団体・関係機関との協働をさらに深め、スポーツ産業全体の清廉性を高めるとともに、その発展と価値向上に貢献してまいりたいと考えております。
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◆一般財団法人スポーツエコシステム推進協議会 スポーツ産業を起点とする資金と人材の循環システムを構築し、スポーツの価値を高めることを目的に、23年7月18日に任意団体を一般財団法人化する形で設立された。評議員会は元アスリートやスポーツ団体関係者により構成されるほか、スポーツ関連企業など会員数は現時点で合計116社にのぼる。「権利の明確化」「社会的価値の創出」「DX」の各ミッションを推進する中で、日本スポーツ振興センター(JSC)、Jリーグ、Bリーグなどのスポーツ団体等、合計8団体がパートナー団体に就任している。近時は、欧州評議会、MLB、NBAその他の海外スポーツ団体・関係機関と連携し、違法スポーツ賭博対策に関連する活動を行っている。本部は東京都渋谷区。代表理事は弁護士の稲垣弘則氏(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業)。
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