【F1コラム】代役チャンスは15年で20例。F1リザーブドライバーの現実を探る

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2026年05月21日 07:10  AUTOSPORT web

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F1トルコGP契約記念式典でデモ走行を行った角田裕毅(レッドブル・リザーブドライバー)
 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、F1チームのリザーブドライバーが急きょ呼び出され、レースに出場するチャンスはどれだけあるのか、過去15年の記録をまとめた。

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 2026年F1に参戦するチームは、アウディ以外すべて、1人以上のリザーブドライバーを発表している。アウディは2025年FIA F2チャンピオンのレオナルド・フォルナローリと合意に達していると考えていたようだが、最終的に彼はマクラーレンのリザーブに収まった。

 アントニオ・ジョビナッツィ(フェラーリ)、角田裕毅(レッドブル、レーシングブルズ)、周冠宇(キャデラック)、ジャック・ドゥーハン(ハース)は、それぞれF1経験者であり、リザーブドライバーの職務を果たしながら、キャリア復活の夢を抱いているはずだ。

 トヨタ・ガズー・レーシングでWEC世界耐久選手権タイトル獲得経験を持つ平川亮は、TGRハースF1チームにおいてリザーブドライバーの役割を得ている。

 レオナルド・フォルナローリ(マクラーレン)、ルーク・ブラウニング(ウイリアムズ)、ジャック・クロフォード(アストンマーティン)、ポール・アーロン(アルピーヌ)、クッシュ・マイニ(アルピーヌ)、ビクター・マルタン(ウイリアムズ)といった若手は、リザーブの職務がF1キャリアにつながることを期待している。

 2026年のメルセデスのリザーブドライバーに任命されたフレデリック・ベスティの場合は、2022〜2023年にはFIA F2において7勝を挙げ、最も成功したドライバーだったが、最後にシングルシーターでレースをしてからすでに2年半が経過した。

 チームの2026年ローンチの場で、メルセデス代表のトト・ウォルフは、ベスティに対して次のように語った。

「もちろん、誰も(レギュラードライバーが)食中毒になることなど望んでいない。しかし、もしそうなった場合に備えて、君が準備できていると分かっているのは良いことだ」

 本音を言えば、これはベスティや他のすべてのリザーブドライバーが心の奥底で抱いている願いであろう。すなわち、レギュラードライバーの誰かが1戦あるいは複数戦に出場できなくなり、自分たちに実力を示す機会が巡ってくることである。

 では、チームが急きょ代役を必要とする確率はどれほどなのか。過去15シーズンを振り返ると、平均すると年に1回程度しか起きていないことが分かる。

■2025年 リザーブドライバーの出場なし。

■2024年 オリバー・ベアマンはサウジアラビアでフェラーリのカルロス・サインツ(虫垂炎)の代役として急きょ出場し、さらにアゼルバイジャンでは1戦出場停止処分を受けたケビン・マグヌッセンの代役としてハースから出走、ブラジルでは体調不良のマグヌッセンに代わって再び出場した。ベアマンは2025年にハースのレギュラードライバーとなった。

■2023年 リアム・ローソンはオランダGPのプラクティス中にダニエル・リカルド(アルファタウリ)が指を骨折したため代役を務め、合計5戦に出場した。

■2022年 ニコ・ヒュルケンベルグは、新型コロナウイルスに感染したセバスチャン・ベッテルに代わり、アストンマーティンからバーレーンとサウジアラビアで出場した。

 メルセデスのリザーブであったニック・デ・フリースは、イタリアGPのFP3前にアレクサンダー・アルボンが虫垂炎を発症したため、急きょウイリアムズから出場の機会を得た。決勝で見事9位に入り、2023年のアルファタウリのシートを確保した(ただし、長くは維持できなかったが)。

■2021年 ロバート・クビサは、キミ・ライコネンが新型コロナ陽性となったため、オランダとイタリアでザウバー/アルファロメオから出場した。

■2020年 ピエトロ・フィッティパルディは、ハースのロマン・グロージャンが負傷したため、サクヒールとアブダビで代役を務めた。

 ルイス・ハミルトンがサクヒールGP前に新型コロナ陽性となった際には、メルセデスはウイリアムズからジョージ・ラッセルをレンタル起用した。ジャック・エイトケンは、そのラッセルの代役としてウイリアムズから自身唯一のF1出場を果たした。

 ニコ・ヒュルケンベルグは、レーシングポイントから3戦に出場した。セルジオ・ペレスが新型コロナに感染したため、シルバーストンでの2戦に出走。さらに同じく新型コロナに感染したランス・ストロールの代役として、アイフェルGPでもレーシングポイントから参戦した。

■2019年 リザーブドライバーの出場なし。

■2018年 リザーブドライバーの出場なし。

■2017年 フェルナンド・アロンソがモナコGP週末にインディ500へ出場した際、ジェンソン・バトンが代役を務めた。

 ザウバーのパスカル・ウェーレインが開幕直前のレース・オブ・チャンピオンズで負傷したため、オーストラリアと中国ではアントニオ・ジョビナッツィが代役として出場した。ジョビナッツィは2019〜2021年にザウバー/アルファロメオのレギュラーシートを得た。

 ハンガリーGPのFP3でフェリペ・マッサが体調不良となり、ポール・ディ・レスタが急きょウイリアムズから出場した。

■2016年 オーストラリアGPでの激しいクラッシュで負傷したフェルナンド・アロンソに代わり、ストフェル・バンドーンがバーレーンでマクラーレンから出場した。バンドーンは2017〜2018年にフル参戦を果たした。

■2015年 ケビン・マグヌッセンは、負傷したフェルナンド・アロンソの代役としてオーストラリアGPでマクラーレンから参戦した。

■2014年 リザーブドライバーの出場なし。

■2013年 ロータスのキミ・ライコネンがアメリカGPとブラジルGPを欠場。公式には背中の問題とされていたが、資金難に陥っていたロータスから報酬が支払われていなかったため、ストライキをしていたのではないかとの噂もあった。いずれにせよ、同胞のヘイキ・コバライネンが2戦で走った。

■2012年 ベルギーGPのスタートで多重クラッシュを引き起こしたロマン・グロージャンは、イタリアGPで出場停止処分を受けた。そのため、ジェローム・ダンブロシオ(現フェラーリF1チーム副代表)がモンツァでロータスから出場した。

■2011年 ザウバーのセルジオ・ペレスは、前戦モナコでのクラッシュによる脳震盪の影響で、カナダGPのFP1後に出場を辞退した。そのため、ザウバーの2010年レギュラードライバーで、2011年にマクラーレンのリザーブを務めたペドロ・デ・ラ・ロサが代役として出場した。

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 このように、過去15シーズンにおいて、急きょリザーブが必要とされたのは約20回にすぎない。控えのドライバーたちにチャンスが訪れることはまれであるというのが現実ということだ。

[オートスポーツweb 2026年05月21日]

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